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ダコタラプトル




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ダコタラプトルは、白亜紀後期マーストリヒト期(ヘル・クリーク層Hell Creek Formation)に米国サウスダコタ州に生息した大型のドロマエオサウルス類で、2015年に記載された。ほとんどが小型ないし中型のドロマエオサウルス類の中で、例外的に大型化した種類の一つであり、北アメリカではデイノニクス、ユタラプトルに続いて3番目に発見された大型ドロマエオサウルス類となった。また世界的に見ても最も生息年代の新しいドロマエオサウルス類であるという。

ホロタイプPBMNH.P.10.113.Tは、主に四肢の骨を含む成体の部分骨格で、頭骨はない。見つかっているのは1個の胴椎の椎体、10個の尾椎、叉骨、左右の上腕骨、左右の撓骨、左右の尺骨、右の中手骨IとII、3つの断片的な左の指骨、右の大腿骨、左右の脛骨、左の距骨と踵骨、左の中足骨II-IV、右の中足骨IV、右足の第II指と第III指の末節骨である。
 参照標本として、より華奢な個体の右の脛骨、左の距骨と踵骨、叉骨、分離した歯などがある。

ダコタラプトルの特徴としては、1)例外的に大型のドロマエオサウルス類で、推定全長5.5 mに達する、2)足の第III指の末節骨の屈筋結節flexor tubercleが縮小している、3)足の第III指の末節骨の外側溝が、遠位側半分にわたって完全に閉じて骨質のチューブになっている、4)足の第II指と第III指の末節骨の腹側に、鋭いキールがある、5)fibular crestが長く、細く、その高さが長さの9%以下である、6)fibular crestの近位端がフック状である、などがある。(注:2)と3)については、論文のDiagnosisには第IV指と書いてあるが、誤植か直し忘れと思われる。本文を読むと第III指であるとわかる。Wikipedia英語版に第III指とあるのは正しい。)


左の尺骨は長さ36 cmで、よく保存されている。(尺骨+上腕骨)/大腿骨の比率は1.22で、ドロマエオサウルスやデイノニクスと近く、バンビラプトルほど大きくない。尺骨は長く、断面が円形で、他の多くのドロマエオサウルス類(ユタラプトルとアキロバトルを除いて)よりもがっしりしている。近位の関節面は破損しているが、それ以外の部分はデイノニクスやドロマエオサウルスと形態学的に似ている。尺骨は自然にカーブしているが、これはより直線的なバンビラプトルとは異なりデイノニクスと似ている。
 尺骨の縁には10個の楕円形の隆起が並んでいる。これらの等間隔に並んだ突起は、羽軸こぶquill knobs(あるいは尺骨乳頭ulnar papilli)と考えられる。これらの間隔から、あと5個の羽軸こぶがあったと考えられ、ダコタラプトルの尺骨には全部で15本の風切羽があったと思われる。これはアルカエオプテリクスの12本、ヴェロキラプトルの14本、ミクロラプトルの18本と対応する。

ダコタラプトルの後肢のプロポーションは、同じくらい大型のユタラプトルのがっしりした後肢とは似ておらず、より小さいデイノニクスと似ている。つまり大型にもかかわらず、下肢が細長く疾走に適している。
 脛骨は大きいが細長い骨で、ずっと太いユタラプトルの脛骨とは似ておらず、より小型のドロマエオサウルス類の脛骨と似ている。脛骨の長さは67.3 cmで、これまでに知られているドロマエオサウルス類の中で最も長い。ダコタラプトルの脛骨/大腿骨の比率は1.21で、ユタラプトルの1.00よりも大きくデイノニクスの1.10 に近い。(ドロマエオサウルスは1.37、バンビラプトルは1.39である。)

