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おとらのブログ

観たもの、見たもの、読んだもの、食べたものについて、ウダウダ、ツラツラ、ヘラヘラ書き綴っています。

坂東玉三郎初春特別舞踊公演

2022-01-03 23:55:04 | 観たもの
 今年の初芝居は、松竹座の「坂東玉三郎初春特別舞踊公演」でございます。

 演目はシンプルに以下の3つ、公演時間は2時間弱でした。
 一、お年賀口上
 二、藤娘
 三、お祭り

 まずは「お年賀口上」からです。緞帳が上がると、舞台中央に玉ちゃんがお座りでした。背景は四季の草花が描かれた金屏風、端から端まである大きなものです。玉ちゃんのお好きな抱一を思わせる描き方ですが、歌舞伎座の山中さんがお描きになったものです。その前に門松もあり、天井には凧が飛んでました。3階席からは凧は半分しか見えませんでしたが。

 新年のごあいさつの後、「口上」について説明がありました。昨年のお正月も松竹座にご出演でしたが、新型コロナウイルスの感染状況が酷い時期で、世間全体が鬱々としていました。外出しづらい中劇場に来てくださったお客様に少しでもお正月らしさを味わっていただくためにはどうしたらいいか?と東京でも大阪でも考えてくださったそうです。で、思いつかれたのが昨年のお衣装のご披露、ファッションショーでした。それが非常に好評だったので、その後、南座や御園座でもファッションショー付きの口上をなさいました。また今年のお正月も松竹座公演が決まり、引き続きお衣装のファッションショーをなさることになりました。お客様の中には松竹座→南座→御園座と全てご覧になってる方もいらっしゃるので、同じお衣装をお見せするわけにはいかないと、今回1着新調されたそうです。ただ、日にちがなく、さらに他のお衣装のメンテナンスなどもあり、玉ちゃんが思い描いていたものより少し足りない感じだそうですが、そういう“過程”をお見せするのも一興ということで、あえてそのお衣装もお見せしますとのことでした。

 今回はお見せくださったのは、①「吉田屋」の夕霧の出の打掛②歌右衛門さんがお召しになっていた夕霧の打掛(←これが今回新調)③揚巻の墨絵・金泥の打掛の三点です。

 ①夕霧の打掛
 「槍梅(やりうめ)、雪持ち」という柄だそうです。「槍梅」というのは花や蕾のついた枝がつんつん出ている、その様子が槍のようなのでそういう名前になりました。吉祥の印だそうです。尾形光琳の絵にもあるそうです。夕霧が登場するときに着られるそうですが、出てくるとすぐに脱いでしまうので、お客さんの側も一瞬しか見てないそうです。今回は後ろ向き多め、舞台の上手・下手・中央と移動して、ゆっくりたっぷりと見せてくださいました。裾は金糸の刺繍で非常にゴージャスでした。

 ここで、たぶん「打掛は一瞬」というつながりで、揚巻の牡丹の打掛は助六を隠す一瞬、八ッ橋の縁切りの打掛も登場してすぐに座ってしまうので一瞬、というようなお話をしてくださいました。

 ②歌右衛門さんがお召しになっていた打掛
 「雪持ち枯れ柳 白鷺に流れ水」という柄だそうです。玉ちゃんは「傾城」の最後の冬の場面に使うとおっしゃっていました。「白」というのは非常に美しい響きがある、昔は日本には白鳥はいなかったので、白い鳥と言えば白鷺を指すそうです。ヤマトタケルが白い鳥になって飛んでいくとなっているが、それは白鷺だそうです。今回新調された打掛なんですが、↑上にも書いたように、制作期間が少なくて、雪が少ないそうです。今までのお衣装でも、玉ちゃんの理想に近づけるために、仕立てた後も刺繍を足したりされることがあるそうです。「美」への飽くなき追求でございます。雪が少ない分、白鷺をとても立体的に刺繍してくださって、とおっしゃっていました。確かに白鷺、すごかったです。飛んでいきそうな勢いでした(スミマセン、語彙不足です)。表地が白黒のモノトーンな分、裏地の部分、普通のお着物の八掛の部分って言うんでしょうか、織物?先月見たお能の唐織のような模様の生地があしらわれており、脱ぎ着される時にフワッとチラッとカラフルな色彩が目に入ります。

 ③揚巻の墨絵・金泥の打掛
 助六のお母さんを見送る時に着て出られる打掛です。そもそも揚巻の打掛は、五節句(お正月、桜、鯉のぼり、七夕、菊)の柄?飾り?がついていますが、それとは別の打掛です。昔から襲名などのお祝いで親しくしてる日本画家の先生に描いていただくというのがあったそうで、歌右衛門さんは前田青邨や東山魁夷、梅幸さんは橋本関雪に描いてもらわれた打掛をお持ちだそうです。玉ちゃんのはエビサンの襲名披露の時に、室井登志生画伯に描いてもらわれたそうです。墨絵ですが、牡丹の花は金泥を施されており、非常に華やかな打掛です。こちらも表はモノトーンな分、裏が華やかになっていました。

 歌右衛門さんの打掛は世田谷美術館に寄付されたので、そちらで拝見することができるそうです。←コレ、コロナがなければ、ワタシ見に行く予定にしてたんです。それも梅玉さんのトークショー付きで。一応、図録は取り寄せましたが、実物を見たかったです

