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「最新版 恐竜の世界 Q&A」




「最新版 恐竜の世界 Q&A」(小林快次監修、講談社)

恐竜本の中でも手軽で読みやすく、その割にレベルが高いという点でおすすめの一冊。本当に最新版で、最近報告された新種などを中心として収録している。一問一答のクイズ形式なので、どこでも好きなページから読み始められ、待ち時間にも気軽に読めるのが良い。ただ本の体裁については、横書きの文章が縦になっているのはやはり読みにくく、手と首が疲れる。

私は知識が偏っているので、勉強になると思って読んだら実際にためになった。メキシコのコアフイラケラトプスは正確な綴りを知らなかったが、名前は一応見たことがあった。エオトリケラトプスは知らなかった。

活字が大きく、ふりがなが振ってあり、「わかるかな?」などの文体からも子ども向けのはずだが、それにしてはやや難しい問題もある。確かに新種の恐竜の名前を答える問題などは、吸収力が旺盛な子どもの方が得意なのだろう。また、簡単な問題は簡単である。

難しい理由のひとつは、発見(記載)の年号かなと思われた。「2009年にアジアで発見された○○の仲間」という具合に、記載年をヒントにしている問題があるが、歴史の問題のように記載年を憶えることを前提にするのは厳しいのではないか。皆さん記載年なんて意識してますか?逆に考えると、この本を繰り返し愛読している子どもは、新種の恐竜の記載年も憶えてしまうことになる。なんて恐ろしいことだろう。


以下、気になった点をメモする。

Q01:これまで知られている中で最も原始的な恐竜は
 従来はエオラプトルから始まるところ、ここではエオラプトルとパンファギアは原始的な竜脚形類として、答えから除外してある。そして「この問題では、竜盤類が獣脚類と竜脚形類に分かれる前の種類を答えよう」とわざわざ書いてある。ところが、答えはヘレラサウルスやエオドロマエウスで、しかもイラストの説明にはヘレラサウルスもエオドロマエウスも獣脚類と書いてある。これでは整合性がないというか、子どもたちが混乱するのではないか。最新の知見を盛り込もうとしたのだろうが、どうもよろしくない。

Q03の答えA03の中でティラノサウルスの説明文に「ノコギリのようなギザギザのついた円錐形の歯(鋸歯)」
Q35でマシアカサウルスについて「奥歯は‥‥ギザギザのある鋸歯だったけれど、」とある。
 ここの読者には説明するまでもないと思うが、鋸歯とは「ノコギリの歯のような小さなギザギザ」のことであって、「ギザギザのついた歯」全体のことではない。「鋸歯のある歯」が正しい表現で、植物の葉の縁にあるギザギザも鋸歯という。葉に鋸歯があったり、歯に鋸歯があったりするわけである。
 誤用している人がいるのかと思って「鋸歯 肉食」で検索してみると、博物館などのちゃんとした解説では当然正しく使っていて、一部ネットメディアの記者やモンスター系のゲームをやる人が、誤用あるいは別の意味で使っている。(正しい使用例として、過去の小林先生の文章が出てきた。)


Q37:クリプトプスが「中国とニジェールで見つかった」とある。中国でアベリサウルス類の化石が発見され、しかもニジェールのクリプトプスと同属と同定されたということだろうか。これは最新情報なのか、私は知らないので知りたいが。また、眼窩の構造が云々とあるが、このサイトのクリプトプスの記事に書いたように、ニジェールのクリプトプスは頭骨のうち上顎骨しか見つかっていない。中国産?の頭骨は保存が良いのだろうか。


哺乳類ではないのに、「肉食獣」を使うのは不適切である。「恐るべき肉食獣だった」とか、鳥に近いマハカラを「小型の肉食獣」と書いてあるのは非常に違和感がある。肉食動物とか捕食者とすれば済むところである。これはもう少し言葉使いに気を配るべきである。

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