チューリヒ、そして広島

スイス・チューリヒに住んで(た時)の雑感と帰国後のスイス関連話題。2007年4月からは広島移住。タイトルも変えました。

白市という駅

2014年04月28日 12時52分39秒 | Weblog
広島空港は、広島市内からかなり離れていて、アクセスが良くありません。JR広島駅から空港へ向かうには、駅北側のロータリーから1時間に3本程度出ているリムジンバス(所要時間約45分、1340円)を利用することが多いのですが、もう一つの手段は、JRで白市(しらいち)という駅まで行き、そこから空港バスに乗る方法です。広島駅から白市駅まではJR各駅停車で41分(760円)、白市駅から空港までは約15分(390円)。リムジンバスよりも時間はかかりますが、道路の混雑に影響されにくいし(とくに連休の時など、山陽自動車道が渋滞することもあり得ます)、値段も若干安いので、こちらを利用する人も少なくありません。広島大学の最寄り駅は西条という、白市の二つ手前の駅なので、大学から東京に出る場合など、広島駅から新幹線に乗るよりも、白市経由で広島空港から行く方が断然速いということになります。

ただ問題は、バスの本数が少ないということで、飛行機の便に合わせて設定してはあるものの(そもそも広島空港から出る飛行機の数がそう多くない)、やはり不便は否めません。まして、JRが遅れでもしたら(これが意外によくある)、バスに乗り損ねて、予定になかったタクシー代がかかる、なんてことも起こり得ます。

先日、そういう(ことになりかかった)ケースに遭遇しました。大学での授業を済ませて東京に出ようと、JRで白市まで行き、バスに乗り込んだのです。JR遅延によるバス乗り遅れのリスクを回避するため、予め1本早いJRで行きました。上の写真は白市駅です。実際に駅に降り立ってみると、本当にこんなところから空港行きのバスが出るのかと思うほど、のどかな光景です。

駅に停まっているバスの中から進行方向を覗いてみると、こんな感じ。まさしく田舎の風景です。遠足に行くバスにでも乗ったような気分になります。



事件(?)はバスに乗り込んだ後に起こりました。バス出発の数分前に白市駅に着くはずのJR各停が、遅れているというのです。

その時バスに乗って発車を待っていたのは、そんなこともあろうかと1本早いJRで来ていた自分一人だけ。すると運転手さんが私の方へやって来て、「何時の飛行機ですか?」と尋ねてきました。つまり、遅れているJRに、このバスを使う予定の乗客がいるだろうから、列車の到着を待ってからバスを出していいか、というわけです。このバスを逃すと、次の便まで30分待たないといけませんから、飛行機に乗り損なう危険が出て来ます。

予約していた飛行機の出発時間までは余裕がありましたから、列車を待ってから発車することに同意しました。やがて、バス発車の定刻を数分過ぎてから白市駅に到着したJRからは、運転手さんの予想通り、慌てたビジネスマンが次々とこのバスに駆け込んできたのです。

バスが少ない白市駅ならではの出来事でしょうが、待ってあげましょうという、運転手さんのその気持ちがのんびりしていて良かったのか、なんとなく楽しい気分になりました。広島空港も乗客が少ないので、のんびりした雰囲気です。その後降り立った羽田空港の慌ただしさとは全く対照的な光景でした。

スイスへの道はラーメンから

2014年04月27日 12時10分26秒 | Weblog
仕事で東京に出たので、銀座のラーメン屋さんで夕食。ラーメンとスイスなんてあまり関係なさそうですが、このラーメン屋さんは、スイス留学の思い出と深く結びついています。

銀座の教文館近くに、ABCラーメンというお店があります。1977年創業というから、結構な老舗です。お店が地下にあって、通りから階段を降りていくので、ややわかりにくいのですが。

時は1990年、大学院後期課程に在籍しながら牧師仕事をしていた時代です。スイス政府奨学金の試験を受けるため、上京しました。試験の会場は上智大学。前日に東京入りした私は、中学時代からの友人(今はフェリス女学院大学で教授をしています)の下宿に泊めてもらい、翌日会場へと向かったのでした。

ヨーロッパに留学したいと思ってはいましたが、なかなか行く先も資金も目処が立たなかった自分が、スイス留学の奨学金情報を得られたのは、牧師研修会の講師として来神しておられた荒井献先生のおかげです。前の年に私のところの院生もその奨学金でスイスに行きましたと、親切に教えて下さったのです(その「私のところの院生」にもどれだけスイスで助けられたことか)。荒井先生のご好意には今でも心から感謝しています。

