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とりがら時事放談『コラム新喜劇』



3年前。うちの会社にドロボウが入った。
朝出勤して4階にある自分オフィスに上がって行くと様子がおかしい。
前日ちゃんと閉じたはずの引き出しが開いていて、机の上と床の上に書類が散らばっていた。
私は退社時刻に机の上がグチャグチャしているのが大嫌いだから、見かけだけでもなんとか整理して帰宅しているのでなんだか変だと思ったのだ。

夜の間に送ってこられているであろうファックスをチェックしに1階へ降りる途中、物凄い光景をみた。
2階の総務フロアの書庫の扉が全て開けられて、机の引き出しは中身が散乱された状態になっていた。
「おはようご、ざ、い、ま..」
まで挨拶すると総務の部門長は立ち尽くしたまま「ドロボウに入られたんや」と困惑顔。
結局、被害ゼロのフロアは私の部署だけで、他の部署が使っていた全てのノートPCと小型金庫などの金目のものが奪われた。
私の部署は再三の「ノートPCに買い替えろ」という要求を会社に拒否され続け古いデスクトップを使用していたので幸運にも被害を免れたのだった。

その数日後。
会社にセコムが入ってきて遠隔監視装置を設置して帰っていった。
それまで休日でも鍵さえ持っていれば自由に出勤できて、処理しきれない業務を片づけたりしていたが、それがまったくできなくなった。
セコムのおかげで仕事がやりにくくなってしまったのだ。

私の担当の得意先を辞めてセコムに入社したA氏という親しい人に会ったとき、「もしかして、Aさんところ、ドロボウと提携なんかしていない?」と訊ねてしまった。
それくらいドロボウの数と警備保障会社の業績が増えてきている哀しい時代だ。

昭和40年代。
岡山にあった祖父の家には玄関の鍵がなかった。
いや、鍵はあったがかかっていることがなかったと言ったほうが良いだろう。
子どもであった私は「おじいちゃん!」といきなり玄関をガラッと開けてドタバタと入って行くことができた。
この田舎の家は玄関に鍵がないばかりか、暖かくなると始終開けっ放しだったので、人間だけでなくツバメがヒョイヒョイ出入りして、家の土間の天井の梁に毎年巣を作って子育てに励んでいた。

正月、お盆、春休みなどなど。
身内も含めていつも近所の人がいつも勝手に出入りして、ある意味かなり賑やかな家だった。
そんな家は祖父の家だけでなく、他のところも同じような感じで、まったく珍しくなかったと記憶する。

しかし、今は鍵をかけず、玄関を開けっ広げておくことなど田舎の家でもできなくなった。

ツバメの代わりに警備会社が出入りする。
なんて無粋な時代なんだ。


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