のりぞうのほほんのんびりバンザイ

あわてない、あわてない。ひとやすみ、ひとやすみ。

松浦純菜の静かな世界 /浦賀和宏

2006年11月09日 23時57分19秒 | 読書歴
■ストーリ
 「私には分かるよ。あなたの気持ちが。
  殺したい奴って、確かにいるもの」
 大けがを負い、療養生活をおくっていた松浦純菜が2年ぶりに自宅に
 戻ってくると、親友の貴子が行方不明になっていた。市内では連続
 女子高生殺人事件が発生。被害者は身体の一部を持ち去られていた。
 大強運で超不幸な“奇跡の男”八木剛士と真相を追ううちにふたりの
 心の闇が少しずつ重なり合う。

■感想 ☆☆☆
 久しぶりの浦賀作品。
 大学生の頃に浦賀さんのデビュー作を読んで、衝撃を受けたものの
 その後、とんとご無沙汰だった。今回は装丁と帯の言葉に呼ばれて
 手に取った。持ち運んで公共交通機関の中で広げるには少し
 ためらわれるような少女チックな装丁である。
 独特なタッチの女性の姿はインパクトが大きくて、思わず
 借りたところ、シリーズの一作目だった模様。
 
 シリーズ作品はあまり好きではない。次を読むのに気合が
 必要だから。特に図書館ではシリーズ作品をシリーズの
 順番どおりに借りていくこと、それ自体が難しい。

 しかし、この作品はそれでも続きを読みたい、と思わせてくれる
 作品だった。思春期特有の屈折した気持ちや主人公とヒロインの
 不思議な関係を魅力的に描いていて、面白い。
 これほどまでに卑屈な主人公も身勝手なヒロインも
 滅多にいない。だから魅力的なんだろうか。
 ・・・いや、魅力的、ではない。
 実際、読んでいる間中、八木の卑屈な態度、
 コンプレックスの塊のようなモノローグに嫌気がさした。
 それでも次回作を読みたいと思ってしまうこの吸引力は
 何だろう。その原因が知りたい。そして、このシリーズの
 到着点をぜひしりたい。彼らふたりは今後、どのように関係が
 変わっていくのだろう。成長していくのだろう。

すべての美人は名探偵である/鯨統一郎

2006年11月09日 23時38分16秒 | 読書歴
■ストーリ
 歴史学者・早乙女静香は、沖縄への研究旅行中に殺人事件に
 巻き込まれた。事件には徳川家の秘密が関係しているようなのだが。
 静香は、彼女に憧れる学生・三宅亮太、美人女子大生・桜川東子と
 ともに、沖縄―北海道の同時殺人事件と、童謡に隠された歴史の
 新事実を探る。

■感想 ☆
 びっくりするほど、文章が軽くて浅い。
 キャラクターの浅さや話の運びのうそ臭さにどうにも
 違和感が漂う作品だ。鯨さんの過去の作品に既に登場したことのある
 女性ふたりが探偵を務めているため、たぶんに説明不足の部分
 ふたりの魅力の説明を読者の記憶に頼っている部分が大きい。
 途中で何度、読むのをやめようと思ったかしれない。
 読み終えた後の最初の感想も「くだらない・・・」の一言に尽きた。

 それでも作品を放棄することなく最後まで読み進めたのは
 童謡や童話にまつわる謎、というテーマに弱いからだ。
 この作品では主人公二人が殺人事件だけではなく、
 童謡「ずいずいずっころばし」にまつわる謎も解いていく。
 この童謡に隠れている「徳川家光」にまつわるメッセージを
 大胆に読み取っていく展開は面白い。
 何より、日本の童謡には、こういった謎が隠れていても
 おかしくない、と思わせる「陰」の雰囲気が漂う。
 その雰囲気を楽しむのが好きなのだ。

 ただし、この作品自体は読み終わった後、
 脱力すること請け合い。人には薦められない。

新編クロノス・ジョウンターの伝説/梶尾真治

2006年11月09日 23時26分38秒 | 読書歴
■ストーリ
 もしも過去に跳べることができたら、今は亡き、愛する人を
 救いにいける。すでに滅びた物を目の当たりにできる。
 それだけでなく、過去の世界で、新たな恋に落ちるかもしれない。
 ついに「クロノス・ジョウンター」という機械が開発され、
 誰もが夢見るそれが現実となったとき、そこにさまざまな物語が
 生まれた。劇団「キャラメルボックス」の舞台原作作品。

■感想 ☆☆*
 キャラメルボックスの舞台
 「クロノス」「あした あなた あいたい」「ミス・ダンデライオン」
 の原作三作品が収録されている。
 図書館で見かけて舞台を懐かしく思い出し、思わず借りた。

 ・・・が。どうにも薄っぺらい。
 舞台と話の筋はほとんど変わらない。舞台を忠実にノベライズ
 している。(いや、舞台がこの作品を忠実に舞台化したのか?)
 なんにせよ、話の筋はほとんど変わらないにも関わらず、
 どうにも感じてしまうこの薄っぺらさに違和感を感じた。
 おそらく文章が軽いのだと思う。
 舞台で見たあの緊迫感が伝わってこない。登場人物全員が
 みな必死に時に抗い、運命に逆らっていた必死さや
 そうやって手に入れようとしている想いが伝わってこない。

 おそらく、私がこの作家さんと相性が悪い、というのが
 最も大きな原因なのだと思う。

 それにしても、彼の作品は舞台化、映画化が多い。
 それだけ着想、発想が面白いのだろう。なのに、作品に
 心を動かされない。小説というものの難しさを感じる。