人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

新国立オペラ、R.シュトラウス「アラベッラ」を観る~粒ぞろいの歌手陣

2014年05月23日 07時01分22秒 | 日記

23日(金)。昨夕、初台の新国立劇場でリヒャルト・シュトラウス「アラべッラ」を観ました キャストは、アラべッラにアンナ・ガブラ―、ズデンカにアニヤ=二―ナ・バーマン、ヴァルトナー伯爵に妻屋秀和、アデライデに竹本節子、マンドリカにヴォルフガング・コッホ、マッテオにマルティン・二―ヴァイル、フィアッカミッリに安井陽子ほか。演奏はベルトラン・ド・ビリー指揮東京フィル、演出・美術・照明はフィルップ・アルロ―です

私の2つ前の席はこのオペラの衣裳を担当した森英恵さんが、左前の席には次期新国立オペラ芸術監督・飯守泰次郎さんが座っておられます

 

          

 

舞台は19世紀末のウィーン。没落貴族のヴァルトナー伯爵には、長女アラべッラと男の子として育てているズデンカがいる。美人のアラべッラには士官のマッテオなど多くの求婚者がいるが、彼女は誰にも関心がない ある日、彼女の前に資産家のマンドリカが現れ、お互いに一目ぼれしてしまう。ひそかにマッテオを愛するズデンカは、彼を慰めようと姉の部屋の鍵と偽って自分の部屋の鍵を渡す。マンドリカはアラべッラの不貞を疑うが、ズデンカが真実を告白し、アラべッラとマンドリカ、ズデンカとマッテオが結ばれる

 

          

 

実は今回の「アラべッラ」は、尾高忠明氏が新国立オペラの芸術監督に就任した2010年のオープニングを飾った思い出の作品の再演です。よほど思い入れのある作品なのでしょう。私がこのオペラを新国立で観るのは前回に次いで2回目です

指揮者ベルトラン・ド・ビリーは2010年まで8年間ウィーン放送交響楽団の音楽監督を務め、2012年2月にN響定期公演で振ったこともある人気指揮者です

アラべッラ役のアンナ・ガブラ―はミュンヘン生まれ。2011年の新国立オペラ「こうもり」でロザリンデを歌ったソプラノです 聴いていて思うのは、リヒャルト・シュトラウスに相応しい輝きがあり深みのある声を持った歌手ということです マンドリカを含めて4人の男性から求婚されるのに相応しい美貌の持ち主でもあります 第3幕の最終場面で階下のマンドリカのもとに、アラベッラがコップ1杯の水を手にして階段を降りてきて歌う長いアリアは、リヒャルト・シュトラウスの魅力を最大に発揮した歌声でした

同じくらい魅力的だったのは、アラベッラの妹ズデンカを歌ったドイツ・ジークブルク生まれのアニヤ=ニーナ・バーマンです 男の子として育てられたので外向けには「ズデンコ」という、雪道ですっころんだような可哀そうな名前ですが、ズボン役から第3幕で本来の女性に戻った時の歌と演技は素晴らしいものがありました

アラベッラに求婚するマンドリカ役のヴォルフガング・コッホは、田舎の農場主らしい素朴で力強い歌声で聴衆を魅了しました

舞踏会のマスコットガール、フィアッカミッリを歌った安井陽子は、過去に新国立で歌ったモーツアルト「魔笛」での夜の女王のアリアで示したコロラチューラ・ソプラノの魅力を存分に発揮しました

私が今回特に感心したのは、ヴァルトナー伯爵を演じた妻屋秀和の活躍です。このオペラが、実は喜劇であることを彼の歌と演技が思い起こさせてくれました この人は何を歌っても、何を演じても素晴らしい活躍を見せてくれますが、今回は突出していました

歌ではありませんが、特筆すべき演技がありました。第3幕で、アラベッラが3人の男性に別れを告げるシーンの中で、最後にラモラル伯爵が一人で回転して踊りながら階段をジグザグに上がって行くところがありますが、あれは一歩間違えれば「蒲田行進曲」におけるヤス(柄本明が演じた)の『階段落ち』になるところです バリトンの大久保光哉は歌と同じくらいあのシーンを”稽古”したのではないでしょうか

最後に、この公演の大きな特徴は、300種類もの青で舞台を満たしたフィリップ・アルロ―による舞台・演出です アラベッラの衣裳はもちろんのこと、背景もすべて青で統一され、独特の世界を表出しています

ビリー指揮東京フィルはウィーン情緒豊かな音楽づくりをしていました。カーテンコールでは主役級の歌手陣を中心にさかんな拍手とブラボーを受けていました

第1幕の後の休憩時間に、いつものようにロビーに出てプログラムを読んでいたら、「もしもし、〇〇ちゃん?あのね、夕食食べたの?グランマは帰るの10時過ぎになるから玄関の鍵だけ閉めておいてちょうだい。門の鍵は開けておいてね」という高齢女性の声が聞こえました グランマって・・・・・・そうか、グランドマザーね。要するに「おばあちゃんは帰りが遅くなるから」という連絡だったのです 親はどうした?と思いましたが、最近、孫に「おばあちゃん」とか「おじいちゃん」と呼ばせない高齢者が増えているように思います。ファースト・ネームで呼ばせるという女性もいます いくつになっても自分自身が歳をとって孫がいる年齢になったことを認めず、意識的に若さを保とうとするアンチエイジング対策の一つと思われます しかし、これは決して悪いことだとは思いません。それにしても、玄関の鍵は分かるとして、門の鍵と聞いた時は「どんな大邸宅に住んでいるんだろうか?」と、思わずお顔を拝見してしまいました。ごく普通のおばあちゃんでした

午後6時半に始まったこの公演が終了したのは午後10時5分を回っていました。新国立オペラ「アラベッラ」は青の舞台と共に思いだすことでしょう

 

          

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