検証「コロナの時代を生きる」(5)
―“貧しき者は ますます貧しく過酷な状況に”―
「富める者はますます富み、貧しき者はその持て物をも奪われるべし」(新約聖書マタイ伝13章12節)
という冷徹で苛酷な現実が、コロナ禍の日本で進行しています。
今年の始めから世界に広まった新型コロナウイルスは、それまで社会の奥底に隠されていた深刻な問題
をあぶり出しました。
中でも、地球規模でも日本国内にも存在する貧富の格差と差別は深刻です。
ウイルス禍は、ある意味“平等な”側面を持っている、と言われることがあります。その根拠は、豊かな
人も貧しい人も平等に感染するから、というものです。しかし、現実は違います。
ニューヨークでは、貧しい黒人やそのたヒスパニック系マイノリティーなどが集中する地区の感染者の
方が、豊かな白人が住む居住区よりも、感染率も死者数もはるかに多いことが分かっています。
というのも、貧しい人たちは、コロナ禍のただ中でも、ゴミ収集人、街の清掃人や宅配の配達人など、
“エッセンシャル・ワーカー”(社会を維持してゆくうえで必要不可欠な働き手)、として、たとえロッ
クダウン(都市封鎖)の状況下で感染の危険をおかしてでも働きに出なければならないからです。
日本ではどうでしょうか。日本ではアメリカのように人種的、経済的事情によって居住区が分かれる
ということはありませんが、それでも別の形で、コロナ禍は貧富と格差という社会の傷口を一挙に広
げました。
今年の6月頃、テレビで、軽井沢で貸別荘を斡旋している不動産会社の職員の話を伝えていました。
彼によれば、当時すでに8月いっぱいまで、貸別荘は予約で満室だそうです。
このように自分の別荘や貸別荘で避暑とコロナを避ける一石二鳥の生活を送ることを、メディアでは
「コロナ疎開」と呼んでいましたが、これできるのは富裕層だけです。
では日本の貧しい人、弱い立場の人たちはどのような現実に直面しているのでしょうか?以下に示す
例は現在、日本のどこにでも起こっている現実の一端です。
千葉県に住む40代の女性は8月28日、仕事から帰宅してテレビをつけた。画面には、辞意を表明する
安倍首相の姿が映っていました。彼は誇らしげに「400万人を超える雇用をつくり出し……」と実績
を強調していましたが、この女性は、空しさがこみ上げた、といいます。
彼女は葬儀場で食事を提供する会社で14年間、非正社員として働いていました。繁忙期は休日返上で
職場に貢献してきたつもりでしたが、新型コロナウイルス禍で会社が休業すると、非正社員に休業手
当は出ませんでした。結局、7月で解雇。いわゆる「雇止め」です。
安定した次の仕事は見つからず、やむを得ず、個人請負の配送の仕事に就きましたが、「雇用保険も
なく、労働者として守られていない。不安だけど生活のためには仕方ない」と諦めでいます(注1)。
3年毎に行われる国民生活基礎調査(18年度版)によれば、非正規就業者は全体で約38%ですが、
男性21%なのに対して女性は55%強と、半数以上に達しています。明らかに女性は差別されてい
ます。
まだ現時点でも正式の統計は出ていませんが、おおざっぱにいって、現在は全就業者の4割近くが非
正規ではないかと思われます。
「労働問題弁護士ナビ」によると、「コロナ解雇」といえる「雇止め」は、今年4月末で3774人
でしたが、5月21日時点で葉1万6723人と、1か月で1万人以上増えています(注2)。
おそらく、6月末から7月末にかけての東京都、大阪府、愛知県、福岡県など大都市圏における爆発
的な感染者の増加以降、「雇止め」はさらに急速に増えていると思われます。
厚労省が9月8日に発表した、コロナ禍に関連する解雇や雇止めが、見込みも含めて5万2508人で、
4日時点で、先週より3,041人増え、うち、パートやアルバイトなどの非正規が77%を占めていた。
これも、ハローワークなどの事業所からの報告を基に集計したもので、実際はもっと多いと思われま
す(『東京新聞』2020年9月9日)
それは、日本経済全体が、これまでになく大きく落ち込んでいるからです。
新型コロナウイルス禍が直撃した2020年4~6月期に実質国内総生産(GDP)が前期比年率27.8%減と
いう、戦後最悪の衝撃的な落ち込みが明らかになりました。
