7月の映画鑑賞二本目である。
コロナ禍の’20年、首相官邸で発生したクラスターにより総理大臣が急死。AI・ホログラムにより復活した歴史上の偉人たちによる内閣が1年を期限に作られ、国家を運営することになる。総理大臣・徳川家康(野村萬斎)、内閣官房長官・坂本龍馬(赤楚衛二)、経済産業大臣・織田信長(GACKT)、財務大臣・豊臣秀吉(竹中直人)という面々が政権を担うというものがたりである。
この内閣のスクープを狙う若手テレビ局員が西村理沙(浜辺美波)である。
+++++ SF作品として +++++
映画で死者の復活というと...
『ユニバーサル・ソルジャー』(Universal Soldier,1992年)
『シックス・デイ』(The 6th Day,’00年)
『レプリカズ』(Replicas,’18年)
あげていけばきりがない。でも、死亡して《復活》をした者たちは、あくまでも異形の存在、敵役である。本作の偉人たちは違うのだ。
本作の偉人たちは実体ががない。
上の3作だけではないが、通常復活した死者は、物理的(さわれる)存在である。本作の偉人たちは立体映像なのである。(3D)ホログラムといえば、『ブレードランナー 2049』(’18年)のJoiだが、コンセプトは似ている。議員バッチが超高性能AIによる再生疑似人格&サウンド機能付きホログラムのジェネレーター(端末)的描き方。(下線部は僕の想像。劇中細かい説明はない。)
家康、綱吉、吉宗の三人は徳川幕府の終焉について、坂本龍馬を恨んでいない。そのようにAIがプログラムされている。
昔読んだSFに「宇宙船∞号の冒険」がある。川又千秋の1985年の作品だが、同作にも死者の再生(フォームバック)が描かれている。死者の記憶を、有機素材から作られた人間の身体に刷り込むことで、再生するというもの。再生された者の心を、死の記憶・恐怖から防御するヒプノメカニズムという設定がある。何か似ていると思う。
+++++ 歴史作品として +++++
徳川家康・綱吉・吉宗が内閣にいる。
官房長官は徳川幕府の終焉にかかわりがあるとされる坂本龍馬。
徳川家康の前に天下人であった秀吉、信長が重要閣僚。
聖徳太子、足利義満、紫式部もいる。
ALL STARSである。まちがいなく面白いと思う。
いわゆる戦国時代の三英傑。信長-秀吉-家康のふるまい。
二百年以上の泰平の世の礎を築いた家康が総理大臣。家康総理の存在を信長、秀吉がどう感じ、どんな態度を取るか。鑑賞前からどうなるかと考えていた。史実をどこまでフィクションにできるか。ものがたりが進むにつれて、そう来たかと感じた。
+++++ エンタメとして +++++
徳川家康役野村萬斎
10年以上前『のぼうの城』を見たときにも感じたことだが、この人はやはり普通の役者さんではない。立ち居振る舞いが、ザ・狂言師だ。
豊臣秀吉役竹中直人
この人は何回秀吉を演じているのだろう。NHK大河『秀吉』(1996年)『軍師官兵衛』(’14年)の他にも秀吉を演じている。本作が6回目とのこと。もはやはまり役である。故津川雅彦さんが、家康を5回演じているがそれに匹敵する。
織田信長役GACKT
『風林火山』(’07年)の上杉謙信よりもさらにいい。
土方歳三役山本耕史
土方歳三を演じた人は山本耕史以外にもいる。でも、彼がスクリーンに登場すると、土方はこの人しかいない気がする。
【小ネタ】
ものがたりの何カ所かで『大江戸捜査網』のメインテーマが用いられている。最初に聞いたとき、転けそうになった。
信長の最後のシーン、能舞台は武蔵一宮大宮氷川神社のものだ。
なお、本作の武内英樹過去フジテレビ社員時代を含め、以下の作品を監督として手掛けている。
『テルマエ・ロマエ』(’12年)
『テルマエ・ロマエⅡ』(’14年)
『翔んで埼玉』(’19年)
『翔んで埼玉 〜琵琶湖より愛をこめて〜』(’23年)
全身全霊をかけて、ふざけることに邁進する、見る人をentertainすることを目指す監督なのかな。次作は『はたらく細胞』が’24年12月公開である。
+++++ 浜辺美波映画 +++++
『やがて海へと届く』(’22年)
『シン・仮面ライダー』『ゴジラ-1.0』(’23年)
『サイレントラブ』(’24年)
ここ1,2年の活躍はすごい。
龍馬のbuddyぶりを見るのは楽しい。
2時間まちがいなく楽しめる作品である。
期待と予想のはるかに超えた作品だ。
(文中一部敬称略)