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消費税率引き上げに向けていよいよ動き出した!

 財務省が消費税率引き上げに向けて本格的に動き出したようだ。
 「新年金制度に関する検討会」(議長=鳩山由紀夫首相)を立ち上げて、5月をめどに基本的な考え方をまとめる方針を示すという。この鳩山政権らしからぬ手回しの良い物事の進め方は、夏の参院選前に、民主党のいうところの最低保証年金の財源の形をとって消費税率の引き上げを「予約」する手順に従ったものだろう。『朝日新聞』の3月8日夕刊の見出しは「年金改革 参院選にらみ」だが、実際には、参院選が消費税率の引き上げに利用されるということではないか。
 たとえば、マニフェスト上は「国民にとって安心な年金制度の創設を約束する」といった形をとって、年金の目的税として消費税率の引き上げを入れ込むのではないだろうか。
 民主党が参院選挙で過半数を取ればスムーズだし、そうでない場合も、自民党は、消費税率引き上げに関しては、強く反対しないだろう。
 考えてみると、財務省にとって念願の消費税率引き上げに向けて、現在ほど条件の整った状況はない。
 鳩山首相は巨額の脱税を「お目こぼし頂いて、首相を続けさせて貰っている」立場だし、小沢氏についても国税はお金の流れをある程度把握しているのではないか。良し悪しの問題はあるとしても、現実問題として再び家宅捜索されたり、あるいは起訴でもされることになれば小沢氏の政治生命はあらかた終わりだろう。民主党の裏表のツー・トップは共に弱点を押さえられているから抵抗できない。それに、小沢氏はもともと国民福祉税を提案した消費税率引き上げ論者だ。
 先般の郵政選挙で自民党が大勝したときも、消費税率引き上げのチャンスだったが、小泉首相に「私の政権ではやらない」と消費税率引き上げを封じられてしまった。安倍、福田、麻生の三内閣は、国民の支持基盤が脆弱で、とても消費税率引き上げに向けて動ける状態ではなかった。
 それと較べて、今回は民主党が多数勢力を持ちつつもツー・トップが明らかな弱点を持っており、野党である自民党を見ても、党首は財務省に忠実な谷垣氏だし、これを批判している与謝野氏も財政再建優先論者だ。財務省としては、これほど消費税率を上げやすい布陣もあるまい。
 ギリシアの財政危機なども、財政再建の必要性を訴える上で、ほどよいスパイスだ。
 財務大臣就任当初は「今年一年は増税ではなく、財政支出のムダの削減に注力する」とやや強硬な姿勢を示した菅大臣も、その後程なく「3月から議論はOK」とすっかり軟化した。短期間に調教が完了したようだ。
 菅氏は、財務省方面の実務に疎いからそもそも財務官僚には逆らえないだろうし、鳩山首相がいかにも頼りなく、いつ辞任せざるを得なくなるか分からない現状では、財務省との関係を良好にしつつ次のチャンスを待つのが得策でもあるだろう。
 また、3月8日付けの『日経』朝刊の井堀利宏東大教授の「経済教室」や、同じく3月3日の「消費税率最低15%が必要」と小見出しの付いた櫻川昌哉慶大教授の「経済教室」、さらに3月7日の『読売』の社説など、ここのところメディアには消費税率引き上げ論が頻繁に登場している。メディアも財務省の意向を汲んで動いているようだ。「最低15%は必要」「20%台」といった数字を頻繁に目にすると、10%なら十分小さく見える。世論のアンカリングに関しても抜かりはない。
 もともと日経は、財界が、あわよくば法人税率の引き下げの財源として、ないしは法人税率引き上げに至らずに済ませる財源として、消費税率引き上げに賛成であることもあって、消費税率引き上げに対して積極的な論調だ。財界としては、最低保証年金が税方式になることも企業の年金コスト負担の一部を税一般に転嫁できるので、歓迎だろう。
 世論も、「消費税率引き上げやむなし」に傾きつつあるようで、かつてほど強力な反対論はない。「社会保障の財源」という形でコーティングすれば、世間は消費税率引き上げを飲むのではないか。

 先般の予算編成を見ても、我が国の財政は、歳入歳出両面で硬直的だ。景気を見て増税のタイミングをコントロールするような贅沢は、我が国には無理なのかも知れない。また、現在の官僚と政治家(主に民主党)の力関係を考えると、財政支出の削減も難しそうだ。
 何れ増税が必要だとした場合、消費税は、相対的に裕福な高齢者層にも課税が及ぶので「まあまあマシな方の税金」だろう。徴税コストの効率性を考えると、5%では税率が低いということもある。
 また、消費税なら、鳩山氏のような「平成の脱税王」(与謝野氏の表現)でも、お金を使ったときには税金を払わなければならない。脱税・節税しにくい税金という意味では好感が持てる。
 個人的な意見として、「税目の中で相対的にどこを増やすか?」という問題設定の場合、消費税には反対しない。ただ、手順として財政支出削減の前に消費税率の引き上げを決めることの問題と、デフレと不景気の最中に消費税率を上げるとすることへの違和感はある。

 しかし、消費税率引き上げを棚上げした上で、財政支出のムダ削減に徹底的に取り組むとした総選挙の頃の民主党の勢いは一体どこに消えたのか。
 政権交代は、結局のところ、情報バラエティのキャスターの交替ほどの意味も持っていなかった。今の段階では、そう思わざるを得ない。
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