それもそのはずで、昨年10~12月、1月~3月、4月~6月の3連続四半期(9カ月)で54兆
円のGDPが消えてしまったのです。日本の一般会計予算が100兆円であることを考えれば、いか
に大きな落ち込みかがわかります。
コロナショックの落ち込みは、リ―マンショック(1年で43.5兆円)、東日本大震災(9が月で
14.2兆円)と比べても、はるかに大きいのです(注3)。
人を雇う企業側は、非正規就業者を、いつでも解雇できる都合のよい働き手、と考える傾向がありま
す。景気が悪くなれば、経費削減のためにこうした人たちを真っ先に解雇しようとします。
しかも、現在ではコロナ不況を大義名分として、報告されている以上の「雇止め」が発生している可
能性があります。
「雇止め」以外でも、正規社員は自宅でのテレワークが認められているのに、非正規就業者には出社
を強制するなどの事例が報告されています。
それでは、このようなコロナと経済の後退の中で、とりわけ追い詰められている状況を母子家庭にお
ける実態から見てみましょう。
母子家庭は全国におよそ123万世帯で、ここ5年ほどほぼ横ばいです。このうち相対的貧困率(平
均世帯年収の半分以下)は50.8%、つまり半分強です。
子どもいる世帯に限って言えば、平均年収は707万円ですが、母子世帯では200万円以下が60
%弱です。300万円以下が80%です。
もちろん、母子家庭には、国からも生活や養育に対する公的扶助が与えられ、離別した父親からも養
育費が入る(しかしこれは必ずしも保障されない)ので、実際は、もう少し多いのかも知れません。
いずれにしても、シングルマザーは、残業も出張も頼みにくいし、子どもの健康状態によっては急に
仕事を休むかもしれないなど、マイナス点が多くあるので、企業はシングルマザーを正規労働者とし
て雇いたがりません。
そこで、シングルマザーはやむなくパートや非正規就業者になるしかないのです。しかしパート、ア
ルバイトの収入は極端に低く、平均年収は133万円しかありません(注4)。
こうした状況で、母子家庭はどのような生活を強いられているのでしょうか?
NPO法人「しんぐるまざーず・ふぉーらむ」が今年7月に行った「新型コロナによる母子家庭の食
生活美変化」にアンケート調査(1800人が回答)によれば、
1回の食事量が減った(14.8%)、1日の食事回数が減った(18.2%)、お菓子やおやつを食事の代
わりにすることが増えた(20.1%)、 炭水化物だけの食事が増えた(49.9%)、インスタント食品が
増えた(54.0%)、という結果でした。
説明は要らないと思いますが、これらの数字を見ただけで、胸が痛くなるほど残酷な状況です。
恐らく、食事といっても半数近くの世帯では、せいぜいお米+α、カップ麺、菓子パンなどの炭水化
物やインスタント食品が中心なのでしょう。
それでさえ、1日の食事の回数を減らさざるを得ない家庭が18%もいるのです。
こうした家庭の子どもの将来を考えるととても心配になります。
アンケートの自由記述では、「こどもたちには2食で我慢してもらい、私は1食が当たり前。3か月
で体重が激減」(二人の子どもを持つ30代)という切実な事情を書いています。
コロナは食事だけでなく子どもの教育にも母子家庭に深刻なダメージを与えています。
「子どもが学校にゆけなくなった。タブレット、パソコンがないため会話に入れずいじめに近い感じ。
子どもを守れていない自分が嫌で死にたい」(3人の子どもを持つ30代)、といったように、実態
は想像を超える過酷さです(『東京新聞』2020年9月7日)
こうした家庭で育った子どもたちが健全な身体や精神を培うことは非常に難しいでしょう。彼らは高
等教育を受けることは難しく、就職にも不利で、収入の低い職しか得られない可能背があります。そ
こでまた、貧困が生み出される、「貧困の連鎖」が生じます。
これが本当に、憲法で「健康で文化的な生活」を保障している、“豊かな”日本の実情でしょうか?弱
者に優しい国こそが、真の文化国家だと思います。
「Go To トラベル」も「Go To イート」も、貧困にあえいでいる母子家庭にとっては無縁の話です。
それでも「Go To トラベル」事業に1兆3500億円、「Go To イート」に767億円の予算が組まれ
ています。その本の一部でも貧困層に給付すべきではないでしょうか?
