『でもさ。一番悪いのは盗んだその女の子だよ』
でも私はお兄ちゃんが許せない。
女の子の話が出たときに入れないでね。と言ったのに、『入れてないって。』とひょうひょうと嘘をついて私が来る前にその女の子を家から出していた嘘が許せない。
お兄ちゃんは、『その友達も、女の子も、家に来る前の日に外で遊んでたんだ。だから知らない人じゃなかった』と言い張る。
家に来る前にちょっと話しただけの、良く分からない得体のしれない人を知らない人と言うんだと言ってもお兄ちゃんの中の知らない人の定義に結びつかないからどんどんパニックになっていく。
私はお兄ちゃんに『もう、人を家に連れてきません』と言わせたい。
お兄ちゃんはどこまでも『今回は知らない人じゃなかった』とそのことにこだわって会話がぐちゃぐちゃになっていく。
最後はお兄ちゃんがなんだか分からないけれど、自分が悪かったんだ。とひどく落ち込んで布団に潜って
しまった。
私ももう話す言葉が思いつかず疲れ果て、ずっと。ずっと。こういう状況から抜け出せないんだ。
何度おなじ悔しさを味わったらお兄ちゃんはわかってくれるのだろうか。
何度味わっても同じなんだ。永遠に終わらない。
じっとテーブルを見つめているとあーちゃんがポツリとつぶやいた。
『あーちゃんの、ウオークマン戻って来ないのかな。
あーちゃん、そのお姉ちゃんにお願いしてみる。大切なんです。返してくださいって!』
ふと、気がつく。。。。
あーちゃんは、大切なウオークマンを盗まれたのに一度もお兄ちゃんを責めない。
『お兄ちゃんの連れてきた友達に盗まれたんだから!返してよ』
と一言も責めていないことに。。。
あーちゃんは何も悪いことをしていないのに。
一言も責めずにただ無くなったウオークマンが返ってくるかを心配している。
『あーちゃんは、一言もお兄ちゃんを責めないんだね。お兄ちゃんの連れてきた友達のせいでなくなったのにね』
『だって、お兄ちゃんはわざとじゃないもん。間違えちゃったんだよ』
『一番悪いのは盗んだその女の子だよ』パートの友達が言った言葉が胸にささる。
なんだか泣ける。。
あれから落ち着いて話を聞けば、その連れてきた男の子も女の子も、お兄ちゃんが卒業した中学の
特学のクラスの子だと分かった。
お兄ちゃんと同じ障害がある子だと分かった。
となると、お兄ちゃんとその男の子がその女の子の家に行って、ウオークマンの事を問いただすのは
とてもまずいと感じた。
お兄ちゃんも上手く説明できないだろうし、男の子も言葉に遅れがありそうな感じだった。
お兄ちゃんは背も大きいし、声も大きい。
返してもらうために興奮して大騒ぎになりかねない。。
その男の子は夏休み後もその子と同じクラスで過ごす事になる、どんな風にクラス中に伝わるか分からない。
お兄ちゃんの担任だった先生はまだ中学に在籍している。
その先生にとりあえずあった事を伝えなければいけない気がした。
こういう場合はいつもそうだけど。。。
盗んだところを見たわけじゃない。
お兄ちゃんの言葉しか聞いていない。
証拠がない。
だから結局泣き寝入りするしかない。
大抵はその後もそういう子は盗みを繰り返してボロがでて発覚するのだけれど、大抵は処分されているか、壊されていて戻ってこない。
お兄ちゃんにはそれらの理由を話して、『その男の子に会ったら、女の子が盗んだかも知れないことを
言ってしまうかもしれないし、その男の子は誰でも好きな子を連れて誰かの家に行きたいって思っちゃうところがあるんだよ。兄ちゃんも断れないならもうしばらく会わないようにしようよ。』
『そして、残念だけどウオークマンは諦めよう。でもあーちゃんは全然悪くないのにこんな目にあって
しまったんだよ。あーちゃんが一番可哀想だよね。
お兄ちゃんもそんな盗む子だなんて知らなかったかもしれないけれど、お母さんに嘘ついて入れて
盗まれてしまった事の責任はあるでしょ。
お母さんもへそくり出すからお兄ちゃんもお金を足してあーちゃんにウオークマンを弁償しようよ。』
お兄ちゃんもこれ以上この事に混乱したくないし、正直その女の子の家に行ってその子の親が出てきたら
どうしようと不安だったのだろう。
どこかほっとした顔をして、部屋へ行きお年玉を貯金している通帳を持ってきて
『これで、買ってあげて。。』と差し出した。
そしてしばらくその後輩の男の子と、女の子を連れてきた男の子とは会わないと言った。
そして夏休みが明けたら、担任の先生にこの事を話してどうしたら良かったのかを相談してみると言った。
私も中学の先生に連絡して、女の子が簡単に高校生の男の子の家に入ってきてしまった事と
家の中の物を勝手に触って無くなってしまったことを伝えようと思う。
本当に口惜しいけれど。。。
お兄ちゃんも知らない人の意味はわからないかもしれないけれど、いつかきっと。きっと。
だって妹のお財布からお金を盗ることをやめられなかったお兄ちゃんは、今は一円も違わず
小遣い帳を合わせられるようになった。
欲しいものは相変わらず沢山あるけれど、小遣いの中でやりくりできるようになって、追加でお金を要求することもなくなった。
