山蔵の扉が開いた
雨は降り続いている
壽山の芸が始まった
外題は「伽羅先代萩 御殿の場」
大名家の御殿で繰り広げられる女たちの駆け引き 幼い鶴千代君を守る乳人政岡
敵対する冷酷非道な八汐
陰謀の首謀者・栄御前も登場し役者は揃った
管領からの見舞いの菓子を持って八汐がやって来ます
政岡は鶴千代に手を付けさせるわけにはゆかず、さりとて管領からの下され物を断ることもできません
すると千松が突如駆け寄って菓子をほおばり、その箱を蹴飛ばすと急に苦しみ出します
やはり毒が入っていましたが、八汐は証拠隠滅のためすぐさま懐剣で千松を刺しなぶり殺し
これでもか、これでもか・・・
どう見ても左手に懐剣、右手にスマホ
千松が息絶えた後、栄御前は秘かに政岡を呼び寄せお家横領一味の連判状を渡します
母としての深い悲しみに打ちひしがれる政岡 死んだはずの千松君の表情が笑える
そして斬りかかってきた八汐を討って恨みを晴らします
山蔵での狂言はまるで芝居小屋の升席から眺める雰囲気でした
素晴らしい舞台をありがとうございました
２０２２年１０月 滋賀県米原市
江戸時代には北国街道と中山道が交わる宿場町として栄えた米原宿
昔の芝居小屋感覚で鑑賞しよう
松翁山組の外題は「男の花道」
原作は１９４１年に公開されたマキノ正博監督の映画「男の花道」
加賀屋歌右衛門役には長谷川一夫、土生玄磧は古川ロッパ
最近の若者なら・・ それって誰よ？
このお芝居は歌舞伎通でなくとも分かりやすく
コミカルなカッポレまで挿入されており楽しめる
特に「櫓のお七」の場面は見応えがあり
芝居に引き込まれてしまう
最近のテレビでは殆ど時代劇の放映は無く寂しい限りである
日本中のいたる所に芝居小屋が存在した時代
そんな古き良き時代に思いをはせながら楽しみたい
曳山上で繰り広げられる子供役者の熱演
振付は高名な市川団四郎師匠
みんな芸達者じゃのう～
２０２２年１０月 滋賀県米原市
芝居が始まってしまう・・ 急がねば！
秋を彩る米原の伝統恒例行事
「旭山組」「壽山組」「松翁山組」の3つの組が毎年順番でこども歌舞伎を執り行います
今年は三基揃い踏み
三つの組が一堂に会する滅多に無い貴重な機会です
天気予報では早朝は雨だが午後からは止むとのこと
しかし予報は見事に外れ午後になっても雨は降り続き
傘を差しながらの不自由な姿勢での鑑賞となってしまった
壱番山北町旭山組の外題は歌舞伎三大名作の一つ「仮名手本忠臣蔵 七段目 祇園一力茶屋の場」
四十余人の者どもはな 親に別れ子に離れ
一生連れ添う女房を君傾城の勤めをさするも
亡君の仇を報じたさ寝覚にも現にも 御切腹の折からを思い出しては無念の涙
五臓六腑を絞りしぞや！！
名台詞に酔いつつ
フィナーレとなりました
２０２２年１０月 滋賀県米原市
