のりぞうのほほんのんびりバンザイ

あわてない、あわてない。ひとやすみ、ひとやすみ。

哀愁的東京/重松清

2008年08月16日 23時19分10秒 | 読書歴
58.哀愁的東京/重松清
■ストーリ
 進藤宏。40歳。新作が描けなくなった絵本作家。
 フリーライターの仕事で生計を立てる進藤は、様々な人に出会う。
 破滅の時を目前にした起業家、閉園する遊園地のピエロ、人気の
 ピークを過ぎたアイドル歌手、生の実感をなくしたエリート社員。
 進藤はスケッチをつづける。時が流れることの哀しみを噛みしめ、
 東京という街が織りなすドラマを見つめる。
 「今日」の哀しさから始まる「明日」の光を描く連作長編。

■感想 ☆☆☆
 トンネルから抜けられないでいる中年男性を描かせたら一番
 なのではないかと勝手に思っているのが重松さんだ。荻原さんも
 同じように「うまくいかない中年男性」を魅力的に描いて
 くれるけれども、どこかコミカル。どん底というわけではない
 人を明るく描いてくれる。重松さんの作品の主人公は、たいてい
 トンネルの暗闇の中にいる。光が見えないわけではないし、
 おそらく出口はあちら、というような漠然とした方向は
 見えている。けれども、足が動かない。前に進めない。
 そういった主人公が多い気がする。

 本作品の主人公も同様のタイプだ。彼はそんな自分自身を自虐的に
 見つめ続ける。どうすればいいのか分かっているのに、前進でき
 ないまま、似たような境遇の人たちをも見つめ続ける。
 その視線は、決して暖かくはない。けれども、冷たくもない。
 ただ、現実をそのまま写し取る。その彼の視線こそが、私の
 イメージする「東京」で、タイトルと見事に結びついた。

 表紙のイラストも見事。ゴリラ(のような生き物)の哀愁漂う
 まなざしが作品と調和している。

負けず嫌い

2008年08月16日 12時16分59秒 | 日常生活
送り盆のお墓参りでは、コントか!?と言いたくなるぐらい激しい雨に見舞われました。
「少しおさまったんやない?」
と祖母が言った途端、更に強まる雨足。

わかった、わかった。
あんたたちの力はよーく分かったから!
侮ってなんかないから!
せめて車内から外が見えるぐらいの豪雨にして!

と、雨に完全ギブアップを宣言した昨日。
本日の博多は昨日の小倉以上の豪雨です。

昨日、あれだけはっきりとギブアップしてみせたのに。
まだ力を見せつけるつもりかい。
どんだけ、自己顕示欲豊富なんだい。
と、力なく空模様を呪いつつ、傘の購入を検討中。
でも、ここで傘を買ってしまうと、本当に「負けた」みたいですごく悔しい。

必要ないところで負けず嫌いを発揮して、
ただ今のワタクシは雨と真剣勝負中。

日本の夏

2008年08月16日 11時49分42秒 | 日常生活
今年の夏も、無事に盆踊りに参加できました。
今年は親族恒例のバーベキュー大会をうっかりすっぽかしてしまったため
いつもとは違う場所での参加です。

墓地での盆踊り。

おぉー!
いつも以上に由緒正しい感じの盆踊り。
墓地に響き渡るおじさま、おばさまがたの生歌。
毎年毎年、同じ歌なので、聞き馴染みのあるメロディで
参加者たちも口ずさみながら踊ります。

いろんな盆踊りに参加しているけど
やっぱりここの踊りが一番、好きだー!

大満足で祖父の家に戻り、帰り支度をしていると
従姉妹から呆れられました。
「せっかく来たと思ったのに、おらんけん、びっくりしたよ。
 盆踊りに行ったんやって?
 そこまで一生懸命に行く前にさー。
 私たちに会いに来るとかさぁ。」

・・・うん。本当にその通り。
来週また来るからね。
来週はもう少しゆっくり来るからね。

来週は祖父の家の裏にあるお地蔵様の傍で盆踊りです。
来週は盆踊りにもゆっくり参加する予定。

スクランブル/若竹七海

2008年08月15日 01時38分15秒 | 読書歴
57.スクランブル/若竹七海
■ストーリ
 1980年。あたしたちは高校生だった。
 そして、ひとりの少女があたしたちの通う学校で殺された。
 それから15年後、仲間の結婚式で再会したあたしたちは
 迷宮入りした事件の謎に迫るのだが。
 過ぎ去った80年代を背景に、名門私立女子高でおきた殺人事件を
 巡って、鮮やかに描かれる青春群像。17歳だったことのある
 すべての人に贈るほろにがくて切ない青春ミステリ。

■感想 ☆☆☆☆☆
 本が好きで、群れることが好きで、「女らしさ」が苦手な
 かつての少女たちにぜひお勧めしたい一冊。
 定期的に読み返しては、甘酸っぱい気持ちと懐かしい気持ちを
 味わいたくなる。フィクションなのに、まるで自分の仲間で
 あるかのようなリアルさと親しみ深さを感じてしまう登場人物
 たちが愛しい。

 不器用で、素直じゃなくて、「みんなと同じじゃない。」
 と思いたい年頃の女の子たち。でも、彼女たちは、どこかで
 自分たちが決して特別ではないこと、自分も同年代の女性たちと
 同じようにごくごく普通の存在だと分かっている。
 それでも、ついもがいていしまう。その「恥ずかしさ」が
 覚えのあるものだから、登場人物全員に親近感を抱くのだろう。

 読み終わった後、自分自身の高校時代も懐かしく思い返した。

チルドレン/伊坂幸太郎

2008年08月15日 01時20分37秒 | 読書歴
56.チルドレン/伊坂幸太郎
■ストーリ
 「俺たちは奇跡を起こすんだ」
 独特の正義感を持ち、いつも周囲を自分のペースに巻き込むが、
 なぜか憎めない男、陣内。彼を中心にして起こる不思議な事件の数々。
 何気ない日常に起こった5つの物語がひとつになったとき、
 予想もしない奇跡が降り注ぐ。

■感想 ☆☆☆☆☆
 1年ぶりの再読。
 前回、読んだ時は、陣内に魅力を感じながらも、こんな人が
 実際にいたら困るだろうな、と思った。その思いは変わらない。
 おそらく、私の仕事場にこんな人がいたら困る。ものすごく
 エネルギーを吸い取られると思う。

 けれども、改めて再読して、こんな人がいてほしいと思った。
 こんな大人になりたい、と思った。
 彼は、「誰かのために」なんて思わない。「誰かのために」
 行動もしない。「誰か(自分以外の他人)」と「自分」に
 優劣をつけないし、比較もしない。彼は自分と周囲に
 差をつけない。だから、彼が「自分のために」行動することが
 巡り巡って、周囲の人の心をほんの少し暖かくすることもある。
 そして、彼が「自分のために」行動することが巡り巡って
 周囲の人を混乱に陥らせることもある。困ったことに、
 後者のほうが頻繁に起こる。
 けれども、陣内はどこか憎めない。
むしろ、不思議なくらい、彼をいとしく思えてくる。
 彼のまっすぐな物言い。無邪気で困った性質。それらを見ていると
 本当に奇跡が起きるような気になってくる。奇跡を信じたくなる。
 そんな暖かい物語だった。

大いなる勘違い

2008年08月15日 00時56分57秒 | 日常生活
世間は北京オリンピック一色。
そして、基本的にチャンネルは常にNHKの我が家も
北京オリンピック一色。世間並みにオリンピックを満喫しております。

もっとも、日本勢の形勢が危うくなるたびに、母上から
「見てられん!消して!消して!チャンネル変えて!」
と物言いが入るため、最後まで見ずに終わることもしばしば。

そんな母上がここ最近、ずっと気にしていたのは体操の富田選手。
どうやら、母上は富田選手がことのほかお気に入りの模様。
ずっと「富田、大丈夫やろかー。」「富田が心配。」
「富田にメダルを取らせてあげたい・・・。」
と、富田、富田、冨田三昧。
そんな母上の応援も届かず、残念ながら富田は四位。
世界で四位なのだからすごいことなんだけれど、
やはりメダルと四位では、大きな差がある気がするわけで
母上はがっくりと肩を落としていました。

