トンネルの向こう側

暗いトンネルを彷徨い続けた結婚生活に終止符を打って8年。自由人兄ちゃんと天真爛漫あーちゃんとの暮らしを綴る日記

留守番をする子供達(嘘の鎧3)

2006-09-01 13:24:28 | 子供
私は息子が初めてお友達のカードを盗んでしまった時から
息子の持ち物のチェックを欠かさなかった

カードも何十枚もあったけれど大体持っているカードは把握していた
だから見慣れないカードがあると「これはどうしたの?」と確認した

「友達のカードを盗んだ事が他の友達に分かってしまったらその信用はなかなか取り戻せないんだよ
自分が盗ってなくても友達にお兄ちゃんが盗ったんだって疑われてしまうんだよ
そしてだれもお兄ちゃんとは遊んでくれない。
一人ぼっちになってしまうんだよ」と何度も何度も話した

その度に「俺、もう絶対しない。お友達と遊びたい。ひとりになりたくない」と泣いた

それは本当に反省して心から言っていたのだろうと思う
それでも欲望を抑えられず何度か失敗を繰り返した

私はその度に見つけた
「これはどうしたの?」
「これは見たことのないカードだよ」と・・・

息子は最初は「貰った」とか「交換した」とか言うけれど私にはそれが嘘かどうかがハッキリと分かる
だから「そんな話はお母さんには通じないよ。お母さんには嘘を見抜く神様がついているんだよ。どんな嘘もお母さんは見抜いてしまうしどんな悪い事もお母さんはちゃんと神様が教えてくれるから分かるんだよ」と言った

すると息子はたちまち涙をボロボロと流し「ごめんなさい」と謝るのだった

息子の友達の中には物を平気で盗んでいく子供も何人かいた
たまにフラッと来て帰っていく子。常習の子。
そういう子が来る時はこっちも気をつけて見ていてもそういう子達と遊んだ夜には必ず息子が「あれがない。これがない」と言い出すのだ

常習の子達ばかりが重なった時はどの子が盗っていったのかも分からない
犯人を探す事は難しかった

そんな時いつも思った
「なぜ親は気がつかないのだろう」と・・・
みんなは子供を信じきっていて持ち物のチェックをしたりしないのだろうか?

それとも「貰った」とか「交換した」と言う嘘を鵜呑みにしているのだろうか?

息子のゲームを盗んだ男の子のお母さんも全く気がつかなかったという
ゲームを盗んだ事を白状しましたと先生から連絡を貰った夜にその子とお母さんが謝りにやってきた

お母さんは「二人暮しで私も夜の9時にならないと帰らないものですから。こんな事になってしまって本当にどうしたらいいのか混乱しています。本当にすいません」と涙を流しながら謝ってくれた

その子は息子の鞄の中から息子がトイレに行っている間にゲームを抜き取ったのだという

その子にはゲーム会社に勤める父親もレアなポケモンを簡単に取れる方法を教えてくれる人もいなかったのだ

その子はその嘘を隠すためにいろんな子供のゲームからレアなポケモンを抜き取っていたのだった

その子の中で嘘は嘘ではなく、事実として存在して欲しかったのかもしれない
母親に何度も「謝りなさい」と言われてもその子は俯いたまま口を開く事はなかった

息子とも気まずくなってそれからその子がうちに来ることもなくなった
その子は隣の学校へと転校して行った

ある日隣の学校に子供が通っているママ友から電話が来た
「つい最近転校してきた子供とうちの子が仲良くなったんだけれど
なんかその子変なんだよね。あれあげる。これあげるってうちの子を呼び出しては
すっぽかしたり。ありえないような嘘をついたり・・・・。」

私の頭の中にあの子の顔が浮かんだ

それから何日かして息子がしょんぼりと帰ってきた
「どうしたの?」と聞くと
「今ね。学校帰りにあの子にあったんだ。どこ行くの?って聞いたらね
前の担任の先生に話を聞いて欲しくて学校へ行くところなんだって言ったんだ

どうして?って聞いたら今の学校でお友達が出来ないんだって
泣いてたんだ。あいつ・・・」

先日電話をくれたママ友が
「その子あんまり嘘つくからクラスでも噂になっちゃって今はあましにされてるみたいでさ。うちの子にももう遊ぶなって言ってやったさ」と言った事を思い出した

嘘をついてもみんなの心を手に入れたい
嘘で固めた鎧をいくつも重ねているあの子がとても悲しかった

学校帰りに何度か会ったあとその子は息子に
「もう友達できたよ」と言ったそうだ

ママ友に電話してそれとなく聞いてみると
「それなりに馴染んだみたいだよ。なんか嘘つくのは変わらないみたいだけど
友達を振り回すような嘘はつかなくなったらしいよ」と言った

我が家には相変わらずいろんな子供達がやってくる
とても人懐こい子供もいれば、音もなくやってきて音もなく帰っていく子もいる

どの子もみんな鍵を首からぶら下げてやってくる
「俺!兄ちゃんと10時まで留守番なんだ」という子もいれば
「私も弟と8時まで留守番です」と言う子もいる

どの子も一生懸命今ある状況を受け止めて生きている

どんなにちょっとしか遊べなくても我が家にきて時間を潰していく
息子が友達を連れて来るようになった頃、本当に面倒くさかった

帰った後はトイレも汚れ放題だし、部屋もめちゃくちゃ。
でも家に来て私がドアを開けると子供達は心底ホッとしたような顔をするのだった

いつしか私は子供達と話をする事も苦痛じゃなくなった
息子にへんな噂が流れた時それを打ち消してくれたのも我が家に来ていた
子供達だった

今日も明日も息子がこの家にいる限り友達はやってくる事だろう
息子がその出会いの中で大切な物を見つけてくれたら良いなと思う