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tetujin's blog

映画の「ネタバレの場合があります。健康のため、読み過ぎにご注意ください。」

世界でいちばん不運で幸せな私 Jeux D'enfants

2008-01-10 20:22:55 | cinema

Games Of children Love Me If You Dare Better than life

もしも、恋愛小説で読者があっと驚くような「大どんでん返し」のストーリーを書くとすれば・・・・・・。まさに、この映画はそれだ。というような書き出しでこの映画のことを書いてみようと思ったが、念のためにフランス語の原題「Jeux D'enfants」を英語に訳してみたら、案の定
「Games Of children:こどもたちのゲーム」。つまり、この映画はラブストーリーではない。だから、流行の韓国映画の延長でこのフランス映画を観ると、だまされたと思ってしまうのかもしれない。なんで2人は ま じ め に 人 生 を や ら な い ん だ と。
でも、ファンタジーとしてこの映画を見れば、心に残るシーンがたくさんある。ちなみに、この映画のInternational: English titleは”Love Me If You Dare:勇気があるなら愛してよ”、フランスのworking titleは ”Mieux que la vie(Better than life):人生よりももっと素晴らしいもの”。・・・・・・本当に微妙なタイトルだ。
 
きれいなお菓子の缶は、男の子の宝物。
「こんなに綺麗な缶を見たことがある?だから、あげる」
ガンに侵されて余命いくばくもない母親は、幼い息子の気持ちだけ受け取る。このお菓子の缶、男の子にとってはすごく大事な宝物なのだ。その宝物の缶をいじめられていたポーランド移民の少女ソフィーにあげる。
「これ、あげるよ。でも時々返してね。」というジュリアン。
「私に勝ったらね。」と返すソフィー。そこから二人のゲームは始まりまる。母親の死を乗り越えるため、父親はジュリアンの唯一の話し相手のソフィーと共に暮らさせることにする・・・・・・(設定が現実離れしているが)。
2人のゲームは、年齢を重ねるごとに命を危険にさらすほど過激なものとなっていく。突然、彼女にあっさりプロポーズ。しかも映画の中ほどで。あれ?映画が終わっちまうじゃまいか?と思っていると、実は他の女性との結婚式への招待だったりする。結婚式の誓いの場面で映画”卒業”で見たダスティホフマンばりのパフォーマンスを演じたかと思えば、迫り来る列車の前に目隠しをして相手を立たせたり。本当に理解し難いゲームに2人は興じていく。

こんな超過激なシーン。1971年にアメリカで製作された映画「時計仕掛けのオレンジ」を見た時の衝撃を思い出した。過激な暴力描写などショッキングな場面は最近の映画では珍しくもなくなってしまったが、当時は現実世界とのギャップがあまりにも大きすぎるうえに、一人残らず徹底的に利己的な行動をとる主人公たちの行動に度肝を抜かれる思いがした。このような社会や体制に対する反抗的な姿勢、怒りをあらわすファッションは1970年代のロンドン・パンクがその源流となっていて、当時の保守的な人たちからは全く理解されなかったのだが、この映画もそれに似ている。あの頃のパンク・ファッションは、今日においては誰でもが楽しむ普通のファッションになってしまっているのだが。
命がけの狂おしい愛を描いた過激な描写のこの映画も、年月を経れば見慣れた描写になっていくのであろう。人間というものは、より強い刺激を求めがちで、しかも、たやすく刺激になれてしまうものだ。そういう意味において、この映画はこれまでの恋愛映画とは一線を画したということができよう。だからあえて、今、この映画を無理に理解しようとはせずす、時がそれを可能にしてくれるのを待つといいのかもしれない。
とは言え、2重になったラスト・シーンにはヤン・サミュエル監督の救いが託されている。2人の愛はコンクリートに固められて永遠に続くことになる。実は、大人になってからのあの過激なゲームは、実際には想像上のものでしかなかったことを暗示しつつ・・・・・・。

Jeux d'enfants[How Did I fall in Love with you]