人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

小林研一郎+東京フィルでベートーヴェン「運命」、リスト「ピアノ協奏曲第1番」を聴く

2014年05月11日 07時51分41秒 | 日記

11日(日)。昨日の在京各紙に元ビートルズ・メンバー、ポール・マッカートニーの来日コンサートの全面広告が載りました 1966年以来48年ぶりに来日して、5月21日に思い出の日本武道館でコンサートを開くという内容です

驚くのは入場料金です。S席80,000円、A席60,000円、B席40,000円、アリーナ席100,000円で、25歳以下限定のC席1,500円もあります、という料金設定です 1,500円は1966年のビートルズ来日公演のC席と同じ料金との売り口上ですが、果たして何枚用意しているのか

 

          

 

私が行ったコンサートやオペラの中で、これまで最も高額だったのは2011年6月の米メトロポリタン歌劇場の来日公演のS席64,000円でした。この時は「ラ・ボエーム」、「ドン・カルロ」、「ルチア」の3公演を観たので192,000円かかりました

今回のポールの公演は、もちろんバンドやスタッフを引き連れて来日するのでしょうが、オペラが複数の有名歌手と豪華な舞台装置とともに公演するのに比べれば、それほど大がかりな規模ではないのではないかと推測します その割にはあまりにも高額な料金設定です。それでも行く人は行くのでしょう。私がどうしても観て聴きたいオペラに行くように

 

  閑話休題  

 

昨日、文京シビックホールで、東京フィル「響きの森クラシックシリーズ」演奏会を聴きました プログラムは①メンデルスゾーン「フィンガルの洞窟:序曲」、②リスト「ピアノ協奏曲第1番」、③ベートーヴェン「交響曲第5番ハ短調”運命”」です。②のピアノ独奏は清水和音、指揮は”炎のコバケン”こと小林研一郎です

 

          

 

オケがスタンバイし、コンマスの荒井英治の指示でチューニングが始まります 東京フィルは150人もの楽員を抱える大オーケストラなので、オケを見渡しても弦楽器の首席奏者くらいしか分かりません。150人の中から各コンサートの出演者をどのように決めるのでしょうか?この日は第2ヴァイオリンの首席・戸上眞里、ヴィオラの首席・須田祥子の姿がありませんでした もっともこれだけの人数がいれば同時刻に演奏すべきコンサートがダブっていても半分ずつに分かれて演奏することが可能です

指揮者・コバケンが使い古した指揮棒を持ってニコニコ顔で登場します 1曲目のメンデルスゾーン「フィンガルの洞窟」序曲は、作曲者が20歳の時にスコットランドのへブリディス諸島に出かけた際、当地のフィンガルの洞窟などの印象を”序曲”という名前で作曲したものです。したがって、序曲に次いで本編のオペラがある訳ではありません

この曲は、よくブラスバンドで演奏される機会が多いのですが、実際に聴いてみると、やはりフル・オーケストラで聴いた方が”音の風景”がより良く頭に浮かびます

次いで、ピアノがステージ右サイドからセンターに移動し、リスト「ピアノ協奏曲第1番」の演奏に入ります ソリストの清水和音がコバケンとともに登場します。舞台上のそこかしこに集音マイクが立てられています。どこぞの放送局が放送するのでしょうか。その答えは後で判明します

コバケンの指揮で、勇ましいテーマが奏でられ、すぐに力強いピアノが入ってきます この曲は4楽章から成りますが、切れ目なく演奏されます。したがって、全体が単一楽章のような印象を受けます

この曲はリストが自分のピアノの腕前を聴衆に見せつけるために書いたような超絶技巧の曲なので、相当難しいパッセージがハデハデに現われますが、清水和音は「向かって来るものに怖いものなし」の状態で、何の苦も無くリストの難曲を弾きこなします 名前こそ和音(かずね)で女性のような感じですが、演奏は男性的で力強いものです。弱音がキラキラと煌めいているのもこの人の特徴です 第4楽章における最低音部のずっしりと響く音の塊はこの人の最大の魅力です

数年前に1日でラフマニノフのピアノ協奏曲全曲を暗譜で弾いたように、非常にタフなピアニストです 拍手とブラボーを受け、何度もステージに呼び戻されていました 声援の中に、ブラボーのブラがない「ボー」が聴こえました。「ノー・ブラの某氏」のようです あなた、こんなところまで来ているんですか。ここはおいらの縄張りだからね。巣鴨はすぐ近くだぜ

 

          

 

休憩中にコーヒーを飲もうとロビーのカフェに行ってみたのですが、張り紙があり「店舗入れ替えのため休業中」とありました 前のカフェの経営者は採算が取れず撤退したのでしょうか。コーヒー・ブレークのつもりが、お店がブレークしちゃいましたね

休憩後は本日の「メーン・イベント」ベートーヴェンの「交響曲第5番ハ短調”運命”」です 指揮者の登場です。前半の登場時と違い、コバケンに笑顔はなく真剣な眼差しで足早に指揮台に向かいます。聴く方だって、これから”運命”をやるのにニコニコしながら指揮台に向かう指揮者は見たくもありません

第1楽章冒頭、休止符に続き”運命”のテーマが会場に鳴り渡ります この曲の冒頭に休止符がなく、最初からジャジャジャ・ジャーンと鳴ったら、多分気が抜けた音楽になるでしょうね 人間が覚悟して何かをやろうとする時は、息を止めるものです。私は中学高校と陸上競技の短距離をやっていましたが、スタートで”位置について”、”よーい”で息を止めます。そして「ドン」で一気に息を吐き出します。それと同じです ベートーヴェンが何故優れているかと言えば、曲の途中ではなく、冒頭に休止符を置いたところです 

コバケンは軽快なテンポで音楽を進めます。オケの音に負けない大きさのコバケンのうなり声が聞こえてきます この人の特徴です。第4楽章終盤で、オーボエのソロがありますが、これほど息の長いソロを聴いたことはありません。コバケンの指示によるものです

フィナーレでオケが最高潮に達して演奏が終わると、ブラボーと拍手 の嵐がステージ上に押し寄せました。コバケンはコンマスとハグ(荒井は一瞬引く)、弦の首席ひとりひとりと握手、管楽器、弦楽器の順にセクションごとに立たせて賞賛します。いつも通りに

そして、ここからがコバケンの独壇場となります。拍手を制して地声で「皆さま、今日はありがとうございました。皆さまのオーラを受けて、オケが素晴らしい演奏をすることが出来ました 今日の演奏はNHKで、番組の名前は忘れましたが、放送されるそうです それではアンコールにブラームスのハンガリー舞曲の第4番を演奏します」として、演奏に入りました

分厚い弦の音が流れてきたとき、心底驚きました ついさっきまでベートーヴェンの音だったオケが、その瞬間からブラームスの音に変貌しています 中間域を中心とする分厚い音の大波が観客席に押し寄せてきます。第1回ブタペスト国際指揮者コンクール優勝者で、ハンガリー国立交響楽団音楽総監督を務めた小林研一郎のこだわりの音に違いありません 東京フィルはこういう音も出せるのか と驚いた瞬間でした

終演後いつもの通り、コンサート・フレンドのお二人とホール近くのコーヒーショップでコーヒーを飲みながら、この日のコンサートや6日にあった震度5弱の地震の話などに花を咲かせました お二人とも80歳を超えながらもコンサート通いをされている元気なシニア・レディで、私の目標でもあります 次の7月の「響きの森」で再会することを約してお別れしました

今日は午後から1泊出張のため静岡に向かいます したがって月曜のブログは出張から帰ってきてからアップすることになります

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする