坂田雅子監督の最新作「沈黙の春を生きて」を今日観た、深い衝撃を受けた
1975(昭和60)年の5月1日のメーデー会場は大いに沸いた。その前日の4月30日に、ベトナム解放戦線はサイゴンを陥落し、アメリカの野望を打ち砕いてベトナム戦争を勝利し終結させたからだ。
ベトナム人民支援の活動を長く続けていた労働者・市民は、そのメーデー会場でベトナム戦争の終結を喜び祝い合った。私もその輪の中にいた。
あれからもう35年以上が経過した。私はその後のベトナムに何度か行き、ハノイは私の好きな場所となっている。ベトナム戦争の足跡を辿って、クチのベトナム解放戦士たちが掘って闘ったトンネルも歩いてみたりもした。
そんなベトナム戦争を、今の若い人たちはもうほとんど知らないだろう。ホーチミンでそんな若者たちが買い物を楽しんでいる姿に出会ったことはしばしばだ。
しかし、今もベトナムやアメリカでは、ベトナム戦争の傷跡に少なくない人たちが苦しんでいる。その一つが米軍が使用した枯葉剤を浴びたアメリカ兵士やベトナムの人たちがガンなどで死に、その影響は子や孫たちに重大な障害として現れている現実がある。
そうしたベトナム戦争に従事したアメリカ兵だった夫を肝臓ガンで亡くして、それが枯葉剤が原因ではないかと考えて、夫が駐留していた米軍基地やベトナム各地を訪れた。
そうした夫への追悼と枯葉剤散布という当時のアメリカの行為を自らの手で再考察する旅を映像化したのが、坂田雅子監督作品ドキュメンタリー映画「花はどこへいった」(2007年作品)だった。
私はこの映画を「ゆふいん文化記録映画祭」で観た。私には大変なショッキングな映像だった。今もベトナム戦争は終わっていないと、深い衝撃を受けた。私はその映像が映し出す光景を忘れてはならないと、その映画のDVDも購入した。
その坂田雅子監督の最新作「沈黙の春を生きて」を今日観た。この今回の映画では、枯葉剤葉剤の刻印を背負ったベトナム・アメリカ、双方の子供たちの困難のみでなく勇気を描いている。それでも、今回の映画にも深い衝撃を受けた。ベトナム戦争とその傷跡を決して忘れてはならないし、私たちはその事実から目をそらしてはいけないと心から思った。
坂田雅子監督は、前作と同じアメリカの枯れ葉剤とそれを原因とする思い障害で苦しむ個人や家族を題材として、化学物質の恐ろしさを問題提起するとともに、イチェル・カーソンの『沈黙の春』の言葉に再び耳をかたむけることの大切さを訴えている。
こうした映画を製作する人がいること知り、「人間は信頼できる」という思いを持つ。そしてそのことは嬉しいし、とても励まされる。そしてまたこうした映画を上映してくれるシネマクレールにもいつもながらに感謝した。
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