政府は、貧困層の問題にはあまり関心がないようですが、このような世帯の子どもたちも健康で文化的
な生活を送る権利があり、彼らこそがこれからの日本を背負ってゆく世代なのです。
子どもへの投資は、国にとって非常に価値のある投資なのです。
そして、コロナ禍の先が見えない現在、経済の縮小は不可避で、一部の富裕層は株などへの金融投資で
潤うかもしれませんが、大多数の国民は所得の減少に直面してゆきます。
雇用者数を季節による変動を差し引いて集計すると、今年6月までの3カ月で145万人減っています。ま
た企業活動の停滞で、非正規従業員の雇い止めなどが広がったからです。
1人当たりの現金給与総額も、残業代の減少などを受けて6月に前年同月比1.7%減と低迷しています。20
年の春季労使交渉の賃上げ率は前年より縮み、今夏のボーナスも鉄鋼や鉄道などを中心に減った企業が
多くあります。
4~6月期の雇用者報酬の減少は金額にすると2.6兆円程度。仮に1年間回復しなければ10兆円規模の減額
となり、計12兆円あまりの定額給付金の効果が薄れると家計はいよいよ厳しくなります。つまり、本当
に家計が苦しくなるのは、これからなのです。
ニッセイ基礎研究所の斎藤太郎氏は「20年度の家計の可処分所得は給付金が押し上げ、21年度は反動で
落ち込む。雇用所得環境の悪化が消費の回復を遅らせる可能性が高い」と分析しています。分配が減り、
成長の妨げになる悪循環が忍び寄ってきます(注5)。
これを食い止められるかどうかは、政府と国民が真剣に貧困と格差・差別の解消に取り組むか否かなか
にかかっています。
「富める者はますます富み、貧しき者はその持て物をも奪われるべし」(新約聖書マタイ伝13章12節)
という古来の警句を、私はもう一度胸に刻んでおきます。
(注1)『朝日新聞』デジタル(2020年9月8日 5時00分)
https://www.asahi.com/articles/ASN976WVKN94ULFA02Y.html?ref=mor_mail_topix1
(注2)https://roudou-pro.com/columns/11/
(注3)『日経新聞』(2020年8月19日)
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO62781930Y0A810C2EE8000/
(注4)「しんぐるまざーず・ふぉーらむ」https://www.single-mama.com/status/
(注5)『日本経済新聞』デジタル版(2020/8/20 23:00) https://www.nikkei.com/article/DGXMZO62867620Q0A820C2EE8000/?n_cid=NMAIL007_20200821_A
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最近ではこのような古典的なアサガオは珍しくなりました。 これは最近のはやり出したアサガオなのでしょうか
―“貧しき者は ますます貧しく過酷な状況に”―
「富める者はますます富み、貧しき者はその持て物をも奪われるべし」(新約聖書マタイ伝13章12節)
という冷徹で苛酷な現実が、コロナ禍の日本で進行しています。
今年の始めから世界に広まった新型コロナウイルスは、それまで社会の奥底に隠されていた深刻な問題
をあぶり出しました。
中でも、地球規模でも日本国内にも存在する貧富の格差と差別は深刻です。
ウイルス禍は、ある意味“平等な”側面を持っている、と言われることがあります。その根拠は、豊かな
人も貧しい人も平等に感染するから、というものです。しかし、現実は違います。
ニューヨークでは、貧しい黒人やそのたヒスパニック系マイノリティーなどが集中する地区の感染者の
方が、豊かな白人が住む居住区よりも、感染率も死者数もはるかに多いことが分かっています。
というのも、貧しい人たちは、コロナ禍のただ中でも、ゴミ収集人、街の清掃人や宅配の配達人など、
“エッセンシャル・ワーカー”(社会を維持してゆくうえで必要不可欠な働き手)、として、たとえロッ
クダウン(都市封鎖)の状況下で感染の危険をおかしてでも働きに出なければならないからです。
日本ではどうでしょうか。日本ではアメリカのように人種的、経済的事情によって居住区が分かれる
ということはありませんが、それでも別の形で、コロナ禍は貧富と格差という社会の傷口を一挙に広
げました。
今年の6月頃、テレビで、軽井沢で貸別荘を斡旋している不動産会社の職員の話を伝えていました。
彼によれば、当時すでに8月いっぱいまで、貸別荘は予約で満室だそうです。
