チューリヒ、そして広島

スイス・チューリヒに住んで(た時)の雑感と帰国後のスイス関連話題。2007年4月からは広島移住。タイトルも変えました。

マタイ、パウロ、その他:アジア的観点から見た新約諸主題

2019年10月29日 14時56分37秒 | Weblog
昨年10月に台湾で開催された、国際新約聖書学会アジア太平洋連絡委員会 (APLC) の地域大会、私も参加してきましたが、そこで発表された研究が、1冊の本にまとめられ、このたびインスブルック大学出版会からデジタルで刊行されました。

William Loader, Boris Repschinski, Eric Wong (eds.),
Matthew, Paul, and Others: Asian Perspectives on New Testament Themes
(Conference Series; Innsbruck: Innsbruck University Press, 2019)

デジタル出版で、無料ダウンロードしていただけます。ダウンロードはこちらから。

第一ペトロ書簡とパウロ書簡の関係について発表した拙稿も収録されています。頑張って英語で書きましたが、いずれどこかで邦訳版も公開したいと思っています。

お薦めの1冊:『イエスから初期キリスト教へ』(青野太潮先生献呈論文集)

2019年10月04日 09時14分19秒 | Weblog
ドイツ語圏の学界には、Festschrift(記念論文集)という慣行があります。ベテランの研究者が節目の年齢になったり、退職したりする際に、弟子や研究仲間が感謝やお祝いのしるしとして記念論文集を発行するのです。その習慣は日本にも持ち込まれており、私自身も、関西学院大学でご指導を賜った恩師山内一郎先生への献呈論文集を編集したことがありました(『キリスト教の教師:聖書と現場から』新教出版社、2008年)。

今回、日本新約学会が前会長である青野太潮先生(西南学院大学名誉教授)に、長年にわたる学界へのご貢献に対する感謝を込めて、献呈論文集を出しました。学会員による計18本の論文が収録されています。青野先生のご専門はとくにパウロ研究で、数多くの専門書および論文がある他、『パウロ』(岩波新書、2016年)では、そのエッセンスを一般向けにまとめておられますが、この献呈論文集では、イエスおよび福音書関係のものが10本と半数以上を占めています。パウロ関係は6本、その他2本です(ルター聖書の初版に関する拙稿も最後に収録していただきました)。

内容目次は写真の通り。





全体の口火を切る、大貫隆「イエスと初期ユダヤ教神秘主義」は、大貫氏(現学会長)の著書『イエスという経験』(岩波書店、2003年)で展開された、イエスが神の国について抱いていたイメージ・ネットワークという主張を、復活の問題をめぐってさらに展開しています。また、伊藤明生「『慰めの手紙』としてのフィリピ書」では、NTJ新約聖書注解叢書でフィリピ書を担当することになった伊藤氏(東京基督教大学教授)が、この手紙を全体としてどう捉えているかが示されています。他にも興味をひかれる論考が数多く収録されているこの献呈論文集、一読をお勧めします。

(「広島聖文舎便り」2019年10月号掲載。ただし写真は除く)