「かわいそう・・・。私の富田・・・。」



・・・なんですと?
世界の富田を「私のもの」扱い。
うちの母上。ただいま、恋するオトメです。

潔く素直にかわいらしく

2008年08月11日 23時36分17秒 | 日常生活
昼休み、母親から電話がありました。
今日行くはずのお墓参りのことかしら?と思いながら電話に出ると

「思い出せてよかったー!!おめでとー。」
と言われました。

・・・やっぱり忘れてたのね。
朝から誰も何も触れてこなかったので
これは完全に忘れているな、今日中に思い出すかな、
今日中に思い出せなかったら、ブログに書いてやろう
と思っていたのです。

ち。思い出しやがった。
思い出さなかったほうが面白かったのに・・・。

と、悔しがっていると、母親から呆れられました。
ちなみに、父親からは未だに
「おめでとう」の「お」の字も言われてません。
昔から、書類の必要記載事項に生年月日欄があるたびに
「あんたの誕生日、いつね。」
と父から確認されてたっけ。

・・・父、ワタクシの年齢、覚えてるかな。

そういうわけで誕生日です。
めでたく30です。
29という数字が不安定でぐらぐらしていて
ずっとずっと嫌だっただけに
30というどっしりとした数字の年齢が嬉しくてたまりません。
さあ、笑って過ごすぞ!

30という潔い数字に負けず、
強くたくましくさっぱりと生き、なおかつ、いくつになっても
「かわいらしさ」「素直さ」をなくさず、年を重ねること。
それが今の目標です。

まずは、既になくしてしまっている「かわいらしさ」と「素直さ」を
どこかから見つけ出して拾い出してくること。
そこから始めなければ。

さあ、楽しい30代の始まりだ。

初ものがたり/宮部みゆき

2008年08月10日 23時03分10秒 | 読書歴
55.初ものがたり/宮部みゆき
■ストーリ
 鰹、白魚、鮭、柿、桜・・・。江戸の四季を彩る「初もの」が
 からんだ謎、また謎。本所深川一帯をあずかる「回向院の旦那」
 こと岡っ引きの茂七が子分の糸吉や権三らと難事件の数々に挑む。
 夜っぴて屋台を開いている正体不明の稲荷寿司やの親父、
 霊力をもつという「拝み屋」の少年など、一癖二癖もある
 脇役たちも縦横無尽に神出鬼没。人情と季節感にあふれた時代小説。

■感想 ☆☆☆☆
 これぞ、宮部さん!と喝采をあげたくなる人情もの。
 読んでいるうちに、登場人物の肌の温度が伝わってくるような
 気がしてくるほど身近に感じられる人たちばかり。
 「謎」というよりは「事件」、それも殺人事件など、むごい犯罪を
 扱っているのに、「本所深川」や「堪忍箱」のような苦い後味は
 感じさせない。どちらかというと、読み終わった後に、心が
 ほんわかと暖かく感じられる。

 それはひとえに、主人公の茂七親分の人柄によるところなのだろうと
 思う。彼のあたたかさ、人間の大きさが作品世界に大きな影響を
 及ぼし、この作品の温度を暖かく、触れ心地の良いものに
 している。そして、この空気、この温度が謎を主軸に起き、
 謎明かしで終わるこの作品を「推理小説」ではなく「人情もの」
 にしている。

 惜しむらくは、要所要所に登場する稲荷寿司屋の親父。
 決して、余計な言葉を発することはないけれども、おそらく
 最も早く事件の真相に近付いているのは彼にちがいない、と
 思わせてくれる名脇役だが、彼についての謎は解明されず
 「不思議」を残したまま、作品は終わる。
 あとがきで作者が「続編があります」と伝えてくれてはいるものの
 未だに発行されてはいない模様。
 早く続きが読みたいです!

