おとらのブログ

観たもの、見たもの、読んだもの、食べたものについて、ウダウダ、ツラツラ、ヘラヘラ書き綴っています。

秀山祭九月大歌舞伎 夜の部

2015-09-26 22:22:41 | 観たもの
 夜の部は「伽羅先代萩」の通し上演です。通しで見たのは初めてです。上演記録を見ると平成20年7月に松竹座で通し上演されていたようですが、私はパスしています。配役を見ると藤十郎さんの政岡に孝夫さんの仁木弾正・八汐、菊五郎さんの勝元という超豪華メンバーでした。惜しいことをしました。その前の平成16年11月の松竹座の「先代萩」は見ています。玉ちゃんの政岡ということで喜び勇んで行ったけれど、何せ超ビギナーでしたので、飯炊きが退屈で爆睡したような記憶が…。

 夜の部のお席は2階1列目10番、花道のすぐ上のお席でした。くるりんさんから“ナイスなお席”と太鼓判を押していただいていたので、見る前からワクワクしておりました。本当にそのとおりで、玉ちゃん政岡の出の場面は国宝級の打ち掛けと片はずしの鬘をしっかりチェック、「床下」の仁木弾正の引っ込みはろうそくの光がゆれる中、吉右衛門さんがふわふわと花道を歩くお姿をじっくり堪能、ポチッとした甲斐があったというものです。

 今月の歌舞伎座の感想はプロ・アマ問わずものすごい数になっていて、私なんかが「今さら…」って感じなんですが一応…。

 上に書いたように通しで見るのは初めて、序幕の「花水橋」はもちろん初めてで、ようやく話の流れを掴めました。孝夫さんが常々「通しでご覧頂きたい」とおっしゃっていますが、納得です。話の流れもですが、タイトルの「伽羅」の意味もわかりました。伽羅の下駄なんですね。頼兼を襲った諸士の一人が頼兼の下駄の匂いを嗅ぐ場面がありましたが、見ている時は筋書がなかったので、何でここで下駄フェチ?臭いフェチ?がいるんだろうと不思議に思っておりました。とんでもない誤解でした。

 「竹の間」「御殿」は玉ちゃんオンステージでした。玉ちゃんにあまり「母」というイメージがなくて、子役の鶴千代や千松への接し方ってどうなんやろうと思っていましたが(16年の松竹座の記憶が全く残っていないので)、「母」でした。(←スミマセン、何か偉そうな書き方になっていますが、他に書きようがなくて)特に千松を殺されて、舞台にその遺骸と二人っきりになった場面は、その姿を見ただけで泣けました。昼の部の吉右衛門さんと双璧でした。

 その前の飯炊きは“見所”と聞いていましたので、しっかりと2階からオペラグラスで拝見しました。文字通り“流れるような”動きです。玉ちゃんって、いつも思うんですが、手の先、指先がとてもエレガントなんです。女形さんって皆さん、女性らしく見せるため、世間一般の平均的な女性よりもずっと女らしく振舞っていらしゃって、手の動き、足の捌き、腰の向き、どれをとっても優雅なんですが、そんな中でも玉ちゃんは別格、舞台上の玉ちゃんの指先を見ながら自分の指先もその形にしようと客席で怪しげな動きをしてしまうことがあるんですが、全然似ません。同じ5本指なんですけどね。どこがどうなっているんでしょうね。その優美な姿をたっぷりと見せていただきました。

 歌六さんの八汐、菊ちゃんの沖の井、吉弥さんの栄御前、皆さん抜群の安定感で、よろしゅうございました。歌六さんは本当に何をなさってもすごい高レベルです。八汐はめちゃくちゃ憎たらしく、後半の外記はめちゃくちゃイイ人、どちらも“はまり役”に見えるんですからね。菊ちゃんは真面目なご性格がそのまま生かされたようなお役で、学級委員長みたいでした。吉弥さんの後ろにはたぶん純弥さんがついていらっしゃったと思うんですが、私の席からは影になって見られませんでした(秀太郎さんが栄御前の時は千壽さんが控えていらっしゃいました)。そうそう、竹之助さんが台詞のある腰元のお役で、上方歌舞伎贔屓としてはちとうれしかったです。

 玉ちゃんの政岡、確かに素晴らしく、涙涙で見たのですが、見終わった後に「でも、おととしの藤十郎さんの政岡のほうがもっとどーんとこちらに落ちてきたよなぁ」とチラッと思って、何でかなぁと思っていたら蘭鋳郎さまが解説してくださっていました。よくわかりました。さらさらっとしてるんですね。見る前に私が「母ってどう?」と思ったのも、そういうのを感じていたからなんでしょうね。

 後半の「対決」ですが、吉右衛門さんはそりゃふてぶてしく、「悪」がそのまま着物を着ているような、当代一の弾正でしたが、対する勝元が染五郎さんだったのが惜しいっ、残念でした。何か軽いんですよね。完全に位負けです。クライマックスの勝元が弾正に筆跡と印影を質す場面、勝元が「恐れ入ったか」って詰め寄るんですが、あれでは「恐れ入らん」ってなるでしょうね。私のお隣に座っていた男性、結構独り言が多くて見ている間中何かブツブツ言ったはったんですが、その人もその場面で「これでは恐れ入ることはできん」とボソッと呟かれ、隣で私も激しく同意いたしました。やっぱりお芝居は一人では出来ないものだと思いました。まあ、それでも吉右衛門さんの弾正はそういうハンディ?を超えて素晴らしく、今回の「先代萩」、急遽上京を決め、一等をはりこんで見てよかったとしみじみと思いながら歌舞伎座を出ました。

 
 終演後に撮りました。

 
 2階のドリンクコーナーでパニーニを売るようになったと桔梗さんのお座敷で伺ったので、早速いただいてまいりました。小さく見えるけど、なかなかボリュームがあって美味しかったです。これ1個で十分お腹がいっぱいになりました。ワインかビールでいただきたいところですが、寝てはいけないので、コーヒーにしておきました。種類が3種類あって、行ってすぐに予約しておくと、次の幕間に用意してくれます。パニーニ以外にもシュークリームとかクリームパンとかあって、次回のお楽しみにします。
コメント (6)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする