母が退院してしばらく経った頃から、部活から帰ると祖母が私を待ちかねていたように家事を言いつけるようになった
「ちっこ。天井を拭いてくれないか?」
「ちっこ。畑の雑草が」
「ちっこ。掃除機をかけて欲しい」
私が頼まれた事をやっていると
「ママさんがやってくれなくなったから家の中が汚くてしょうがない。
ママさんは掃除が嫌いで困ったもんだ」と言った
祖母は半年に一度は天井や壁、床全てを拭くようにいつも母に命令していた
母は疲れた体に鞭打って「やらないとやるまで煩く言われるのが堪らないから」と
やっていた事を止めたのだった
祖母は掃除機も柄の部分で床に這いつくばって吸い取らないと綺麗になった気がしないと言った
母はガーガーと普通にかけて終わるようになった
高校を卒業してOLになった頃。
朝、目が覚めるとベットの側に母が仁王立ちして私を見下ろしていた
ビックリして「何?」と聞くと
「殴られた」と子供のようにほっぺたを膨らまして怒った顔をした
「何で?」と聞くと母は質問には答えず
「絶対許さない」と言ったままドスドスと音を立てて部屋を出て行った
何だったんだろうと思いながらも一週間が過ぎた頃、朝、出勤の準備をしていると
父が起きてきて「駅まで送ってやる」と言った
珍しい事もあるもんだと思って車に乗ると父が
「いやー。母さんにも困ったもんだ」と言い出した
「何が?」と聞くと
「母さんと喧嘩してもう一週間も経つんだが全く口を利こうとしないんだ。
返事すらしない」と言った
今まで父が無視する事はあっても母は無視するなんてありえない話だった
「母さん怒ってたよ」とあの朝の事を言うと
「だってな!」といきなり父が話し出した
あの朝の前の晩、父と祖母は家事がおろそかになっている事を責めたらしい
「ただ。ちょっと最近掃除もしてないし、畑も全く手伝わないしと祖母さんと言っただけなんだ」と父は言った
祖母と父とで何時間も母をグチグチと責めている姿が浮かんだ
すると突然、それまで黙って聞いていた母が座っていた椅子に立てひざを立てて
「テメーラ!グダグダ、グダグダ同じ話ばっかりうるせーんだ!!
文句があるなら自分でやれば良いだろう!!雁首そろえりゃあれしろ!これしろ!
ってテメーラ!あたしを殺すきか!。ふざけんな!」と怒鳴ったのだと言う
「俺もカーッとなって思わず叩いてしまったんだ」
「ふーん。かなり怒ってたよ。」
「いやー。参った」本当に困っているようだった
「あっ。此処で良いから」と言って私はさっさと降りた
地下鉄に乗ってから私はこみ上げる笑いを抑える事ができなかった
それから私が結婚して家を出ると母は、私の使っていた部屋を早々に片付け
自分の部屋にしてしまった
姉の長男がゲームに懲りだすと自分もやると言ってゲーム機を買ってきた
母は初めてやるロールプレーイングのゲームに嵌っていった
祖母と父の食事の支度を終えて自分も夕飯を食べ終えると、すぐ2階の部屋に篭ってゲームをやるようになった
ゲームはその辺の中学生より上達して、ゲームショップで高校生と裏技の話をする用にまでなった
母はゲームをして、私の使っていたテレビでサスペンスを見て、好きな時間に寝るようになった
もう父の食事が終わるのを待つ事はなくなった
祖母も父も私が実家に帰る度に「食事が終わると逃げるように二階に篭って感じ悪い」と悪口を言っていたがそのうち何も言わなくなった
祖母が死んで父は1人で晩酌をするようになった
母は酒のつまみを置くとそのまま部屋に篭る
母は猫を飼い始めた
父は動物が嫌いだった
でも母はお構いなしに連れてきて飼い始めた
その猫が母にしか懐かない
父が少しでも母と話をしていると通りすがりに父の足を引っ掻いて行く
「いてー!」と父が悲鳴を上げると母が
「まあ。本当に父さんには懐かないねぇ。さあさあ猫ちゃん寝ようね」と2階に抱いていく
父は「本当に馬鹿猫だ!」と叫んでも母はもう2階に上がっていない
母は「明日出よう。明日別れようって思っているうちに此処まで来てしまったねぇ」と言った
そして「今が1番幸せだねぇ」と目を細めて猫をなでた
母の膝の上で丸くなった猫ちゃんがいつまでも幸せそうな寝息を立てていた
今日も聞いてくれてありがとう
「ちっこ。天井を拭いてくれないか?」
「ちっこ。畑の雑草が」
「ちっこ。掃除機をかけて欲しい」
私が頼まれた事をやっていると
「ママさんがやってくれなくなったから家の中が汚くてしょうがない。
ママさんは掃除が嫌いで困ったもんだ」と言った
祖母は半年に一度は天井や壁、床全てを拭くようにいつも母に命令していた
母は疲れた体に鞭打って「やらないとやるまで煩く言われるのが堪らないから」と
やっていた事を止めたのだった
祖母は掃除機も柄の部分で床に這いつくばって吸い取らないと綺麗になった気がしないと言った
母はガーガーと普通にかけて終わるようになった
高校を卒業してOLになった頃。
朝、目が覚めるとベットの側に母が仁王立ちして私を見下ろしていた
ビックリして「何?」と聞くと
「殴られた」と子供のようにほっぺたを膨らまして怒った顔をした
「何で?」と聞くと母は質問には答えず
「絶対許さない」と言ったままドスドスと音を立てて部屋を出て行った
何だったんだろうと思いながらも一週間が過ぎた頃、朝、出勤の準備をしていると
父が起きてきて「駅まで送ってやる」と言った
珍しい事もあるもんだと思って車に乗ると父が
「いやー。母さんにも困ったもんだ」と言い出した
「何が?」と聞くと
「母さんと喧嘩してもう一週間も経つんだが全く口を利こうとしないんだ。
返事すらしない」と言った
今まで父が無視する事はあっても母は無視するなんてありえない話だった
「母さん怒ってたよ」とあの朝の事を言うと
「だってな!」といきなり父が話し出した
あの朝の前の晩、父と祖母は家事がおろそかになっている事を責めたらしい
「ただ。ちょっと最近掃除もしてないし、畑も全く手伝わないしと祖母さんと言っただけなんだ」と父は言った
祖母と父とで何時間も母をグチグチと責めている姿が浮かんだ
すると突然、それまで黙って聞いていた母が座っていた椅子に立てひざを立てて
「テメーラ!グダグダ、グダグダ同じ話ばっかりうるせーんだ!!
文句があるなら自分でやれば良いだろう!!雁首そろえりゃあれしろ!これしろ!
ってテメーラ!あたしを殺すきか!。ふざけんな!」と怒鳴ったのだと言う
「俺もカーッとなって思わず叩いてしまったんだ」
「ふーん。かなり怒ってたよ。」
「いやー。参った」本当に困っているようだった
「あっ。此処で良いから」と言って私はさっさと降りた
地下鉄に乗ってから私はこみ上げる笑いを抑える事ができなかった
それから私が結婚して家を出ると母は、私の使っていた部屋を早々に片付け
自分の部屋にしてしまった
姉の長男がゲームに懲りだすと自分もやると言ってゲーム機を買ってきた
母は初めてやるロールプレーイングのゲームに嵌っていった
祖母と父の食事の支度を終えて自分も夕飯を食べ終えると、すぐ2階の部屋に篭ってゲームをやるようになった
ゲームはその辺の中学生より上達して、ゲームショップで高校生と裏技の話をする用にまでなった
母はゲームをして、私の使っていたテレビでサスペンスを見て、好きな時間に寝るようになった
もう父の食事が終わるのを待つ事はなくなった
祖母も父も私が実家に帰る度に「食事が終わると逃げるように二階に篭って感じ悪い」と悪口を言っていたがそのうち何も言わなくなった
祖母が死んで父は1人で晩酌をするようになった
母は酒のつまみを置くとそのまま部屋に篭る
母は猫を飼い始めた
父は動物が嫌いだった
でも母はお構いなしに連れてきて飼い始めた
その猫が母にしか懐かない
父が少しでも母と話をしていると通りすがりに父の足を引っ掻いて行く
「いてー!」と父が悲鳴を上げると母が
「まあ。本当に父さんには懐かないねぇ。さあさあ猫ちゃん寝ようね」と2階に抱いていく
父は「本当に馬鹿猫だ!」と叫んでも母はもう2階に上がっていない
母は「明日出よう。明日別れようって思っているうちに此処まで来てしまったねぇ」と言った
そして「今が1番幸せだねぇ」と目を細めて猫をなでた
母の膝の上で丸くなった猫ちゃんがいつまでも幸せそうな寝息を立てていた
今日も聞いてくれてありがとう