人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

「仲道郁代 モーツアルトの世界~メロディの哀しみ」を聴く~川久保賜紀とともに

2014年05月19日 07時02分00秒 | 日記

19日(月)。17日に国立競技場で開催される予定だった元ビートルズのメンバー、ポール・マッカートニーの来日公演が延期になってしまいましたね ウイルス性炎症とのことで、振り替え公演は今日の17時半から開催されるということです 昨日の朝日朝刊に北海道から上京してきた男性会社員のインタビューが載っていました 

「振り替え公演は仕事で観に行けない。残念だけどあきらめます

本当にお気の毒です こういう人がたくさんいらっしゃるのではないかと思います。遠路はるばる上京してきてどうしても聴きたい人は、土曜、日曜と連泊して今日の公演に臨むのでしょうが、想定外の出費がかさんで、これまたお気の毒です 入場料が高いのは仕方ないとしても、走り高跳びではないですが、超えるべきポールも高かったですね

〔追伸〕今日の朝刊によると、今日の振り替え公演も中止か延期になるとのこと。21日の武道館公演は予定通りだそうです。

 

  閑話休題  

 

昨日、晴海の第一生命ホールで「仲道郁代 モーツアルトの世界~メロディの哀しみ(ヴァイオリンの響きとともに)」を聴きました  プログラムはモーツアルトの①ヴァイオリン・ソナタ第35番ト長調K.379、②ヴァイオリン・ソナタ第28番ホ短調K.304、③ピアノ・ソナタ第8番イ短調K.310、④「泉のほとりで」によるクラヴィーアとヴァイオリンのための6つの変奏曲ト短調K.360、⑤ピアノ・ソナタ第12番ヘ長調K.332です ヴァイオリニスト川久保賜紀を迎えて仲道郁代がピアノを弾きます

 

          

 

自席は1階9列24番。センターブロック右通路側です。会場は8割方埋まっている感じです。最初にベージュのドレスに身を包まれた仲道郁代が登場し、この日の「モーツアルトの世界~メロディーの哀しみ」の意味合いについて解説します

「バッハの時代には、宗教曲が多く作られ、短調の曲が多く作られました モーツアルトの時代になると、貴族から依頼されて作曲するという形になり、短調は”暗い”として嫌われる傾向にありました したがって、モーツアルトというと短調の名曲を思い浮かべますが、彼はごく限られた曲しか短調の曲を作曲していません その後、ベートーヴェンの時代になると、依頼されて作るというよりも、自分の意志で作りたい曲を作って出版社に売るという形になり、短調の曲も多く作られるようになりました 今日はモーツアルトの短調の曲に焦点を当てて演奏します。それではヴァイオリンの川久保賜紀さんをお迎えします

として、ダークブルーのシックなドレスを身にまとった川久保賜紀を迎い入れ、1曲目のヴァイオリン・ソナタ ト長調K.379の演奏に入りました

第1楽章「アダージョ、アレグロ」はピアノの序奏から入りますが、仲道はゆったりしたテンポで音楽を進め、それに川久保のヴァイオリンが合わせます。途中から軽快なアレグロのテンポに変わります。第2楽章はアンダンティーノ・カンタービレです。おだやかな音楽を聴いていると、モーツアルトって本当にいいな、と思います とくに川久保のヴァイオリンが美しく、思わず聴き惚れてしまいます。川久保賜紀って本当に素晴らしい演奏家ですね

曲が終わり、仲道が再びマイクを持って次のヴァイオリン・ソナタ ホ短調K.304について解説します

「この曲はモーツアルトがザルツブルクを離れ、母親とともにマンハイムを経由してパリに演奏旅行に行った際に作曲されたものですが、この時に彼は、パリで母親を亡くします この曲は、母親の死が影響していることは否定できません。それでは聴いて下さい

第1楽章「アレグロ」がヴァイオリンとピアノによって同時に開始されます ここでも川久保のヴァイオリンが冴えわたります。第2楽章のテンポ・ディ・メヌエットの哀しさはどうでしょう。これほど哀しみを湛えた音楽があるでしょうか

再度、仲道がマイクを持って次のピアノ・ソナタ イ短調K.310の解説をします

「次の曲は、左手でザザザザとリズムを刻む一方、右手が行進曲のようなメロディーを奏でます 左手による同じ音の連続は”永遠”を表すと言われています 一方、右手の行進曲は”王者の行進曲”と呼ばれています。どういう意識でモーツアルトがこの曲を作ったのかは分かりませんが、そういうことを頭に入れて聴くとまた違った聴き方が出来ると思います

として、演奏に入りました。相当、高速のテンポです。何かに対して怒りをぶつけているような激しい感情の吐露を感じさせる演奏です 今まで、この曲に対するイメージは”疾走する哀しみ”でしたが、彼女の解説によってイメージが変わりました。どちらかというと、目の前にある悲しみに打ち勝ち、それを乗り越えようという意思を感じます

と、ここまでは良いのですが、第3楽章の終盤に至って音程が不安定になり、最後に元(の音程)に戻りました 少なくとも私にはそのように聴こえました。もし、同じ会場でこの演奏をお聴きになった方がいらっしゃったら、私の言うことが正しいのか、私の耳がおかしいのか、お教えいただきたいと思います

 

          

 

20分の休憩後に後半のプログラムが始まります。仲道がマイクを持って登場、再び川久保を呼びます

「賜紀さんと初めて演奏したのは5年前でしたか、この会場だったですよね モーツアルト・ガラコンサートで、チェロの長谷川陽子さんと3人でモーツアルトのピアノ三重奏曲を演奏しました (この演奏はtoraも聴いた) 賜紀さんとデュオを組むのは今回が2回目でしたよね?」

川久保「・・・・・・3回目だと思います

仲道「ああ、そうでした もう一度ありました(会場・笑)。ところで、モーツアルトの短調の曲を演奏していてどう感じますか?」

川久保「シンプルな中に、繊細な音楽が詰まっている。その繊細さをどのように表現できるか非常に難しいと思います

そして「泉のほとりで」による6つの変奏曲 ト短調K.360を二人で演奏しました 初めて聴く曲でしたが、楽しめました 再度、仲道がマイクをとり、

「同じ短調でも、ショパンははかなさを感じますが、モーツアルトは明るいところもあるし、そうでないところもある、すべてを含んだ”永遠”の世界を感じます 次は長調の曲です。モーツアルトの曲は短調の曲でも長調が出てきて、長調の曲でも短調が出てきます。そのように次々に変化していきます

と解説し、ピアノ・ソロでピアノ・ソナタ ヘ長調K.332を弾きました この曲は5月4日にラ・フォル・ジュルネ音楽祭でアンヌ・ケフェレックのピアノで聴いたばかりです。ケフェレックの演奏は、淡々と弾いていながら、そこはかとなく心に沁みる演奏でした それに比べて、仲道はより思い入れを込めた演奏で、テンポも速めでした

二人は最後にアンコールとしてモーツアルトの「ディヴェルティメント第17番」から第3楽章「メヌエット」を優雅に演奏しました

今回のように曲の合間にレクチャーをしてくれるコンサートは、私のような音楽に素人の聴き手にとって非常に勉強になります。クァルテットでは、この第一生命ホールを基点に演奏している古典四重奏団がレクチャー・コンサートをやっていますが、毎回楽しみにしています

 

コメント (2)
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