チューリヒ、そして広島

スイス・チューリヒに住んで(た時)の雑感と帰国後のスイス関連話題。2007年4月からは広島移住。タイトルも変えました。

研究動向を知る雑誌

2016年09月05日 20時34分05秒 | Weblog
新約聖書研究の分野もご多分に漏れず、毎年新しい研究書や論文が次々と現れます。それを丁寧に追っていくのは大変。

そこで、研究動向や新しい二次文献を紹介してくれる雑誌のお世話にどうしてもならざるを得ません。

上の写真はその代表格、New Testament Abstracts。米国Boston College (Massachusetts), School of Theology and Ministry が発行しています。年3回発行で、新約関係の各分野に関する新しい文献を、論文の場合はその要約ともども教えてくれるという、非常にありがたい雑誌です。この雑誌には学生の頃からお世話になってきていますが、毎年の第3巻には索引もついていて、これがまた便利。しかし、責任編集者である Christopher R. Matthews の苦労は想像するに余りあります。1年で56ドル(5800円弱)ですから、個人でも十分購読できる値段です。



こちらは、スイス・ローザンヌ大学の l'Institut romand des sciences bibliques (IRSB) が発行している Bulletin de Bibliographie biblique。以前は年数回に分けて発行していましたが、現在では1年に1冊、700頁くらいの分厚い冊子を送ってきます。旧新約、さらに古代教会、教父あたりまでも含んだ広い分野にわたり、新しい文献を紹介してくれる、これも非常に便利な雑誌です。一部の文献には要約がついていますが、なぜか要約はフランス語以外のものも。値段は、確か1年60スイスフラン(6300円くらい)だったと思います。分厚すぎて、とても全体を通読はできませんが、自分が関わっている分野について、フランス語圏の文献も含めて広く教えてくれます。



知っておきたいのは、文献情報のみならず、研究史の動向です。種々のテーマについて、どのような研究が近年展開されているかを知るのに便利なのが、この Currents in Biblical Research。最近まで、大学図書館を通して購入していましたが、機関購入だとべらぼうに値段が高いので、今年から個人で買うことにしました。1年40ポンド(6800円くらい)。一番最近の号には、「ユダヤ教フェミニスト聖書学の動向」といった論文が掲載されています。

聖書学だけでなく、神学全般を扱った研究情報誌なら、ドイツ・テュービンゲンの Mohr Siebeck 社が出している Theologische Rundschau があります。



これも以前は個人で買っていましたが、聖書学の記事が占める割合が低いので、広島に来るのを機に購入を止めました。個人購入でも94ユーロ(1万1000円弱)するので、ちょっと高い気はします(学生は49ユーロ。機関購入だと224ユーロもします)。



新しい文献についての書評誌では、Theologische Literaturzeitung が役に立ちます。1年10回発行。主としてドイツ語圏の新刊を書評と共に紹介してくれます。ただ1年で192ユーロ(約2万2000円)もするのがちょっと財布に痛い。これも広島移住の時に購読を止めました。しかし便利なことは確かです。書評以外に、研究の動向を紹介した論文も時々載ります。かつて「東アジアの神学」という論文が掲載され、そこで「神の痛みの神学」や「荊冠の神学」が紹介されていました。

他にも類書はあることでしょう。研究の流れに置いて行かれないために支払う代償は決して安くありません。