チューリヒ、そして広島

スイス・チューリヒに住んで(た時)の雑感と帰国後のスイス関連話題。2007年4月からは広島移住。タイトルも変えました。

『パウロ小書簡の神学』(叢書新約聖書神学9)

2016年05月06日 17時16分11秒 | Weblog
『パウロ小書簡の神学』(叢書 新約聖書神学9)
(K. P. ドンフリード・I. H. マーシャル著、山内一郎・辻 学訳、新教出版社、2016年4月刊、4000円+税)

すみません、今回も自著宣伝です。もっとも今回は翻訳書ですが。

イギリスのケンブリッジ大学出版が出している「叢書 新約聖書神学」は、いわゆる「新約聖書神学」が新約聖書全体の神学思想をまとめて述べる(ので、当然大部なものになります。最近では、F. ハーン『新約聖書神学』Ⅰ上・下、Ⅱ上・下[日本キリスト教団出版局]。Ⅱ下のみ未刊)のとは違い、新約聖書を構成する文書ごとに、その成立事情や思想内容をていねいに取り扱うシリーズです。日本では新教出版社が翻訳出版を引き受け、順次刊行してきました。私もすでに、『公同書簡の神学』を翻訳しています(2003年)。

この『パウロ小書簡の神学』は、監修者でもある山内一郎先生(関西学院大学名誉教授)が訳業を進めていましたが、途中から私が手伝う形になりました。「小書簡」に含まれているのは第一・第二テサロニケ書、フィリピ書、フィレモン書の4通です(第二テサロニケ書は擬似パウロ書簡ですが、ここに入っています)。それぞれの書簡について、成立背景、神学思想、新約聖書全体との関係、そして今日の我々にとっての意義を、聖書本文を分析しながら解説してくれています。伝統的な歴史的・批判的釈義の方法をとる一方、思想的な分析はやや保守的なところもあり、その意味では「安心」して読める内容になっています。礼拝説教の準備に、また教会での聖書研究会にも便利に使っていただけると思います。

この叢書、残るは「ローマ書」、「Ⅰコリント書」、「コロサイ、エフェソ書」の3冊のみ。概論書では簡単すぎるが、注解書を読むほどでもないという時に便利なこの叢書、全巻刊行が待たれます。

(「広島聖文舎便り」2016年5月号に掲載された拙文です。)