チューリヒ、そして広島

スイス・チューリヒに住んで(た時)の雑感と帰国後のスイス関連話題。2007年4月からは広島移住。タイトルも変えました。

ヘルシンキ教会見学(前)

2008年08月30日 10時27分11秒 | Weblog
        (ヘルシンキの街を走るトラム)

ルンドからの帰路は、まず国境を超えてデンマークのコペンハーゲン空港まで列車で約45分。そこからフィンランドのヘルシンキへ飛び、飛行機を乗り換えて大阪まで、という旅順です。その途中、ヘルシンキで乗換えの待ち時間が長かったので、バスでヘルシンキの街に出てみました。教会見学が主たる目的です。が、その他にも色々と面白いものが。2回に分けて紹介したいと思います。

まずはヘルシンキ中央駅前通りの風景。


駅横にある中央郵便局の裏手に大きな銅像がありました。

カール・グスタフ・エミール・マンネルヘイム(1867~1951、フィンランドの陸軍元帥、軍最高司令官、1944年から46年までは大統領)。第二次世界大戦という一番危機的な状況で大統領を務めた、フィンライドの歴史的人物です。


ヘルシンキ中央駅。空港と駅を結ぶフィンエアーのシャトルバスは、中央駅のすぐ横にあるロータリー発着です。


駅のすぐ東隣にある駅前広場に面して立っているのが、国立劇場。


広場の南側にはアテネウム美術館。フィンランド最大規模だそうです。1750年代から1960年代までのフィンランド美術を展示しているとのこと(中に入っていないので、孫引き)。


そんな立派な美術館のすぐ裏の路地に野菜や果物を売る露店が出ているというあたりが、いかにもヨーロッパらしい感じです。

最初のお目当ては、テンペリアウキオ教会(Temppeliaukionkirkko)。駅から西に10分少し歩いたところにあるこのルター派教会は、大変変わった風貌をしています。



入口に近づくと


岩を上からくり抜いたような形になっており、その上に丸天井を載せ、天上と壁面(=岩)の間を180枚のガラスでつないで採光している、実に風変わりな教会です。1969年の完成。

中に入ると、



剥き出しの岩が壁面になっています。

礼拝堂はこういった雰囲気。




パイプオルガンは礼拝堂左側に設置されていました。


音響効果を狙って、このような造りになっているそうですが、聞こえてくるのは観光客のお喋りの声ばかり。「お静かに」という注意書きなど目に入らないようです。

驚いたのは、日本人観光客が次から次へとやってくることで、何台ものバスが教会前に止まり、そこから日本人(一部中国人もいましたが)がまとまって吐き出されてくるのです。スイスでは、日本人観光客よりも中国人観光客の方が多くなったと(5年前にチューリヒで)感じましたが、北欧では日本人観光客、まだまだ健在のようです。かくいう自分も観光客ではありましたが。

僕が行く少し前に、結婚式が行われていたようで、教会前に花嫁さんや親戚・友人がまだ集まっていました。が、おかまいなしに観光客はどんどん礼拝堂に入っていきます。僕もその中に紛れて行きました。


内部に設置されていた、教会の表札(?)ですが、フィンランド語とスウェーデン語で記されています。かつての、長く続いたスウェーデン支配による影響でしょう。

通りの名前を示す標識も、2言語で記されていました。


次回は、大聖堂へ行ってみます。(続)


ルンド滞在記(6)

2008年08月20日 17時46分38秒 | Weblog
今回の国際新約聖書学会(SNTS)大会に日本から参加していたのは自分一人でした。だからというわけではありませんが、アジアからの出席者にやはりまず目がいきます。

初日に会場の前で出会い、仲良くなったのが、Eugene Eung-Chun Park氏。彼は韓国の生まれですが、その後アメリカに渡り、イェール大学で修士号、シカゴ大学で博士号を取っています。マタイ福音書の宣教論を扱った博士論文は、僕のものと同じくWUNT 2.Reihe から出版されています (The Mission Discourse in Matthe's Interpretation, WUNT 2/81, Tübingen: Mohr Siebeck, 1995)。現在は、サンフランシスコ神学院の新約学教授をしています。彼とは、同じホテルだったこともあり、大会期間中しばしば行動を共にしました。