このように自分の別荘や貸別荘で避暑とコロナを避ける一石二鳥の生活を送ることを、メディアでは
「コロナ疎開」と呼んでいましたが、これできるのは富裕層だけです。
では日本の貧しい人、弱い立場の人たちはどのような現実に直面しているのでしょうか?以下に示す
例は現在、日本のどこにでも起こっている現実の一端です。
千葉県に住む40代の女性は8月28日、仕事から帰宅してテレビをつけた。画面には、辞意を表明する
安倍首相の姿が映っていました。彼は誇らしげに「400万人を超える雇用をつくり出し……」と実績
を強調していましたが、この女性は、空しさがこみ上げた、といいます。
彼女は葬儀場で食事を提供する会社で14年間、非正社員として働いていました。繁忙期は休日返上で
職場に貢献してきたつもりでしたが、新型コロナウイルス禍で会社が休業すると、非正社員に休業手
当は出ませんでした。結局、7月で解雇。いわゆる「雇止め」です。
安定した次の仕事は見つからず、やむを得ず、個人請負の配送の仕事に就きましたが、「雇用保険も
なく、労働者として守られていない。不安だけど生活のためには仕方ない」と諦めでいます(注1)。
3年毎に行われる国民生活基礎調査(18年度版)によれば、非正規就業者は全体で約38%ですが、
男性21%なのに対して女性は55%強と、半数以上に達しています。明らかに女性は差別されてい
ます。
まだ現時点でも正式の統計は出ていませんが、おおざっぱにいって、現在は全就業者の4割近くが非
正規ではないかと思われます。
「労働問題弁護士ナビ」によると、「コロナ解雇」といえる「雇止め」は、今年4月末で3774人
でしたが、5月21日時点で葉1万6723人と、1か月で1万人以上増えています(注2)。
おそらく、6月末から7月末にかけての東京都、大阪府、愛知県、福岡県など大都市圏における爆発
的な感染者の増加以降、「雇止め」はさらに急速に増えていると思われます。
厚労省が9月8日に発表した、コロナ禍に関連する解雇や雇止めが、見込みも含めて5万2508人で、
4日時点で、先週より3,041人増え、うち、パートやアルバイトなどの非正規が77%を占めていた。
これも、ハローワークなどの事業所からの報告を基に集計したもので、実際はもっと多いと思われま
す(『東京新聞』2020年9月9日)
それは、日本経済全体が、これまでになく大きく落ち込んでいるからです。
新型コロナウイルス禍が直撃した2020年4~6月期に実質国内総生産(GDP)が前期比年率27.8%減と
いう、戦後最悪の衝撃的な落ち込みが明らかになりました。
それもそのはずで、昨年10~12月、1月~3月、4月~6月の3連続四半期(9カ月)で54兆
円のGDPが消えてしまったのです。日本の一般会計予算が100兆円であることを考えれば、いか
に大きな落ち込みかがわかります。
コロナショックの落ち込みは、リ―マンショック(1年で43.5兆円)、東日本大震災(9が月で
14.2兆円)と比べても、はるかに大きいのです(注3)。
人を雇う企業側は、非正規就業者を、いつでも解雇できる都合のよい働き手、と考える傾向がありま
す。景気が悪くなれば、経費削減のためにこうした人たちを真っ先に解雇しようとします。
しかも、現在ではコロナ不況を大義名分として、報告されている以上の「雇止め」が発生している可
能性があります。
「雇止め」以外でも、正規社員は自宅でのテレワークが認められているのに、非正規就業者には出社
を強制するなどの事例が報告されています。
それでは、このようなコロナと経済の後退の中で、とりわけ追い詰められている状況を母子家庭にお
ける実態から見てみましょう。
母子家庭は全国におよそ123万世帯で、ここ5年ほどほぼ横ばいです。このうち相対的貧困率(平
均世帯年収の半分以下)は50.8%、つまり半分強です。
子どもいる世帯に限って言えば、平均年収は707万円ですが、母子世帯では200万円以下が60
%弱です。300万円以下が80%です。
もちろん、母子家庭には、国からも生活や養育に対する公的扶助が与えられ、離別した父親からも養
育費が入る(しかしこれは必ずしも保障されない)ので、実際は、もう少し多いのかも知れません。
いずれにしても、シングルマザーは、残業も出張も頼みにくいし、子どもの健康状態によっては急に
仕事を休むかもしれないなど、マイナス点が多くあるので、企業はシングルマザーを正規労働者とし
て雇いたがりません。
そこで、シングルマザーはやむなくパートや非正規就業者になるしかないのです。しかしパート、ア
ルバイトの収入は極端に低く、平均年収は133万円しかありません(注4)。
こうした状況で、母子家庭はどのような生活を強いられているのでしょうか?