だからきっと。諦めない。
でも私はお兄ちゃんが許せない。
女の子の話が出たときに入れないでね。と言ったのに、『入れてないって。』とひょうひょうと嘘をついて私が来る前にその女の子を家から出していた嘘が許せない。
お兄ちゃんは、『その友達も、女の子も、家に来る前の日に外で遊んでたんだ。だから知らない人じゃなかった』と言い張る。
家に来る前にちょっと話しただけの、良く分からない得体のしれない人を知らない人と言うんだと言ってもお兄ちゃんの中の知らない人の定義に結びつかないからどんどんパニックになっていく。
私はお兄ちゃんに『もう、人を家に連れてきません』と言わせたい。
お兄ちゃんはどこまでも『今回は知らない人じゃなかった』とそのことにこだわって会話がぐちゃぐちゃになっていく。
最後はお兄ちゃんがなんだか分からないけれど、自分が悪かったんだ。とひどく落ち込んで布団に潜って
しまった。
私ももう話す言葉が思いつかず疲れ果て、ずっと。ずっと。こういう状況から抜け出せないんだ。
何度おなじ悔しさを味わったらお兄ちゃんはわかってくれるのだろうか。
何度味わっても同じなんだ。永遠に終わらない。
じっとテーブルを見つめているとあーちゃんがポツリとつぶやいた。
『あーちゃんの、ウオークマン戻って来ないのかな。
あーちゃん、そのお姉ちゃんにお願いしてみる。大切なんです。返してくださいって!』
ふと、気がつく。。。。
あーちゃんは、大切なウオークマンを盗まれたのに一度もお兄ちゃんを責めない。
『お兄ちゃんの連れてきた友達に盗まれたんだから!返してよ』
と一言も責めていないことに。。。
あーちゃんは何も悪いことをしていないのに。
一言も責めずにただ無くなったウオークマンが返ってくるかを心配している。
『あーちゃんは、一言もお兄ちゃんを責めないんだね。お兄ちゃんの連れてきた友達のせいでなくなったのにね』
『だって、お兄ちゃんはわざとじゃないもん。間違えちゃったんだよ』
『一番悪いのは盗んだその女の子だよ』パートの友達が言った言葉が胸にささる。
なんだか泣ける。。
あれから落ち着いて話を聞けば、その連れてきた男の子も女の子も、お兄ちゃんが卒業した中学の
特学のクラスの子だと分かった。
お兄ちゃんと同じ障害がある子だと分かった。
となると、お兄ちゃんとその男の子がその女の子の家に行って、ウオークマンの事を問いただすのは
とてもまずいと感じた。
お兄ちゃんも上手く説明できないだろうし、男の子も言葉に遅れがありそうな感じだった。
お兄ちゃんは背も大きいし、声も大きい。
返してもらうために興奮して大騒ぎになりかねない。。
その男の子は夏休み後もその子と同じクラスで過ごす事になる、どんな風にクラス中に伝わるか分からない。
お兄ちゃんの担任だった先生はまだ中学に在籍している。
その先生にとりあえずあった事を伝えなければいけない気がした。
こういう場合はいつもそうだけど。。。
盗んだところを見たわけじゃない。
お兄ちゃんの言葉しか聞いていない。
証拠がない。
だから結局泣き寝入りするしかない。
大抵はその後もそういう子は盗みを繰り返してボロがでて発覚するのだけれど、大抵は処分されているか、壊されていて戻ってこない。
お兄ちゃんにはそれらの理由を話して、『その男の子に会ったら、女の子が盗んだかも知れないことを
言ってしまうかもしれないし、その男の子は誰でも好きな子を連れて誰かの家に行きたいって思っちゃうところがあるんだよ。兄ちゃんも断れないならもうしばらく会わないようにしようよ。』
『そして、残念だけどウオークマンは諦めよう。でもあーちゃんは全然悪くないのにこんな目にあって
しまったんだよ。あーちゃんが一番可哀想だよね。
お兄ちゃんもそんな盗む子だなんて知らなかったかもしれないけれど、お母さんに嘘ついて入れて
盗まれてしまった事の責任はあるでしょ。
お母さんもへそくり出すからお兄ちゃんもお金を足してあーちゃんにウオークマンを弁償しようよ。』
お兄ちゃんもこれ以上この事に混乱したくないし、正直その女の子の家に行ってその子の親が出てきたら
どうしようと不安だったのだろう。
どこかほっとした顔をして、部屋へ行きお年玉を貯金している通帳を持ってきて
『これで、買ってあげて。。』と差し出した。
そしてしばらくその後輩の男の子と、女の子を連れてきた男の子とは会わないと言った。
そして夏休みが明けたら、担任の先生にこの事を話してどうしたら良かったのかを相談してみると言った。
私も中学の先生に連絡して、女の子が簡単に高校生の男の子の家に入ってきてしまった事と
家の中の物を勝手に触って無くなってしまったことを伝えようと思う。
本当に口惜しいけれど。。。
お兄ちゃんも知らない人の意味はわからないかもしれないけれど、いつかきっと。きっと。
だって妹のお財布からお金を盗ることをやめられなかったお兄ちゃんは、今は一円も違わず
小遣い帳を合わせられるようになった。
欲しいものは相変わらず沢山あるけれど、小遣いの中でやりくりできるようになって、追加でお金を要求することもなくなった。
だからきっと。諦めない。