昼食会場で知り合いになったのが、香港の崇基學院神學院(香港中文大学=The Chinese University of Hong Kong の一部)で新約学教授をしている Eric Kun Chun Wong氏。彼は、イエスの「非ラディカル化」(De-radicalization) をめぐる諸論考(雑誌 New Testament Studies や Novum Testamentum で公表)の他、新約聖書のギリシャ語/中国語辞典の編纂にも携わっているそうです。

二人とも、それぞれに参加しているセミナーで研究発表を担当していました。同じアジア(Park氏はアメリカの教授ですが)の同年代の仲間が積極的に学会に貢献しているのを見ると、自分も遅れをとっていてはいけないという気持ちにさせられます。「お客」でいてはダメで、何か貢献するものを持たねばならない、そういう場であるということが(学会だから当たり前なのですが)今さらながら身にしみてわかる気持ちがしました。

Park氏からは、機会があればサンフランシスコにお出で、といってもらいましたので、いつか実現したいと思います。その前にもっと英語を磨かねばなりませんが。

(写真右が Eugene Park氏。顔が陰になっていて見えにくいですが、真ん中は、ルンドの Birger Gerhardsson教授。イエス伝承を扱った著作 Memory and Manuscript などで有名な学者です。僕もこの本は持っています。これがあのイェルハルドソンか!とミーハー的に感動しました。もう隠退なさっているそうですが、本当に気の良いおじいさん、という感じでした。)

ルンド滞在記(5)

2008年08月17日 10時30分10秒 | Weblog
日本だと、学会の会場に本屋さんが出店をしているということがよくあります。国際新約聖書学会の会場でもそうでした。ただし出店していたのは本屋さんではなく、出版社。

会場には有名な出版社のブースが並んでいます。ドイツはテュービンゲンのMohr Siebeckが早速目についたので行ってみました。僕の博士論文もここから出してもらっています。印刷用の下版を自分でパソコンを使って作る、初版印税はなしという条件でした。10年以上も前の話、世に出たばかりの「ウィンドウズ95」(懐かしい!)を使って、四苦八苦しながら作ったことが思い出されます。

他にも、ベルリンのWalter de Gruyter(デグロイターと読むらしい。バウアーのギリシャ語辞典やネストレ版のコンコルダンスを出していることでも有名)や、ゲッティンゲンのVandenhoeck & Ruprecht(マイヤー註解の出版社、と言わなくてもあまりにも有名。追記(8/17):佐竹明先生の黙示録註解、いよいよ9月発売との予告が出ています)、ノイキルヒェン・フリューン(Neukirchen-Vluyn)のNeukirchener(EKK註解の出版社)、オランダはライデンのBrill(雑誌 Novum Testamentum の他、Der neue Pauly の英語版や Encyclopedia of Judaism などの事典類も多い)、イギリスからはCambridge University Press(国際新約聖書学会編集の雑誌 New Testament Studies はここから出ています)なども来ていました。

どの出版社も、学会特別価格ということで、定価の2割引から半額で本を販売しています。日本では(再販価格維持制度のせいでしょうが)見られない光景です。思わず手が出そうになる本がいくつもありましたが、予算も限られている上、日本まで持ち帰る大変さを考えたら、二の足を踏まざるを得ませんでした(本の重さはバカに出来ません)。

それでも持ち帰ってきたのが、上の写真の2冊。というのも、右の The Ancient Synagogue (CB.NTS 39, 2003) は何と小さなテーブルに山積みされており、「ご自由にお持ち下さい」との貼り紙つき。多くの人が半信半疑で見つめては、おそるおそる持ち帰っています。どうやら編集者(Birger Olsson & Magnus Zetterholm)の好意によるものだったようです。値段を調べると、なんと99ドル50(ペーパーバック版)。570ページもある分厚い本でしたが、頂戴しない手はありません。

