おとらのブログ

観たもの、見たもの、読んだもの、食べたものについて、ウダウダ、ツラツラ、ヘラヘラ書き綴っています。

ろくでなし啄木

2011-01-29 23:22:23 | 観たもの
 シアターBRAVAで「ろくでなし啄木」を見てきました。劇作家の三谷幸喜さんが今年50歳を迎えるそうで、それを記念して「大感謝祭」と銘打って、今年は舞台4本、映画、ドラマ、小説の計7本の新作を発表するそうで、これはその第一作目の舞台です。

 タイトルからもわかるように石川啄木を取り上げています。お話は、
才能がありながら、貧しさの中で不遇をかこつ啄木のもとに、借金取りを手伝うテツがやって来る。意気投合した2人は、カフェーで飲み明かすようになり、その店の女給トミと微妙な三角関係に。ここで起きるある夜の出来事が、三人三様に語られる。

 配役は、啄木に藤原竜也、テツに中村勘太郎、トミに吹石一恵となっています。

 石川啄木って、例えば「東海の小島の磯の白砂にわれ泣きぬれて蟹とたはむる」という短歌から、繊細でピュアな歌人のイメージですが、実は結構金と女にだらしない、“ろくでなし”でした。そういう“ろくでなし”な一面を知ることも、このお芝居のポイントだったような気がしますが、私は伊藤整さんの「日本文壇史」を読んで、「たいがいなヤツやなぁ」ってことを知っていたので、「えー、そうやったんやぁ」という驚きはありませんでした。1か月分の給料が入るとその日のうちに女郎買いで使ってしまう、函館にいる妻には地元の有力者に金の無心をさせる、友人の金田一京助(あの国語学の権威です。同郷だったようです)には借金や女の後始末をさせる…ほんと、ひどいヤツでした。(私は勘太郎さんはてっきり「金田一京助」のお役かと思っていました。)

 お芝居は、芥川の「藪の中」のような構成になっていました。それぞれが「ある夜の出来事」について語ります。微妙に細部が違っていて「さて、真実は何処に?」という終わり方です。3人が同じ出来事を語るので、同じ場面が3回出てきます。これが映像なら前の映像を使えばいいんですが、生の舞台なので、そういうことができないので、役者さんは3回同じ演技をすることになります。よく混乱しないよなぁと感心しながら拝見していました。

 藤原竜也クンは相変わらず「藤原竜也」でした。でも、今回も脱ぎませんでしたね。足は太ももをあらわにしていらっしゃいましたが…。勘太郎さんの現代劇は初めてでしたが、歌舞伎の舞台で慣れていらっしゃるので、安心して見ておりました。歌舞伎の舞台でもそう思うんですが、本当にお父様の勘三郎さんそっくりで、声だけ聞いていたら聞き分けられないくらいです。吹石さんは初舞台だったそうですが、ベテラン舞台俳優のお二人を相手に堂々と演じていらっしゃいました。

 今回、お席は10列目左の端のほうだったんですが、役者さんは舞台で座ってお芝居する場面が多く、前の人の頭で非常に見づらい席で、しょっちゅう頭を右や左に動かさないといけなくて、何だか疲れた観劇でした。なので、もうひとつ素直に「面白かったわ」とは言えないですね。
コメント
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