チューリヒ、そして広島

スイス・チューリヒに住んで(た時)の雑感と帰国後のスイス関連話題。2007年4月からは広島移住。タイトルも変えました。

古書収集癖:使徒教父文書(F. X. Funk 編、1901/13年)

2019年08月24日 11時38分22秒 | Weblog
仕事柄ではあるが、初期キリスト教研究に関する古書が増えてくる。今回入手したのは、Franz Xaver von Funk (1840-1907) 編の『使徒教父文書』(Patres Apostolici) 全2巻。第1巻は1901年、Franz Diekamp (1864-1943) が仕事を受け継いで完成させた第2巻は1913年刊。

Funk も Diekamp もローマ・カトリックの神学者。Funk はテュービンゲンで教父学を、Diekamp はミュンスターで教父学に加えて教理史、教義学も講じた。

使徒教父文書は1世紀末から3世紀にかけて書かれた文書の集成で、新約正典の一部と執筆年代が重なっており、新約聖書を理解する上でも重要な文書群。邦訳は、荒井献編『使徒教父文書』(講談社学術文庫)がある。ギリシャ語本文は、A. Lindemann/ H. Paulsen 編(ドイツ語との対訳)や、M. Holmes 編の英語対訳版、またLoeb Classical Library にも英語との対訳版が収められている。

今回買ったうちの第1巻は、Lindemann/ Paulsen 版の元になっている Funk/ Bihlmeyer 版 (1924) のその元になっている古い版。実はネットでも参照可能なので、ほとんど収集癖に近い。買った理由は一応あって、Diekamp 編の第2巻に、「クレメンスの殉教」や偽イグナティオス書簡集といった、通常の使徒教父文書には収められていない文書が入っているから。

問題は、解説や本文の対訳がラテン語で付されていること。こればかりは、必要な時に必要な箇所をぼちぼち読んでいくしかない。

マリア・ゴレッティ

2019年08月14日 17時24分23秒 | Weblog
ドイツ・フライブルクの古本屋から取り寄せた古い研究書(1936年刊)を開いて見たら、中からこれまた古い絵葉書が。

SANCTA MARIA GORETTI という名の少女、11歳にして父親の違う兄若い男に殺されたが、その後カトリック教会から殉教者と認められて列聖されたという。

絵葉書の裏面には VOLKSKUNST SANCT CLARA BASEL というハンコが押してある。どうやらスイス・バーゼル(フライブルクと近い)の聖クララ教会(カトリック)で売られていた作品らしい。絵には作者の名前(Casimira Dabrowska か)と制作年(1952年)が記入されている。

この本を買わなかったら、マリア・ゴレッティという聖人を知ることもなかっただろう。古本にはこういう出会いがある。

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ちなみに、本の著者 Anton Vögtle は、フライブルク大学神学部(カトリック)の教授で、有名な新約学者だった (1910-96)。同大学の学長も務めている。ドイツ語版Wikipediaは、「第二次大戦後のカトリック聖書学は、Anton Vögtle の業績なしには考えられなかったであろう」とさえ述べている。



*2022年4月3日追記:コメント欄で誤記のご指摘をいただきましたので、遅まきながら一部訂正を入れました。