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とりがら時事放談『コラム新喜劇』



日曜日のフジサンケイビジネスアイ紙に「ながらパソコン」に関する記事が載っていた。
ある調査によると、テレビを見ながらパソコンを楽しむ人が2割以上もいるというのだから驚いた。
パソコンの画面を見ながらテレビも見る。
そんなことできんやろ。無意味だ。
と一瞬考えたが、実は私も学生時代は「ながら族」の一人だったのだ。

私が中高学生だった二十数年前。
私もそうだったが、親しい友達の多くもラジオを聴きながら勉強をする(ふりをする)というのがその頃のポピュラーなスタイルだった。
友人の一人は毎日放送ラジオの鶴瓶のヤンタン(ヤングタウンという大阪の夜の番組)に投稿した小話が採用され、放送されるという幸運に恵まれた。
ヤンタンステッカーを手に入れたのを羨ましく想ったが、しかし内容があまりに下らなかったので、暫くのあいだ仲間内でからかわれるという不運のおまけが付いた幸運だった。
一方私はヤンタンではなくラジオ大阪で放送されていた「欽ドン」(欽ちゃんのドンといってみよう!)への投稿マニアになっていて、数年間のうちに欽ドン賞を3回と「ロードショー賞」や「明星賞」「ジャンプ賞」(欽ドンのスポンサーは集英社だった)などを計十数個頂戴した。
大阪では欽ドンは午後9時20分から10分間放送されていて、毎夜欠かさず耳を傾けていたものだ。
ところが高校1年生だったある日、欽ドンを聞かなくなる事件が発生した。

その夜、確かラジオ大阪はプロ野球のナイター中継が長引いて、欽ドンがキャンセルされる雰囲気だった。
いつもなら野球を聞き続けているのだが、何を思ったのかFM放送にラジカセのダイヤルを合わせた。
「何やってんやろ?」
という好奇心から合わせたのだと思う。
当時、大阪のFM放送はNHKとFM大阪の2局しかなく、NHKはクラシック番組などが中心だったので必然的にFM大阪にダイヤルを合わせた。
なにか洒落た洋楽が出てくることを期待した私は出て来た音にビックリした。
テレビドラマのようにセリフが交わされ、バックにジャズやポップス、ロックなどの音楽が流れているのだった。
「何?これ」
暫く耳を澄ませていると、聞きなれた刑事コロンボの声優「小池朝雄」の声が聞えてきたのだ。
そう、これは生まれて初めて耳にしたラジオドラマだった。

番組の名前を「音の本棚」という。

すっかり番組の雰囲気に魅了された私は、翌週から欽ドンは録音し、音の本棚を聞くようになった。
音の本棚は毎週月曜から金曜日の午後9時から9時25分に放送されていたのだ。
しかしやがて録音する番組も欽ドンから音の本棚に変わって行った。

FMファンやFMレコパルといった週刊誌のFM番組欄をチェックして、面白そうだと思って録音した番組は今聞いても面白い。
「イリュージョン(リチャードバック原作)」
「モッキンポット師の後始末(井上ひさし原作)」
「海底二万マイル(ジュール・ベルヌ原作)」
などなど。
極め付けは「2001年宇宙の旅」。
ラジオドラマにも関わらず、これはキューブリックの監督したSF映画よりも素晴らしかった。

この番組は1年ちょっとで終了してしまったと記憶するが、これほど面白かったラジオドラマを以後一度も耳にしたことはない。
そういえば「音の本棚」の時間だけ「ながら勉強(したふり)」にならななかったことを思い出した。
耳を澄ますと今もオープニングのナレーションを思い出す。

「今宵また、いつものように、いつものサントリーをグラスに満たします。そしてまろやかな味と香りに包まれ思いつくまま空想の翼を広げます。過去、現在、未来。サントリーの琥珀の酔いに身をゆだねれば、どんな世界も想いのまま............さあ、今夜はどこへ飛んで行くのでしょう」

※ちなみに洋酒の好きでない私はサントリーはあまり飲まない。

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