人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

METライブビューイング、モーツアルト「コジ・ファン・トゥッテ」を観る~アンサンブル・オペラの魅力

2014年05月25日 07時13分33秒 | 日記

25日(日)。昨日、新宿ピカデリーでMETライブビューイング、モーツアルト「コジ・ファン・トゥッテ」を観ました キャストは、フィオルディリ―ジにスザンナ・フィリップス、ドラべッラにイザベル・レナード、デスピーナにダニエル・ドゥ・二―ス、フェルランドにマシュー・ポレンザ―二、グリエルモにロディオン・ポゴソフ、ドン・アルフォンソにマウリツィオ・ムラ―ロほか 演奏はジェイムズ・レヴァイン指揮メトロポリタン歌劇場管弦楽団、演出はレスリー・ケーニッヒ。この公演は今年4月26日に米メトロポリタン歌劇場で上演されたオペラの実況録画映像です

 

          

 

現場復帰したジェイムズ・レヴァインが指揮台に座ってタクトをとります。序曲が始まりますが、レヴァインはモーツアルトが求めるであろう軽快なテンポで音楽を進めます 「フィガロの結婚」にしても、この「コジ・ファン・トゥッテ」にしてもモーツアルトはテンポが命です カメラは時々指揮をするレヴァインの顔をアップで捉えますが「モーツアルトを振るのが楽しくて仕方がない」という喜びに満ちた表情を見せています

「コジ・ファン・トゥッテ」(女はみな、こうしたもの)は1790年1月26日にウィーンのブルク劇場で初演されましたが、最近の研究によると、ダ・ポンテがサリエリのために書いた台本を、サリエリが途中まで作曲したがうまくいかなかったことから破棄したため、モーツアルトに依頼が回ってきたということのようです

2組の男女がそれぞれのパートナーを交換して、女性陣が誘惑にのるかのらないか賭けをするという内容ですが、ベートーヴェンは「ドン・ジョバンニ」とともに「不道徳なオペラ」として毛嫌いしたことでしょう しかし、ダ・ポンテとモーツアルトにとっては「人間は本能には逆らえない。オペラは楽しくなくっちゃ」というのが根底の考えでしょう

アラバマ州生まれで、フィオルディリージを歌ったスザンナ・フィリップスは、つい最近、METの「ラ・ボエーム」で”はまり役”のムゼッタを歌ったばかりですが、今回の”真面目”なヒロインをどう演じ歌うことができるのかが注目されました もともと歌唱力のあるソプラノなので難なく”騙され役”のヒロインを見事に歌い演じました

妹のドラベッラ役のイザベル・レナードはMETの地元ニューヨーク生まれのメゾ・ソプラノですが、深みのある美しい声の持ち主です 昨年のサイトウ・キネン・フェスティバルにも出演したとのことですが、残念ながら私は生で聴くことができませんでした

フェルランド役のマシュー・ポレンザー二はイリノイ州出身のモテ男で、実に自然で輝きのあるテノールです グりエルモ役のロディオン・ポゴソフはモスクワ生まれのバリトンですが、歌はもちろんのこと、迫真の演技力が光っていました

今回の公演で二人のヒロインの人気を食わんばかりの勢いだったのが、デスピーナ役、メルボルン生まれのアメリカ人ダニエル・ドゥ・ニースです 15歳でオペラデビューし、METは19歳で初舞台を踏んだといいますから相当の実力者です 黒人歌手ですが、歌はべらぼうにうまく、相当演技力もあるソプラノです。彼女の一つ一つの動作がチャーミングです

そして、哲学者ドン・アルフォンソを演じたマウリツィオ・ムラーロの円熟味のある歌と演技は舞台に落ち着きを与えていました

このオペラの魅力はソロのアリアはもちろんのこと、二重唱、三重唱、四重唱、六重唱といったアンサンブルです とくに二重唱が1人加わって三重唱になり、また1人加わって四重唱になり、最後に6人が揃って六重唱を歌う第1幕のフィナーレはアンサンブル・オペラの魅力そのものと言っても過言ではないでしょう アリアが歌われるたびに、「モーツアルトっていいな」「METは最高だ」とひとり呟いていました

今回の演出はサンフランシスコ生まれの女性演出家レスリー・ケーニッヒですが、きわめてオーソドックスな舞台作りと演出で、非常に好ましく思いました モーツアルトのオペラというと、音楽そっちのけで「この斬新な演出を見てくれ」的な慙愧に耐えないトンデモ演出がままありますが、演出は音楽の邪魔をしてはいけません。その点ケーニッヒの演出は音楽を最優先に考えた最良の方法を採っていました

私はこれまで何度か「コジ・ファン・トゥッテ」を生で、あるいはライブビューイング等の映画で観てきましたが、今回のMETの公演が、歌手陣、演出ともに最高でした

 

          

           (左はイザベル・レナード、右はスザンナ・フィリップス)

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