彦四郎の中国生活

中国滞在記

2020+1"東京オリンピック"が始まった➊—光を求めて幕が上がる―その開会式は‥①

2021-07-30 08:24:26 | 滞在記

 7月21日(水)よりサッカーやソフトボールの予選リーグの試合が始まった東京オリンピック。ソフトボールも男子サッカーも好発進、女子サッカーの緒戦は引き分けた。この3つの試合をテレビで観戦していて、ほんとうに久しぶりに胸が少し熱くもなった。7月23日(金)の夜には開会式が行われた。そして、今日7月30日(金)で10日目となる。8月8日(日)の閉会式まであと残すところ10日間。

 6月上旬では、この夏のオリンピック開催についての世論調査は、「①今年夏の開催に賛成53%、②開催に反対27%、③再延期に賛成20%」と、5月上旬の世論調査に比べて①が②や③の合計を少し上回り始めていた。私は③に賛成だったが、6月中旬~下旬に入り「開催の流れ」となった時点で、「もう、開催することが決定なら、それなりの成功をしてほしい」と願ってきている。

 開会前日、7月20日の東京の新型コロナ新規感染者数は1832人。その多くをデルタ株(インド型)感染が占めていた。7月22日付朝日新聞には、「8月上旬に第3波越え 東京の感染 週平均2600人予想」の見出し記事が掲載されていた。そして、そんなコロナ第5波の状況下、"光を求めて"東京オリンピックの幕が上がった。

 開会式はこの1年間、開会式の内容の企画・立案、準備を巡ってその中心となる演出組織のトップが2〜3度にわたって変わるなどの混乱を呈した。(野村萬斎・MIKIKOの辞任➡佐々木宏[電通]・小山田圭吾・小林賢太郎の辞任)  この結果、7月23日の開会式では、この演出チームの中心が誰なのかわからないという式典となった。このためか、開会式の内容は、ストリー・テーマ性がかなり欠けるものとなっていた。

 思い出せば、2008年の北京オリンピックでは、開会式・閉会式の演出の中心は張芸謀(チャン・イーモウ)監督だった。[映画監督として数々の名作を創り出した]  そして、開会式では中国という国の歴史パノラマをすごい演出で表現し優れた開会式となった。今回の東京オリンピックの開会式演出のチームには、張監督のような「世界史の中の日本、世界の現状、人類の今の課題、日本民族」などを哲学的にも理解の深い人物 を人選するべきだったのだが‥‥。(例えば、スタジオ・ジブリの宮崎駿監督など)   

 野村萬斎氏でもそのあたりはまだまだ小粒だが、佐々木宏氏などは開会式の演出リーダーとしてまったくふさわしくない人物だったことも判明した。(佐々木氏はCM作成では優れたものをいくつも作ってきたが‥。渡辺直美を豚にする演出案で批判を受け辞任。音楽担当の小山田氏は過去の障害者や同級生いじめが批判され辞任。ショー担当の小林氏はユダヤ人へのホロコースト揶揄問題での辞任。まあ、類は類を呼ぶというメンバー構成だったのか。) オリンピックでは最も重要な開会式の演出チームを、電通などに丸投げし、このような状況となったことは、日本オリンピック委員会の森前会長や武藤事務局長には重い責任はある。

 まあ、2000年代に入り、日本のテレビ放送などでは、吉本(お笑い)興業のタレントが跋扈(ばっこ)、低俗な番組が多くなる中、日本人の知的・文化的レベルはかなり低下した。その反映が、オリンピック開会式を巡る一連の問題点噴出とも言えるのかもしれない。

 そんな中、幕が開いた東京オリンピック開会式では、「①新型コロナパンデミック下のアスリートたちの葛藤やパンデミック下での死者への追悼、②日本の木の文化の披露とダンス、③選手入場、④ピクトグラムによる50競技の紹介、⑤日本文化の一つ歌舞伎とジャズ演奏の共演、⑥カラー木材による人類や大会エンブレム(市松模様)演出、⑦聖火、⑧ドローンによる市松模様と地球の演出」という構成だった。そのなかで、④と⑧はかなり優れた演出だと思った。

 ①は全体的にあまりにも暗すぎた。②は日本文化の本質は米作りにあるのだが、そこも含めて「日本ってどんな国なのか」がスケール的にも表現不足。(日本ってどんな国と聞かれれば、「森と水の豊かな国、日本」なのだが‥) この①と②の内容構成で、スケール的にも内容的にも、残念ながら、あまり世界の人々や日本の人々に感動を起こさなかった失敗作だったように思う。

 この開会式で最も優れていたものは、ピクトグラムによる50競技の演出だった。次々とピクトグラムによる各種競技の表現は素晴らしかった。

 ピクトグラムとは、例えば男女トイレの表示とか禁煙表示の絵とかの表現方法だ。一目見て理解ができ表現(示)方法だが、この演出は「息を呑むようなパフォーマンスだ!」「言語の壁を超えたピクトグラムに世界は賛辞!」「しばらくは語り継がれるだろう」と、世界的にも評価がとても高かった。このピクトグラムのパントマイムを演じたのは、パントマイムデュオ「GABEZ(ガベジ)」ら。

 ドローンによるエンブレムや地球の表現も素晴らしかった。このドローン演出とピクトグラムに「退屈だった開会式が救われた」とも言われている。

 閉会式の最終ランナーと日本選手団の旗手は、大坂なおみ選手(テニス)と八村塁(男子バスケ)・須崎優衣(レスリング)だったが、なぜこの3人だったのか、あまりピンとこなかった。日本人でも須崎さんの名前を知っている人はほとんどいなかったのではないだろうか。また、大阪選手や八村選手の人選は、あまりにも人種融合を意識しすぎたような感がある。

 この日の開会式、日本でのテレビ平均視聴率は56.4%にものぼった。1964年の東京オリンピック開会式の視聴率は61.2%だったので、それに迫る視聴率だった。(あの素晴らしかった2008年北京オリンピック開会式視聴率は37.3%[日本との時差は1時間]、前回のリオ・オリンピック開会式視聴率は23.6%だった。) 今年の夏の東京オリンピック開催の是非に日本国民の間で賛否両論が分かれていたので、この高視聴率は以外でもあった。

 各国の海外メディアは、この開会式について、「非常に控えめなセレモニー」「今までとまったく異なるオリンピックが、見たこともないような開会式で始まった」「カラフルではあるが、妙に落ち着いたセレモニーが独特なパンデミックの中でのオリンピックにふさわしい雰囲気を醸し出した」などと報道されていた。国立競技場周辺でのオリンピックに反対するデモに言及する海外メディアも多く、特に韓国では「開会式当日までも、日本国民に愛されなかった大会」などと伝えていた。

 これらの一連のデモでは、「菅内閣打倒、オリンピック中止」と、政治活動を訴える参加者も多く、極左暴力集団「中核派」などの活動家が逮捕されていた。これらのデモは海外メディアにとってかっこうの記事になる。日本国及び日本人にとっては世界に恥をさらされることになっているのだが‥‥。デモ参加者にはこれらの意識はまったくないのだろうか…。

 

 

 

 

 

 

 

 


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