かくして試験当日となり、午前中は筆記試験。午後から面接となったのですが、自分の順番は午後3時くらいとのこと(だったと思います)。時間が空いたので、銀座に出て教文館洋書部に行く気になったのです。当時は、英語やドイツ語の神学書でいっぱいの棚を見る機会などそうそうありませんでしたから。そして、銀座についてまず腹ごしらえということで入ったのが、このABCラーメン。何を食べたかは最早定かでないのですが、なんか味噌ラーメンだったような気が。将来への希望と試験の不安が入り混じった一杯でした。

店を出て、教文館で洋書をさんざん見た後に、上智大学に戻って面接を受け(ろくに喋れなかったことだけはよく覚えています)、神戸に戻ったのですが、まぁあの成績なら合格はないだろうと覚悟していただけに、合格通知が来たときは、本当に驚きました。そして1991年7月、まずはドイツ語講習を受けるため、ベルンの隣にあるフリブールの町へと旅立つことになったのです。

というわけで、奨学金試験の思い出と深く結びついているのがこのABCラーメン。銀座には美味いものがいくらでもあるのでしょうが、ここでラーメンを食べると、初心に帰れる気がします。今回食べたのは麻醤(まーじゃん)麺。醤油とゴマの味がするスープに太いちぢれ麺がうまく絡んで、なんとも美味しい一品ですが、当時はまだなかったような。

あれから25年経ちますが、今でも懐かしい思い出を呼び起こしてくれるラーメン屋さんです。

Scholars come, scholars go.

2014年04月16日 22時14分55秒 | Weblog
国際新約聖書学会(Studiorum Novi Testamenti Societas, SNTS)が Cambridge University Press と共同で発行している学術雑誌、New Testament Studies の最新号(第60巻2号、2014年4月発行)が送られてきました(現在、この雑誌の編集委員会に入っているので、無償奉仕の「御礼」として送られてきます)。

この雑誌は年4回の発行で、査読を経た論文が毎号掲載されていますが、毎年の第2号には、前年の学術大会の報告が掲載されます。大会に出ていれば、総会で報告されたことの繰り返しを読むだけですが、しかしすでに半年以上経っていることもあり、大会のことを思い出しながら懐かしく読むことにもなります。

その総会報告を読んでいると、前年(あるいはそれ以前)に逝去した会員の名前が列挙されているのですが、研究書や注解書などでよく知られている学者の名前に結構頻繁にお目にかかり、時の流れを感じさせられます。今号に載っていたのは、

Paul Achtemeier (1927-2013): ユニオン神学校 (リッチモンド。 現在はユニオン長老派神学校) 名誉教授。第一ペトロ書やローマ書の注解がある。非カトリック信者でありながら米国カトリック聖書協会の会長を務めた最初の聖書学者。

Friedrich Avemarie (1960-2012): マールブルク大学(ドイツ)教授。ユダヤ教にも造詣が深い新約学者。『トーラーと命:初期ラビ伝承におけるトーラーの救済的意味についての研究』、『使徒行伝における洗礼報告』 などの著書あり。52歳での逝去は早過ぎます。

Dieter Lührmann (1936-2013): マールブルク大学(ドイツ)名誉教授。マルコ福音書注解(HNT)、ガラテヤ書注解(ZBK, 英訳あり)の他、Q資料研究でも知られる。

Abraham Malherbe (1930-2012): イェール神学校名誉教授。『パウロとテサロニケ人:牧会的ケアの哲学的伝統』『パウロと通俗哲学』、古代の書簡理論に関する研究や、さらにテサロニケ書簡注解でも知られる。亡くなった時は、牧会書簡注解に取り組んでいたとのこと。

などです。他には、
Christopher F. Evans, Gerald Hawthorne, Hans Hübner, Klaus Junack, René Kieffer, Ralph P. Martin, Carlo Martini, Frans Neirynck, Eugene Nida, Alexander Sand, Jacques Seynaeve, Justin Ukpong, Roy Bowen Ward, Nikolaus Walter で、いずれも本や雑誌論文で名前を見たことのある人ばかり。

逝去された先達の霊が天上で平安を得られるよう祈ります。 同じ頁には、20名の新入会員のリストも掲載されていました。こうして新旧交代が進んでいくのだということを感じさせられる報告です。