NPO法人「しんぐるまざーず・ふぉーらむ」が今年7月に行った「新型コロナによる母子家庭の食
生活美変化」にアンケート調査(1800人が回答)によれば、
1回の食事量が減った(14.8%)、1日の食事回数が減った(18.2%)、お菓子やおやつを食事の代
わりにすることが増えた(20.1%)、 炭水化物だけの食事が増えた(49.9%)、インスタント食品が
増えた(54.0%)、という結果でした。
説明は要らないと思いますが、これらの数字を見ただけで、胸が痛くなるほど残酷な状況です。
恐らく、食事といっても半数近くの世帯では、せいぜいお米+α、カップ麺、菓子パンなどの炭水化
物やインスタント食品が中心なのでしょう。
それでさえ、1日の食事の回数を減らさざるを得ない家庭が18%もいるのです。
こうした家庭の子どもの将来を考えるととても心配になります。
アンケートの自由記述では、「こどもたちには2食で我慢してもらい、私は1食が当たり前。3か月
で体重が激減」(二人の子どもを持つ30代)という切実な事情を書いています。
コロナは食事だけでなく子どもの教育にも母子家庭に深刻なダメージを与えています。
「子どもが学校にゆけなくなった。タブレット、パソコンがないため会話に入れずいじめに近い感じ。
子どもを守れていない自分が嫌で死にたい」(3人の子どもを持つ30代)、といったように、実態
は想像を超える過酷さです(『東京新聞』2020年9月7日)
こうした家庭で育った子どもたちが健全な身体や精神を培うことは非常に難しいでしょう。彼らは高
等教育を受けることは難しく、就職にも不利で、収入の低い職しか得られない可能背があります。そ
こでまた、貧困が生み出される、「貧困の連鎖」が生じます。
これが本当に、憲法で「健康で文化的な生活」を保障している、“豊かな”日本の実情でしょうか?弱
者に優しい国こそが、真の文化国家だと思います。
「Go To トラベル」も「Go To イート」も、貧困にあえいでいる母子家庭にとっては無縁の話です。
それでも「Go To トラベル」事業に1兆3500億円、「Go To イート」に767億円の予算が組まれ
ています。その本の一部でも貧困層に給付すべきではないでしょうか?
政府は、貧困層の問題にはあまり関心がないようですが、このような世帯の子どもたちも健康で文化的
な生活を送る権利があり、彼らこそがこれからの日本を背負ってゆく世代なのです。
子どもへの投資は、国にとって非常に価値のある投資なのです。
そして、コロナ禍の先が見えない現在、経済の縮小は不可避で、一部の富裕層は株などへの金融投資で
潤うかもしれませんが、大多数の国民は所得の減少に直面してゆきます。
雇用者数を季節による変動を差し引いて集計すると、今年6月までの3カ月で145万人減っています。ま
た企業活動の停滞で、非正規従業員の雇い止めなどが広がったからです。
1人当たりの現金給与総額も、残業代の減少などを受けて6月に前年同月比1.7%減と低迷しています。20
年の春季労使交渉の賃上げ率は前年より縮み、今夏のボーナスも鉄鋼や鉄道などを中心に減った企業が
多くあります。
4~6月期の雇用者報酬の減少は金額にすると2.6兆円程度。仮に1年間回復しなければ10兆円規模の減額
となり、計12兆円あまりの定額給付金の効果が薄れると家計はいよいよ厳しくなります。つまり、本当
に家計が苦しくなるのは、これからなのです。
ニッセイ基礎研究所の斎藤太郎氏は「20年度の家計の可処分所得は給付金が押し上げ、21年度は反動で
落ち込む。雇用所得環境の悪化が消費の回復を遅らせる可能性が高い」と分析しています。分配が減り、
成長の妨げになる悪循環が忍び寄ってきます(注5)。
これを食い止められるかどうかは、政府と国民が真剣に貧困と格差・差別の解消に取り組むか否かなか
にかかっています。
「富める者はますます富み、貧しき者はその持て物をも奪われるべし」(新約聖書マタイ伝13章12節)
という古来の警句を、私はもう一度胸に刻んでおきます。
(注1)『朝日新聞』デジタル(2020年9月8日 5時00分)
https://www.asahi.com/articles/ASN976WVKN94ULFA02Y.html?ref=mor_mail_topix1
(注2)https://roudou-pro.com/columns/11/
(注3)『日経新聞』(2020年8月19日)
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO62781930Y0A810C2EE8000/
(注4)「しんぐるまざーず・ふぉーらむ」https://www.single-mama.com/status/
(注5)『日本経済新聞』デジタル版(2020/8/20 23:00) https://www.nikkei.com/article/DGXMZO62867620Q0A820C2EE8000/?n_cid=NMAIL007_20200821_A
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最近ではこのような古典的なアサガオは珍しくなりました。 これは最近のはやり出したアサガオなのでしょうか