5月。本格的な夏の訪れはもうすぐそこまで来ている。5月晴れの陽に照らされて、色んな花が咲き揃い蝶や蜜蜂や昆虫達がせっせと蜜を稼ぐ。自然の営みが微笑みをもたらしてくれる季節だ。
我が家のラベンダー、初夏の日差しの中で、幻想的な紫色の花穂を林立させていて、よく蝶が集まってくる。イギリスにラベンダーを伝えたのはローマ人だ。 16世紀頃からイングリッシュ・ラベンダーの栽培が行われ、それ以来、イギリスでは盛んにラベンダーの栽培が行われるようになったらしい。
美しい風景を背景に、ふたりの老姉妹の人生を描いた「ラヴェンダーの咲く庭で」の舞台となるのは、1930年代のイギリスのコーンウォール地方で、ある70代の女性が孫の年齢ほどの青年に恋をする話。出会いはラベンダーの咲く頃。いい年をして、となじる姉に、「私は恋愛も結婚もできなかった(戦争のために)」と言い返す。そんな時、青年との別れは突然訪る。青年の旅立ちを、苦しみながらも受け入れる老姉妹。短いけれど夢のようなひとときを過した2人は、冬が訪れる頃、青年の人生から立ち去ってゆく。
ラベンダー(英:Lavender)はシソ科の背丈の低い常緑樹であり、ハーブ、アロマセラピー、観賞用にされる。春に紫や白、ピンク色の花を咲かせる。紫色の花がもっともポピュラーであり、ラベンダー色とは薄紫色を意味する。原産は地中海沿岸といわれる。ラベンダーの語源はラテン語の「ラヴァレ(洗う)」からきており、古代ローマ人がラベンダーを入浴の際に使用していたことに由来する。
ラベンダーオイルは、手間ひまかけて約1年育てられたラベンダー150kgからほんの1Kgの精油しかとれないらしい。ラベンダーには墨汁のような香りを持つ「ボルネオール」という成分が含まれている。
映画『時をかける少女』(筒井康隆原作)で、西暦2660年の未来からケン・ソゴルがやってくる。ラベンダーの香りを利用して人間のタイム・リープ能力を引き出す薬品の実験中に、誤ってこの時代にやってきたのだ。この香り。今は亡き父を思い出す。父が使っていた整髪料が、ヒマシ油と蜜蝋で出来たポマードで香りはラベンダーだった。優しかった父の思い出につながるこの香りが今でも好きだ。
ラベンダーの香りが、においのきつかったポマードを連想させるため、不快に思う人も多いようだ。「ラヴェンダーの咲く庭で」も、同様に老人の恋を綴っており、こちらも評価が2分する。でも、年齢がどうであれ、別れは必ずやって来る。だれにでも心の痛手は訪れるのが宿命だ。