 以上がお衣装の「口上」です。続いて演目の紹介もしてくださいました。

 松竹座での「藤娘」は七之助さんとの「二人藤娘」以来になります。昨日もNHKの歌舞伎中継でお話でしたが、「藤娘」と言えば六代目菊五郎さんの「藤音頭」を取り入れたものが主流になっていますが、今回は趣向を変えて「潮来」で踊られます。舞台となる潮来出島は近江八景とおっしゃったように聞こえたのですが、ヤホーで検索すると潮来出島は茨城県とあるので、そのあたりの真偽のほどは???です。7歳の時に初めて踊られて、65年ぶりに今回踊られます。

 「お祭り」は赤坂日枝神社(←ココ、この前行きました)の御祭禮で、江戸三大祭りの筆頭に挙げられるものだそうです。本来は鳶頭一人で踊るように作られていますが(孝夫さんがいつも踊っていらっしゃいますね)、藤間ご宗家の六世勘十郎さんから「女ひとりで踊る申酉があるから」と言われて、昭和49年にお一人で踊られたのが最初です。「芸者は当時のアイドル、私にできますかどうか…、私も江戸っ子なので華やかに踊られせていただきます」とおっしゃっていましたが、何をおっしゃるウサギさん!でございます。私たちのアイドルですからね~。

 「口上」の最後はいつもの「隅から隅までずずずぃーーーっと」という台詞なんですが、またそれがとても良いお声なんです。聞き惚れました。

 休憩の後は「藤娘」からです。舞台は上手側に演奏者さんたち、藤の大木も上手側にありました。黒い塗りの傘をかぶって登場されるんですが、そのお可愛らしいこと!ちょっと恥じらうようなしぐさがso cuteです。「口上」の時に「娘なんて面映ゆい」っておっしゃっていたのですが、全然no problemでございます。孝夫さんの前髪もそうですが、なんなんでしょうね、この若々しさ、可愛らしさ、なぜか「はぁ~~~」てため息が出ます。客席もジワってました。

 途中で暗転になり、背景チェンジがありました。チェンジの間、お三味線と鳴り物の演奏が続くんですが、それもすごく良かったです。節も拍子も非常に心地よく、ワタシあまりリズム感の良い方ではないのですが、思わずリズムを取りたくなりました。

 暗転の後、八つ橋に菖蒲の背景になりました。パーッと明るくなって、お着物も藤色ではなく白地に藤の模様で、いつもの「藤娘」と全然違います。軽やかな感じです。振り付けもずいぶんと違うような気がしました。って書けるほど「藤娘」を見ているわけではないのですが。あくまで、個人のイメージです。

 最後は「お祭り」です。お着物は↑上のチラシの白地のお着物です。文字通り“粋で鯔背なお姐さん”でした。「お祭り」は孝夫さんのを見ることが多く、男女の違いはあれど、それをそのまま玉ちゃんが踊ってるって感じでした。見た目はおきれいな女形さんなんですが、玉ちゃんの元々の体育会系な気性が立役っぽいからかなぁと思って拝見しておりました。登場の場面で絡む若い衆が千次郎さんと吉太朗クンでした。「上方歌舞伎の二人を使ってくださって有難う」と心の中でお礼を言いつつ、孝夫さんの時は仁三郎さんと松十郎さんが絡むことが多くて、上背がある分、見栄えもいいので、スミマセン、そっちのほうがいいかも、ってちょっと思ってしまった失礼な客はワタシです。舞台だけでなく、花道も目一杯使って踊られるので、三階からだと最後は見えませんでした。そこはちと残念でした。

 カーテンコールは2回、1回目は花道を歩いて舞台に戻られました。2回目は「うふっ」みたいなポーズを取ってくださって、キャー、かわゆし~と思いながら拍手いたしました。玉ちゃん、全体的にノリノリ、ウキウキって感じで、口上でよく「いずれも様にはご機嫌麗しく、恐悦至極に存じます」という台詞がありますが、ワタシからも「玉ちゃんにはご機嫌麗しく、恐悦至極に存じます」とお返事したい!と思いました。そのおかげで、見終わった後、多幸感が半端ありません。Happyが飛んでます。これからご覧になる方、どうぞお楽しみに!

 
 番附です。中は写真集みたいになってます。通常の番附に載ってる配役や演奏者の一覧は1枚物のチラシで別に配布されていました。玉ちゃんご自身によるそれぞれの演目の解説があったり、真山仁さんのインタビュー文章があったり(インタビューした内容を文章にまとめていらっしゃいます。かなりの長文です)、非常に見応え、読み応えのある冊子になっていました。奥サン、買い!です。

 《オマケ》
 松竹座のかべす
 
 
 アラビアコーヒーです。見る前にコーヒー注入です。おやつはガトーショコラです。
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2 コメント

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初春 (まるこ)
2022-01-08 10:07:50
眼福に耳福、まさに初春ですね。
「口上」の楽しさ、「掛け」の華やかさ、舞踊のたおやかさ、可愛らしさや粋の良さ。素敵です。
そこに「うまいもん」。
羨ましい初芝居です。
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お正月 (おとら)
2022-01-08 22:52:53
本当に良い初芝居になりました。玉さまのお正月公演は「お客様にお正月気分を満喫していただきたい!」という思いが溢れています。劇場の中だけは明るく晴れやかな空気で満ち溢れていました。
返信する

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