それは無理

2008年08月10日 22時49分12秒 | 日常生活
お盆間近の週末はお墓掃除にお供え用の和菓子や果物の買出し
お仏壇のお掃除、とじっと落ち着いている時間がない忙しさでした。
もっとも、お墓掃除もお仏壇のお掃除も、
実際に大活躍したのは母上なのですが。

「父、いい嫁もらったねー。」
と言ってみたものの、相変わらず無言の父上。
「こういうとき、絶対にうなずいてくれんけんね。」
とすねる母上。

お供え用の和菓子を買いに祖母と出かけたスーパーは
果物売り場やお花売り場は大混雑で
「お盆」の空気を実感させてくれました。
こういう季節感を味わえるのは素敵。

色々と見て回って、お供え用(つまりおじいちゃん用)以外にも
自分たち用に何かおいしいものを買って帰ろうね、と
言いながら羊羹や飴玉を物色しあう祖母と孫。
結局、羊羹を一本ずつ買い合いました。
遺伝子って恐ろしい・・・。
我が一族はどこもかしこも甘党ばかりです。

おいしいものを求めてスーパーをぐるぐる探検し終わった頃
売り場も見尽くしたことだし、そろそろ帰るかな、と思っていると
祖母がぽつりと呟きました。

「そろそろ帰らないかんやろうねぇ。
 疲れたけど、ここに泊めてもらうことはできんやろうけんねぇ。」


・・・うん、ばあちゃん。それは、無理。たぶん、無理。
足が痛いって言ってたものね。疲れちゃったのね。

ワタクシのおばあさまは、かわいらしく年を重ねております。
最近、かわいらしさに拍車がかかっている気がして
いとおしくてたまりません。

地下街の雨/宮部みゆき

2008年08月09日 00時29分00秒 | 読書歴
54.地下街の雨/宮部みゆき
■ストーリ
 麻子は同じ職場で働いていた男と婚約をした。しかし、挙式二週間前に
 突如破談になった。麻子は会社を辞め、ウェイトレスとして勤め
 始めた。その店に客としてやってきた女は、麻子と同じように
 傷つき、そして何か危険な、いやな感じがする女性だった。
 表題作ほか、「ムクロバラ」「さよなら、キリハラさん」など7編を
 おさめた短編集。

■感想 ☆☆☆
 「世にも奇妙な物語」というオムニバスドラマがある。
 ごく普通に生きていた人が、ふと気がつくと「世にも奇妙な世界」
 に入り込んでしまっている話がいろんなシチュエーションで
 描かれているドラマだ。
 この短編集に収められている話は、どれも「世にも奇妙な物語」風。
 少し不条理で、少し奇妙。少し物悲しくて、少し恐ろしい。
 そんな話が収められている。

 特に心に残ったのは表題作「地下街の雨」と最後の二編
 「ムクロバラ」と「さよなら、キリハラさん」だ。
 この本が刊行されたのは1994年。実に14年も前の話。
 それなのに、どれも古さをまったく感じさせない。
 特に「ムクロバラ」は古さを感じさせないどころか、時を経て
 より一層身近に感じられるようになった作品だと思う。

 ある事件をきっかけに精神が壊れてしまった男。
 彼は、新聞から「たいした理由もないのに、起こってしまった
 殺人」を見つけては「またムクロバラの事件ですよ!
 早くムクロバラを捕まえなくては!」と警察に訴えてくる。
 一体、ムクロバラとは、何なのか。

 「たいした理由もない」のに、そこかしこにあるストレスに
 いつのまにか心身をすり減らされ、余裕がなくなっていく主人公。
 「あちら」と「こちら」の境目を歩き、ふとしたきっかけで
 「あちら」に行ってしまいそうになる彼の危うさは、私たちが
 抱えている危うさ、私たちがさらされている危険なのだと思う。
 私もいつ「あちら」に行ってしまうのか分からない。
 そういったことを感じさせてくれる作品だった。