足の第II指の末節骨は完全に保存されており、ドロマエオサウルス類に特徴的な、典型的な鎌状のカギ爪である。この末節骨は、腹側の関節面から先端まで直線的に測ると16 cm、背側の曲がりに沿って測ると24 cmの長さである。この末節骨は大腿骨の長さの約29%あり、デイノニクスの23%よりも大きい。ダコタラプトルのカギ爪は、がっしりしていてユタラプトルと似ており、強く湾曲したデイノニクスのカギ爪とは異なっている。屈筋結節はユタラプトルと同様にがっしりとして顕著であり、関節面の腹側から下に張り出している。
 足の第III指の末節骨もほとんど完全に保存されている。直線的に測ると7 cm、曲がりに沿って測ると9 cmである。末節骨の遠位部の断面は涙形teardrop-shapedで、腹側に鋭いキールがある。屈筋結節はほとんどないくらいに縮小している。外側溝は、遠位側で閉じて骨質のチューブになっている。この第III指の末節骨は、他のドロマエオサウルス類のものとは形がかなり異なるが、病理的な特徴ということはないだろうか。1個体の右側しかないのが残念である。せめて左右そろっていればもう少し確実なのだろう。

ダコタラプトルの歯は、強く側扁し、中程度ないし強く後方にカーブし、鋭く尖り、後縁の鋸歯が大きいという、一般的なドロマエオサウルス類の歯の形態をしている。ダコタラプトルの歯を他のドロマエオサウルス類の歯と定量形態学的に比較してみると、歯の形のプロポーションは他のドロマエオサウルス類と同様であったが、絶対的なサイズは群を抜いて大きいことがわかった。またダコタラプトルの鋸歯の密度は、ドロマエオサウルスとデイノニクスに最も近いことがわかった。歯の大きさ(歯冠の高さ)に対して鋸歯の密度をプロットしたグラフを描くと、ダコタラプトルはユニークな位置にくる。ダコタラプトルの歯冠の高さはティラノサウルスの集団の下端と重なるが、鋸歯の密度はドロマエオサウルスやデイノニクスと同様に大きく、ティラノサウルスとは全く重ならない。ダコタラプトルの値は他のどの獣脚類とも重ならないので、確実に見分けることができるという。

著者らの系統解析の結果では、ダコタラプトルはドロマエオサウルスと最も近縁で、次いでユタラプトル、アキロバトルと近縁な位置にきた。デイノニクスはさらに外側にきている。
 これまでヘル・クリーク層の肉食恐竜といえば、大型のティラノサウルス類と小型のマニラプトル類に2分され、中間的なサイズの捕食者は知られていなかった。かなり大型で翼をもつダコタラプトルの発見によって、ヘル・クリーク層の動物相に対する我々のイメージは大きく変わったとしている。ダコタラプトルはおそらく、小型のマニラプトル類の獲物よりは大きく、大型のティラノサウルス類の獲物よりは小さい動物を捕食したと考えられる。ドロマエオサウルス類が群れで狩りをした可能性も考えると、ダコタラプトルが実際に小型のティラノサウルス類、つまりティラノサウルスの亜成体やナノティランヌスと獲物をめぐって競合する場面もあったかもしれない、と述べている。

ドロマエオサウルス類であるダコタラプトルが羽毛をもっていたことは十分予想されることであるが、このような大型のドロマエオサウルス類の尺骨に羽軸こぶが見つかったのは初めてであり、風切羽からなる翼をもっていたことがわかる。これはヴェロキラプトルでいわれているように、飛行のための翼を発達させた祖先の系統から受け継いだものである可能性が最も高いとしている。ダコタラプトルの行動・生態上の翼の役割としては、抱卵、求愛行動、なわばり行動などが考えられる。

Wikipedia等にも詳しく書かれているが、これはラプトル好きの人にはたまらない、エキサイティングな発見でしょう。大型で翼をもち、後肢が長く、カギ爪も大きいということで、白亜紀末の生態系を描くCG映像などでは活躍しそうである。

参考文献
DePalma, Robert A., Burnham, David A., Martin, Larry D., Larson, Peter L., Bakker, Robert T. (2015). The First Giant Raptor (Theropoda: Dromaeosauridae) from the Hell Creek Formation. Paleontological Contributions (14).
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