左の Tommy Wasserman: The Epistle of Jude: Its Text and Transmission (CB.NTS 43, 2006) は、会場で「この台の本すべて10ユーロ!」と書かれた机の上にあった1冊です。なんか投げ売りっぽいな、と思いつつ、ユダの手紙(「ユダの福音書」ではない!)についていずれ詳しく調べたいと計画していることもあり、喜んで買いました。ネットで調べてみると、古書で79ドルの値がついていましたから、これもかなりのお買い得です。

「なんか投げ売りっぽい」という印象が当たっていたことを知ったのは、この記事を書くためにネット検索をしていたときです。 上の2冊が入っている Coniectanea Biblica (CB) という叢書を出しているのは、スウェーデンの Almqvist & Wiksell International という出版社ですが、どうやら2008年1月に営業を終了したらしいのです。それで、この本も、また先ほどの The Ancient Synagogue も、著者が在庫を抱えることになったのではないかと思われます。

The Epistle of Jude は著者である Tommy Wasserman 氏の学位論文ですが、この人、なんと学会の会場にいました。地元スウェーデンでの開催ということで、スタッフの一員として運営を手伝っていたのです。支払いを済ませた僕がこの本を手にしているのを見ると、「あ、それはオレの本だ! 買ってくれたの? わぁ嬉しいなぁ」と、いきなり背後から迫ってきたから、もうびっくり。サインまでしてくれました。



ちなみに、北欧の神学部では学位論文はほとんどの場合、英語で書くそうです。以前はドイツ語のものもあったように思いますが、最近はどうなのでしょう(尋ね損ないました)。でも、聖書学の分野でも、確実に「英語化」は進んでいると、今回の学会でも感じました。



ルンド滞在記(4)

2008年08月15日 15時05分35秒 | Weblog
(ルンドの街にもちゃんとありました。ケバップの店。大聖堂のすぐ近く、KEBAB HUSET と大書されていました。たぶん Kebab House の意味?)

今回は、ルンドの街の風景を並べてみます。

まずは、ホテルから会場へと向かう道。





途中で見かけた家。屋根が急なのは、冬場の雪対策なのでしょう。

広場には市が立っています。






近くに寄ってみると


あのマクドナルドも街の雰囲気に溶け込んでいます。


街中の風景。


バスセンター(ってのは広島風な呼び方ですが)




バス乗り場の向いには、日本食レストラン。その名も「タベモノ」。

前菜は「味噌汁」「枝豆」(エダナメって書いてあった)「胡麻ワカメサラダ」。その他、「焼鳥」「シャケテリヤキ」「海老天ぷら」などなど。お寿司メニューもあります。

バス車内。

このバスでホテルと会場を往復しました。プリペイドカードを使えば片道210円くらい。阪急バスとそう変わらない運賃です。物価が高いスウェーデンにしては、バス賃は安い。

最後は、ルンド大学近くのアパート。後ろに見えているのはアルヘルゴナ教会(Allhelgona Kyrkan)。いかにもヨーロッパらしい、ゆったりした感じです。


ルンド滞在記(3)

2008年08月13日 13時38分53秒 | Weblog
(ルンド大学神学部の建物。セミナーや研究発表には教室も使われました。)

学会期間中、昼と夜の食事は参加者が一同に会して行われます。250人にも及ぶ参加者を収容できる建物などそう多くはないはずですが。

昼食に使われたのは、Tegnér Restaurant と呼ばれる食堂。ですが、食堂にはとても見えない、この建物。


初日に行われた、学長によるレセプションと総会の間の夕食もこの建物で食べました。また、一日のプログラムが終った後には、1階にあるバーが特別営業し、学会員の懇親のひとときを提供していました。学会からはドリンク券まで配布されるサービスぶり。

