誰もが、一回は経験したことのある喪失感。 なくてはならないものを失くしてしまった時。今までは別にに気にしていなかったけれど、なくなって初めて感じる寂しさ…
身近な者との別れは誰もが避けることのできず、ある程度は覚悟していると思う。
2001年9月11日、世界を震撼させた米同時多発テロが起こった。
誰かが「映画を見ているようだ。」と言わしめたWTCビルへの旅客機の突入。
その瞬間はテレビで見た。「大変だ~」というよりも「何?」という感じが先にたった。あまりにも現実離れしていたからだ。
WTC2への突入時には「Oh my god!」という声がたくさん聞かれた。「Oh my god!」の声は泣き声、叫び声であった。 その感情は肌を通して伝わってきた。 WTC内の人の安否、旅客機の乗員の安否はもとより起こるはずのないことが目の前で起こっている現実。そして追い討ちをかけるように崩壊した世界経済のシンボルたち。 素人目にはあんなに簡単に崩れるとは思っていなかったのであっけにとられてしまった。
グラウンド・ゼロ。文字通り(実際には何もないということではなく、爆心地という意味だが)その存在が無に帰してしまったWTCビル。いずれはそのビルの屋上からの風景を見たいと思い、その時の感激を思い描いていたがそれも夢になってしまった。あのシンプルだが美しい双子ビルの天辺はもうない。
ある旅客機機長は長いフライトの終末に二本の直方体が見えてくると嬉しくなると言った。普段意識はしていないが、何がしか心のよりどころになっているものは必ずある。 WTCの存在がよりどころの人たちもいただろう。私にとってもいつかそのようになるのではという予感は現実にはならなかった。逆に言えば、この事件によりかつて、マンハッタンに双子ビルがあったということが永遠に心に刻み込まれたのである。 どうにもならない喪失感と一緒に…。