人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

スダーン+東京交響楽団でベルリオーズ「テ・デウム」を聴く~350人の総力戦

2014年05月26日 07時00分40秒 | 日記

26日(月)。24日の夕方、サントリホールで東京交響楽団の第620回定期演奏会を聴きました プログラムは①ベルリオーズ「ローマの謝肉祭」序曲、②ペンデレツキ「3つの中国の歌」、③ベルリオーズ「テ・デウム」で、指揮はユベール・スダ―ンです

 

          

 

今年3月をもって東響の音楽監督を退き、桂冠指揮者に就任したスダーンが登場、第1曲めのベルリオーズ「序曲:ローマの謝肉祭」の演奏に入ります 冒頭、謝肉祭の熱狂を表すテーマが勇ましく奏でられ、次いでコーラングレ(イングリッシュホルン)のソロで叙情的なメロディーが美しく奏でられます スダーンは東響から色彩感豊かでふくよかな響きを引き出します。スダーンの素晴らしいところは、このような派手っちい曲を演奏する時も品が失われないことです

規模が縮小され、次のペンデレツキ「3つの中国の歌」が開始されます。ペンデレツキは昨年80歳を迎えたポーランドの作曲家ですが、この曲は実質的に日本初演とのことです テキストは1907年にドイツで出版されたハンス・ベートゲの詩集『中国の笛』から3編が選ばれています。ベートゲといえばマーラーの「大地の歌」でも使われましたね

バリトン独唱のフランコ・ポンポー二がスダーンとともに登場します。METにも出演したことのあるバリトンですが、「コジ・ファン・トゥッテ」のグりエルモ役を歌ったというのも頷ける優男です

第1曲「神秘の笛」、第2曲「月出ずる夜」、第3曲「夜の風景」からなりますが、第1曲の冒頭のメロディーが流れてきた時、不思議な感覚に捉われました 東洋風味のある西洋音楽と言ったらよいのか、フルートとトライアングルの独特の響きが中国を印象付けます。第3曲ではハープと弦楽器によるハーモニーが神秘的に響きます

この曲を、作曲者名を伏せて聴かされても、ペンデレツキの名前は出てこないでしょう。十数分の短い曲ですが、現代音楽としては聴きやすい曲でした

 

          

 

休憩時間が終わり、自席に着くと、ステージ裏のP席に男女混成合唱団が配置に着くところでした 約90名の男声を中央に挟んで、約120名の女声が配置されます。さらにステージ後方には約60名の児童合唱団がスタンバイします 合唱だけで約270人ですが、オケを加えれば350人は超えるでしょう。しかし、ベルリオーズの「テ・デウム」が作曲者のタクトで初演された1855年4月30日には、900人の演奏家によって演奏されたと言いますから です。ベルリオーズは音楽の規模において突出していたのですね

「テ・デウム」はカトリック教会の「神を讃える」聖歌ですが、フランスでは軍事的勝利を祝う機会にもよく演奏されたそうです 私はこの曲を聴くのは初めてですが、冒頭のパイプオルガンによる強奏とそれに次ぐ圧倒的な合唱を聴いた時、まるでオルガンとオケと合唱の力比べではないか、と思いました 中でも合唱の迫力は凄まじいものがあり、時にオケの音が聴こえないほどでした

聴いていてすぐにマーラーの交響曲第8番を想起しましたが、あの曲は合唱がオケをねじ伏せるといった印象はありません ベルリオーズがいかに人の声の力を信じていたかの証左でしょう

圧倒的な迫力で曲が終わり、拍手が起こりましたが、「まだ拍手には早すぎたか」と遠慮した聴衆がいったん拍手を控えたため、拍手が鳴り止みましたが、スダーンが客席に振り返って「終わりました。どうぞ拍手を」というジェスチャーを示したため、再び、じわじわと、そして段々大きく、最後は会場が割れんばかりの拍手がステージ上のオケと児童合唱、テノールの与儀巧、P席の合唱団を包み込みました

合唱指揮者、テノールとともに、スダーンは何度もステージに呼び戻されましたが、指揮者だけ再登場したとき、ステージ横で控えていた東響の大野順二専務理事から大きな花束が贈呈され、深々と頭を垂れていました 長年の音楽監督に対する慰労と、桂冠指揮者就任のお祝いを込めた花束だったのでしょう

東京コーラスの皆さんは、それぞれの生活を抱える中で、練習を積んでこの日に臨んだことと思います 皆さんはプロ並みの圧倒的な迫力でわれわれ聴衆を感動させてくれました。あらためて大きな拍手を送ります

「やっぱり、スダーンは素晴らしい」とあらためて思ったコンサートでした

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