こんなに国境が近くて、簡単に電車で越えられて、そこはちゃんと「外国」だなんて。
土曜日の朝、何気なしにスイス鉄道(SBB)の時刻表を見ていたら、ドイツのコンスタンツまで、直通列車が1時間に1本出ていることに気がつきました。
コンスタンツは、チューリヒから右斜め上、ボーデン湖のほとりにある、スイス・ドイツ国境の町です。チューリヒから、インターシティで1時間15分。じゃ、ちょっと行ってみるか、ということになり、親子3人で(娘は、友だちのところにお泊りだったので)急いでチューリヒ中央駅に向かいました。
よくすいていた、コンスタンツ行きのインターシティ(最近よくお目にかかる ICN という列車)に乗ったのですが、はたしてこれでドイツの町まで行けるのか、パスポートのチェックはどこでやるのかなどなど、興味津々。しかし、あっけないほどに何もないまま、列車は終点コンスタンツへ。プラットホームに降り立つと、間違いなくそこはドイツ。薄い青色の縁取りがされた白地の看板に黒い文字で Konstanz と書いてありました(スイス鉄道の駅名表示看板は、青地に白抜きの文字)。あららら、着いちゃった、ってな感じです。
駅を抜ける際にパスポートチェックか?という期待も空しく、いとも簡単に我々はコンスタンツの駅前通りに出てしまいました。こんなことでいいのでしょうか???
しかし目の前にあるのは、間違いなくドイツの町です。値段表示もちゃんとユーロで書いてある。そして、通りを行く人々は「ドイツ語」をしゃべっている。(ときどき、どうやらスイス人もいるらしいのですが、実にスイス・ドイツ語が目立ちました。あ、あいつらスイス人だ、という具合に)。
ものの値段は、ユーロで書いてあるというだけではなく、どうやら安い。1ユーロはだいたい134円、対するスイスフランは87円ですから、1.5倍くらいの違いがあるので、見た目で騙されてはいけないのですが、その換算をざっと暗算でやっても、やっぱり安い。
例によって、せっかく来たのだから、ご当地料理を試そうというわけで、大聖堂近くのレストランに入りました。妻と僕は、湖の魚を使った料理(に白ワイン。もちろんコンスタンツの地酒)、息子はお子様メニューを食べたのですが、食後のコーヒーまで入れて、スイスなら間違いなく1万円は越すだろうというところが、なんと6500円くらいで済んでしまいました。
この日は極寒で、道を歩いていると顔や耳が痛くなるほどの寒さでした。食後、我々は大聖堂(上の写真)へとまっすぐ進み、少し時間をかけて中を見学した後は、買物へ。コンスタンツは、宗教改革者ヤン・フスが宗教裁判にかけられ、火刑に処せられたことでも有名な町で、フス博物館もあるのですが、そのことも忘れて、足早に買物へと向かってしまいました。
本当に、スイスと比べた物価の安さには驚きます。ブレッツェル(茶色の、知恵の輪みたいに編んだパン。ドイツではとてもポピュラー)を買おうと入ったパン屋では、5個で1ユーロ39(186円くらい)。スイスなら、同じもの1個でこのくらいの値段です。この店は特に安かったようですが、普通のパン屋でも、1個50セント(78円くらい)というのが標準でした。スイスの半値以下です。
NORDSEE という店をご存知でしょうか。魚を使ったファストフードのチェーン店ですが(味について良い評判は聞いたことがないけど)、この店のメニューに、フィッシュ&チップスがあります(イギリスの良くも悪くも有名な食い物)。街中で見かけた NORDSEE の看板によれば、2ユーロ95(395円ってところ)でした。同じものを、チューリヒ中央駅地下街にある NORDSEE で注文すれば、8フラン(700円くらい)は下りません。ちょっと国境を越えただけで、こんなに物価が違うなんて、あっていいことなのでしょうか?
コンスタンツは、ローマ人が築いた古い町ですが、15世紀に最盛期を迎えたとのことで(上述のフスの裁判もこの頃)、街中の建物にもその面影が残っています。
この家(というか塔)、1階部分は15世紀、上階は16世紀に造られたそうで、ファサード(正面)部分に絵画の装飾を施すのは、この時期に由来するものだとのこと。こんな建物に今も人が住んでいるわけで、宗教改革時代の「過去」と現在とが同居している、ある意味不思議な感覚は、ヨーロッパならではのものです。キリスト教史に対する意識がヨーロッパ人と我々日本人とでは全然違うのも当然です。
物価の安さに驚きながら、旧市街のデパート Karstadt で食料品(ともちろんワイン。ただし自分たちがスイスで飲む分だけ)を買い込み、夕方の列車でチューリヒに戻ってきました。その夜はもちろん、コンスタンツで買ったブレッツェルにハム、チーズを食べながら、コンスタンツの赤ワインをいただきました。
帰りの列車がコンスタンツを出発すると、数分ですぐにスイスの町です。そこにはミグロが。しかし、ちょっとだけ足を延ばせばこんなに安く買物ができるような町で、わざわざミグロに行くスイス人がいるのでしょうか……いるのでしょうね。スイス人なら。
ちょっとそこまで出かけたら、そこはドイツ。でもパスポートのチェックもなし。国境というものの恣意性を感じる経験でした。でもたぶん、スイスとドイツの国境だから、こんないい加減なこともありなのでしょうけれど。
土曜日の朝、何気なしにスイス鉄道(SBB)の時刻表を見ていたら、ドイツのコンスタンツまで、直通列車が1時間に1本出ていることに気がつきました。
コンスタンツは、チューリヒから右斜め上、ボーデン湖のほとりにある、スイス・ドイツ国境の町です。チューリヒから、インターシティで1時間15分。じゃ、ちょっと行ってみるか、ということになり、親子3人で(娘は、友だちのところにお泊りだったので)急いでチューリヒ中央駅に向かいました。
よくすいていた、コンスタンツ行きのインターシティ(最近よくお目にかかる ICN という列車)に乗ったのですが、はたしてこれでドイツの町まで行けるのか、パスポートのチェックはどこでやるのかなどなど、興味津々。しかし、あっけないほどに何もないまま、列車は終点コンスタンツへ。プラットホームに降り立つと、間違いなくそこはドイツ。薄い青色の縁取りがされた白地の看板に黒い文字で Konstanz と書いてありました(スイス鉄道の駅名表示看板は、青地に白抜きの文字)。あららら、着いちゃった、ってな感じです。
駅を抜ける際にパスポートチェックか?という期待も空しく、いとも簡単に我々はコンスタンツの駅前通りに出てしまいました。こんなことでいいのでしょうか???