3日目の夜には、Grand Hotel の2階大広間を借り切って、ルンドの教会監督主催によるディナー。


大勢が一箇所で、食べて飲んで喋るので、それはもう、ウルサいことこの上ありません。向かいの席にいる人と大声で話さないといけないほどです。おまけに窓が開かなかったので、熱気ムンムン。上着などとても着ていられる状態ではありませんでした。

最終日には、Closing Dinner が先ほどの Tegnér Restaurant 2階の大広間で行われました。



こちらも、会場はものすごい賑やかさ。最終日ということもあって、大盛り上がりでした。

SNTS(国際新約聖書学会)の大会は、学術的な面と、このような社交的な面が両方強いわけですが、準備をする側は本当に大変です。来年のホストとなるウィーン大学からは、下見のために大学院生や助手が数名派遣されてきていました。

これを日本で開催することは、果たして可能なのでしょうか。そのような要望の声もあるそうですが。

ルンド滞在記(2)

2008年08月07日 17時35分01秒 | Weblog
ルンドを代表する建物といえばやはり大聖堂。1145年に建てられたものだそうです。



堂内の最前部はこのようになっています。
学会期間中、毎朝8時から大聖堂で行われた小礼拝には、この場所が使われました。


一つ前の写真の前方上部に描かれているのがこれです。


堂内には、大聖堂のミニチュアが飾られていました。

ところで、ホテルから大聖堂に向かう途中の道で、別の教会を発見。



近くに寄って見ると、



聖トマス教会。カトリックです。
北欧といえばプロテスタント、それもルター派と相場が決まっていそうな感じがしますが、やっぱりカトリックの教会もちゃんと活動しているわけです。大聖堂とは全然違う、木をうまく使った暖かい感じの建物です。

これが内部。


プロテスタントの方が伝統的教会堂で、カトリックがモダンな礼拝堂というのも、面白いものです。大聖堂が出来たときはもちろん、まだプロテスタントなど存在しなかったわけですが。

ルンド滞在記(1)

2008年08月05日 00時06分33秒 | Weblog
7月の最終週にスウェーデンのルンド大学で開かれた、国際新約聖書学会(Studiorum Novi Testamenti Societas, SNTS)の第63回大会に参加してきました。SNTSの大会は初体験です。

ルンドまでは、大阪からまずヘルシンキ(フィンランド)まで飛び、そこで乗り換えて、コペンハーゲン(デンマーク)までのフライト。コペンハーゲンから列車に乗り、国境を超えて約45分で到着です。つまり、フィンランド、デンマーク、そしてスウェーデンと3カ国に入ったことになります。これがおそらく一番速いルートでしょう。それでも、広島を朝の8時に出発し、ルンドに到着したのは(途中いろいろまごついたせいもありますが)夜の11時。ホテルの部屋に入った時は、もうくたくたでした。

ルンド大学は、大聖堂の中に設立された神学校に遡る(1438年とのこと)、スウェーデン最古の大学だそうで、約4万人の学生を擁しているそうです。


これがその大聖堂。

大会のメイン会場は Stadshallen (City Hall)。

写真ではよく見えませんが、入口上部には、 「SNTS第63回大会へようこそ!」という電光掲示が期間中ずっと出されていました。

会場の内部はこんな具合。これが、総会や主発表(Main Paper)がなされたメインホールです。


初日の夕方は、学長(Rector Magnificus)によるレセプションが、University Building でまず行われました。


これが University Building。立派な建物です。内部はまるで教会堂のようですらありました。ちょっと写真は撮れなかったのですが。

レセプションの後は、建物内でアペリティフ、そして大学の食堂に移って夕食。さらに、Stadshallen に戻って総会1が行われました。その後、ワインやビールを飲みながら語り合う時間が設定されていましたが、初日はもう疲れ切っていたので、失礼してホテルに戻りました。雰囲気に慣れるだけで疲れた、という感じです。