人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

METライブビューイング、プッチーニ「ラ・ボエーム」を観る~ミミの代役オポライスにブラボー!

2014年05月14日 07時00分48秒 | 日記

14日(水)。昨日、新宿ピカデリーで、METライブビューイング、プッチーニ「ラ・ボエーム」を観ました キャストは、ミミにクリスティーヌ・オボライス(ソプラノ)、ロドルフォにヴィットーリオ・グリゴーロ(テノール)、ムゼッタにスザンナ・フィリップス(ソプラノ)、マルチェッロにマッシモ・カヴェレッティ(バリトン)ほか 指揮はステファーノ・ランザー二、演出はフランコ・ゼフィレッリです。これは今年4月5日に米メトロポリタン歌劇場で上演されたオペラのライブ映像です

 

          

 

舞台は19世紀パリのカルチェ・ラタン。寒いクリスマス・イヴの夜、詩人のロドルフォとお針子のミミが出逢います。出逢った瞬間に二人は宿命的な恋に落ちます しかし、貧しいロドルフォは自分の力ではミミを幸せに出来ないとして、ウソを言ってミミから離れていきます ミミはロドルフォと別れ伯爵と暮らしますが、病状が悪化して伯爵のもとを離れ、ロドルフォの元に戻ります。しかしもはやミミに生きる力はなく息を引き取ります。ロドルフォはミミの亡きがらにすがりつきます

典型的な悲劇的ラブ・ロマンスです。1896年に巨匠アルトゥーロ・トスカニーニの指揮で初演され、世界中のオペラハウスで繰り返し上演されてきた人気ナンバー・ワンと言っても良いほどの名作オペラです ちなみに「ボエーム」というのは、貧しいながらも自由な生活をおくる「ボヘミアン」のことです

開演にあたり、MET総裁ピーター・ゲルブが舞台に登場、配役交替についてアナウンスします

「皆さん、今日はMETの歴史の中で貴重な体験をすることになります。ミミを歌うことになっていたソプラノのアニータ・ハーティッグから、今朝7時半にメールが届き、『流感に罹り出演出来なくなってしまった。何とかしようと思ったがどうしても歌うことが出来ない』とのことでした 急きょ、昨日同じMETの舞台・プッチーニの『蝶々夫人』で蝶々さんを歌ったクリスティーヌ・オポライスに電話して代役をお願いできないかと頼み、何とか引き受けてもらえることになりました 前日『蝶々夫人』を歌って18時間以内に『ミミ』を歌う歌手はMETの長い歴史の中でオポライスが初めてです どうか、そうした事情をご理解いただき温かい声援をお願いします

これについて、幕間のインタビューでソプラノのジョイス・ディドナードの質問に、オポライスは次のように答えています

「前日『蝶々夫人』を歌いましたが、歌ったその日は興奮していて中々寝付けず、実は朝の5時まで起きていました 朝の8時頃電話で起こされ、『今日、ミミを歌ってくれないか』と頼まれました。最初は断りました(笑)。でも、やらなければならないと思い直し引き受けることにしました。さあ、それからが大変でした。衣装合わせやら、主要場面のおさらいやら、化粧やら、すべてを限られた時間の中でやらなければなりませんでした

本物のプロですね クリスティーヌ・オポライスはラトビア出身の美人ソプラノ歌手です 彼女の歌うアリアを聴いていて、これが本当に昨日「蝶々夫人」を歌って、十分な睡眠をとることも叶わないまま急きょ「ミミ」を歌うことになった歌手の声だろうかと思うほど美しく素晴らしい歌声でした 蝶々夫人として1度死に、18時間後にミミとして2度目に死ぬ役割を演じたオポライスは、今回の代演によってMETの歴史に名を残すことになるでしょう

ただ一つ気になるのは、オペラ公演には必ず、出演者の急な降板に備えて、それぞれの役割にカバー歌手を控えさせているはずなのに、今回はどうしたのか、ということです 考えられるのは、まさかヒロインが降板するとは考えずにオポライスその人をミミのカバーとして登録していたのではないかということです。しかし、これはピーター・ゲルブ総裁と関係者くらいしか分からないことでしょう

 

          

 

ロドルフォを歌ったヴィットーリオ・グリゴーロは1977年イタリア生まれ。前回2010年のMETの「ラ・ボエーム」にロドルフォ役でいきなり主役デビューしました 今回も、まったくムリのない自然な歌い回しの美しいテノールで聴衆を魅了しました

ムゼッタを歌ったスザンナ・フィリップスはアラバマ生まれのソプラノですが、2011年のMET来日公演でもムゼッタを歌ったのを聴きました。伸びのある明るいソプラノです 今やMETのアイドル的な存在になっているようです

さて、この公演の大きな特徴はフランコ・ゼフィレッリの豪華な舞台・演出です 第1幕のディテールにこだわった、まるで本物のような屋根裏部屋の再現、第2幕のカルチェ・ラタンの雑踏のリアルな2階建て舞台と百数十人の登場人物には圧倒されます 2011年の来日公演でも第2幕が開くと拍手が起きました 私も夢にまで見た絢爛豪華な舞台を目の当たりにして感動しました このプロダクションは1981年に制作・上演されてからこれまで400回以上も上演されてきたといいます。本物はいつまで経っても色あせないものですね

2011年の来日公演では、当初アンナ・ネトレプコがミミを歌うことになっていましたが、3.11東日本大震災とその後の原発事故の影響で来日しなくなり、代わりにバルバラ・フリットリが歌いました。この時は心底がっかりしました METライブビューイングでネトレプコの活躍を観て聴いていたので、彼女の歌を聴くために64,000円もの高額なチケットを買ったからです

 

          

                (2011年MET来日公演プログラム表紙)

 

          

            (ネトレプコ他の来日中止と代演を告げる告知文)

METライブビューイング「ラ・ボエーム」の上映時間は2回の休憩を挟んで2時間54分。都心では新宿ピカデリー、東銀座の東劇などで16日(金)まで上映中です

 

          

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