おとらのブログ

観たもの、見たもの、読んだもの、食べたものについて、ウダウダ、ツラツラ、ヘラヘラ書き綴っています。

わが心の歌舞伎座 ②

2011-01-31 23:36:19 | 観たもの
 登場する歌舞伎俳優さんたちですが、こういう記録映画に出られるくらいですから、当たり前といえば当たり前のことながら、今の歌舞伎界を代表する方たちばかりで、“素”の語りの部分も断片的に映し出される舞台もそれはそれは素晴らしく、2時間47分ずっと感動しっぱなしでした。実は、前夜に「ろくでなし啄木」を見に行き、で、翌朝9時55分に間に合うように出かけ、「寝たらどうしよう、もったいないなぁ」と思っていたんですが、杞憂に終わりました。

 トップは芝翫さんです。役者になって70年超だそうで、舞台は「藤娘」でした。ナレーション(倍賞千恵子さんです)では「娘に見える」とおっしゃっていましたが、やっぱりなかなか厳しかったです。もうひとつは5人のお孫さんと共演している舞台でした。「子供よりは孫のほうが気が楽」とおっしゃっていました。

 吉右衛門さんのパートでは「義経千本桜大物浦」「俊寛」「熊谷陣屋」の3本で、いずれも私が昨年見た演目ばかりで、演じる役者によってこんなに違うものかと思いました。特に「熊谷陣屋」は平成中村座のお弟子さんたちの試演会の演目で、途中から見たせいもあったけど「よーわからん」と思っていましたが、吉右衛門さんだって、ほんの数分しか映っていないんですが、その短い時間でも感動しました。ちょっと、ほろっとしかけましたもの…。

  團十郎さんは「勧進帳」の弁慶が花道を飛び六方で引っ込む場面を揚幕の内側のカメラから撮ってあったんですが、すごい迫力で、團十郎さんも息が上がって、楽屋に戻って「ハーハー」と呼吸がなかなか整わず、それだけ体力が要るんですよね。團十郎さんは以前白血病を患っていらっしゃるので、よけいそうなのかもしれませんが、反射的に思い出すのは海老サマです。お父様がこんなに身を削って舞台を勤めていらっしゃるのに、とつい思ってしまいます。

 玉ちゃんは、登場は奈落からでした。スーツ姿での楽屋入りも映っていました。ファンの皆様によると、玉ちゃんの楽屋入りは結構“なぞ”だそうで(どこから入ってどこから出ているのか皆さん知らないそうです)、おそらく撮影用に正面から入って来られたんでしょう。楽屋口のところに神棚があって、皆さん、その前で拍手を打ってお参りされていましたが、さすがに玉ちゃん、拍手を打つ姿も優雅で美しゅうございました。指先まで神経が行き届いているって言うんでしょうか、「まあ、ステキ」でした。

 玉ちゃんの舞台は「天守物語」「海神別荘」「阿古屋」でした。「吉田屋」とか「籠釣瓶」とか「助六」とか豪華絢爛な傾城もあるのに、と思いましたが、そちらは主役ではないので、玉ちゃんが主役のこれらの作品が選ばれたんでしょうね。「天守物語」「海神別荘」はいずれも泉鏡花原作で、非常に幻想的な舞台でした。お稽古風景も映っていましたが、玉ちゃん自ら演出もされていました。

 今や、歌舞伎界の「立女形」である玉ちゃんですので、他の演目でもそこかしこにご登場で、「ウォーリーを探せ」ならぬ「玉ちゃんを探せ」状態になっていたワタクシです。「菅原伝授手習鑑 道明寺」で老け役の覚寿をなさったと話題になっていたんですが、そちらも拝見することができました。本当に、真っ白なお婆さんでした(白髪でお衣装も白っぽいので)。

 先だって亡くなられた富十郎さん、とてもお元気なお姿で登場されていました。ご自分の舞台には鷹之資さんを出演させていらっしゃったようで、お稽古の場面では、富十郎さんの後ろに必ず鷹之資さんが映っていらっしゃいました。印象に残った舞台として、昨年5月の矢車会をあげていらっしゃって、皇太子殿下の前で鷹之資さんといっしょに連獅子を踊り、その後貴賓室で殿下とお話されたそうで、それが本当に嬉しそうにおっしゃっていて、思わずぐっときました。
コメント
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