チューリヒ、そして広島

スイス・チューリヒに住んで(た時)の雑感と帰国後のスイス関連話題。2007年4月からは広島移住。タイトルも変えました。

古くても「新しいチューリヒ新聞」

2005年01月27日 08時09分04秒 | Weblog
「新チューリヒ新聞」(Neue Zuercher Zeitung、略称 NZZ)が創刊225年を迎えたそうです。(上の写真、左上の隅をよく見ると、226年目と書かれています。)

チューリヒの新聞は、この NZZ と「ターゲス・アンツァイガー」(Tages Anzeiger) の2紙が大手ですが、老舗は NZZ です。なにしろ、1780年の創刊で、フランス革命(1789~1794年)以前から発行されていていまだに廃刊になっていないという珍しい新聞です(同種のものに「ウィーン新聞」[Wiener Zeitung] があり、こちらは1703年創刊。現在も発刊されている中で世界最古をうたっています)。ちなみに「ターゲス・アンツァイガー」は創刊113年。(チューリヒの新聞については以前にも書いたことがあります。リンクはこちら。)

現在、創刊225年を記念しての臨時展示場がベルヴュー広場に設けられています(NZZ の本社はその隣)。なんのテントだろうと思っていたのですが、Swissinfoの記事を見て事情が呑み込めました。

現在の発行部数は16万部で、「ターゲス・アンツァイガー」紙の25万部には及びませんが(スイス全体で5番目の発行部数だそうです。一番はやはり「20 Minuten」)、流行に左右されない硬派の誌面づくりを貫いているようです。上の写真からもわかるとおり、写真もいまだにモノクロです(カラーを取り入れているページもあります)。インターネットでの配信も1997年からやっていますが、どことなくイメージにそぐわない気もします。

第2次世界大戦の時は、ヒトラーのドイツを批判し、NZZ の特派員がドイツを追放されたこともあったそうです。しかし、1968年の学生運動の際に労働者や学生を批判したことから、右派というイメージがついているとのこと(以上はすべて、上記の Swissinfo からの受け売り)。

スイスの老舗新聞でありながら、「新チューリヒ新聞」という名前なのは、創刊時の「チューリヒ新聞」(Zuercher Zeitung) を1821年に改名し、頭に「新」を入れたからだそうですが、元来の意味が失われた今となってはむしろ洒落っぽく聞こえます。

昨日バーゼルに出かけた際、チューリヒ駅で NZZ を買って列車に乗り込んだのですが、バーゼルまでの1時間ではとても読みきれませんでした。以前にも書いたように、一つ一つの記事が長いのです。せかせかした現代社会には合わないような丁寧な記事ですが、これこそが現代の新聞にむしろ求められているものであるようにも思えます。「20分」で読めるような中身のニュースは、インターネットで容易に入手して済ませることができるのですから。これで2フラン50(220円強)は、スイスの物価から考えれば安いと思うべきなのかもしれません。