しかし目の前にあるのは、間違いなくドイツの町です。値段表示もちゃんとユーロで書いてある。そして、通りを行く人々は「ドイツ語」をしゃべっている。(ときどき、どうやらスイス人もいるらしいのですが、実にスイス・ドイツ語が目立ちました。あ、あいつらスイス人だ、という具合に)。
ものの値段は、ユーロで書いてあるというだけではなく、どうやら安い。1ユーロはだいたい134円、対するスイスフランは87円ですから、1.5倍くらいの違いがあるので、見た目で騙されてはいけないのですが、その換算をざっと暗算でやっても、やっぱり安い。
例によって、せっかく来たのだから、ご当地料理を試そうというわけで、大聖堂近くのレストランに入りました。妻と僕は、湖の魚を使った料理(に白ワイン。もちろんコンスタンツの地酒)、息子はお子様メニューを食べたのですが、食後のコーヒーまで入れて、スイスなら間違いなく1万円は越すだろうというところが、なんと6500円くらいで済んでしまいました。
この日は極寒で、道を歩いていると顔や耳が痛くなるほどの寒さでした。食後、我々は大聖堂(上の写真)へとまっすぐ進み、少し時間をかけて中を見学した後は、買物へ。コンスタンツは、宗教改革者ヤン・フスが宗教裁判にかけられ、火刑に処せられたことでも有名な町で、フス博物館もあるのですが、そのことも忘れて、足早に買物へと向かってしまいました。
本当に、スイスと比べた物価の安さには驚きます。ブレッツェル(茶色の、知恵の輪みたいに編んだパン。ドイツではとてもポピュラー)を買おうと入ったパン屋では、5個で1ユーロ39(186円くらい)。スイスなら、同じもの1個でこのくらいの値段です。この店は特に安かったようですが、普通のパン屋でも、1個50セント(78円くらい)というのが標準でした。スイスの半値以下です。
NORDSEE という店をご存知でしょうか。魚を使ったファストフードのチェーン店ですが(味について良い評判は聞いたことがないけど)、この店のメニューに、フィッシュ&チップスがあります(イギリスの良くも悪くも有名な食い物)。街中で見かけた NORDSEE の看板によれば、2ユーロ95(395円ってところ)でした。同じものを、チューリヒ中央駅地下街にある NORDSEE で注文すれば、8フラン(700円くらい)は下りません。ちょっと国境を越えただけで、こんなに物価が違うなんて、あっていいことなのでしょうか?
コンスタンツは、ローマ人が築いた古い町ですが、15世紀に最盛期を迎えたとのことで(上述のフスの裁判もこの頃)、街中の建物にもその面影が残っています。
この家(というか塔)、1階部分は15世紀、上階は16世紀に造られたそうで、ファサード(正面)部分に絵画の装飾を施すのは、この時期に由来するものだとのこと。こんな建物に今も人が住んでいるわけで、宗教改革時代の「過去」と現在とが同居している、ある意味不思議な感覚は、ヨーロッパならではのものです。キリスト教史に対する意識がヨーロッパ人と我々日本人とでは全然違うのも当然です。
物価の安さに驚きながら、旧市街のデパート Karstadt で食料品(ともちろんワイン。ただし自分たちがスイスで飲む分だけ)を買い込み、夕方の列車でチューリヒに戻ってきました。その夜はもちろん、コンスタンツで買ったブレッツェルにハム、チーズを食べながら、コンスタンツの赤ワインをいただきました。
帰りの列車がコンスタンツを出発すると、数分ですぐにスイスの町です。そこにはミグロが。しかし、ちょっとだけ足を延ばせばこんなに安く買物ができるような町で、わざわざミグロに行くスイス人がいるのでしょうか……いるのでしょうね。スイス人なら。
ちょっとそこまで出かけたら、そこはドイツ。でもパスポートのチェックもなし。国境というものの恣意性を感じる経験でした。でもたぶん、スイスとドイツの国境だから、こんないい加減なこともありなのでしょうけれど。