彦四郎の中国生活

中国滞在記

コロナ防疫:日本の失敗の原因はどこにあるのか❷防疫対策のしっかりした司令塔戦略センター構築が必要

2021-04-25 19:21:37 | 滞在記

 打つ手なしの状況に陥っている日本のコロナ防疫対策。現在進行している第4波コロナ感染急拡大に対する3週間あまり想定の緊急事態宣言や蔓延防止重点措置も、おそらく効果があまり期待できず、国民はかなり疲れ果ててきている。3回目となる緊急事態宣言は、5月11日以降も延長される可能性も大きいし、また他の道県にも緊急事態宣言が出される可能性も大きい。岐阜県や福井県などでは県独自の緊急事態宣言が出され始めてもいる。その場しのぎの政府のコロナ対策が、安倍政権末期の昨年7月ごろから続き、特に9月の管政権以降の昨年末からのコロナ対策の様相は混乱を極めてきている。

 よく民報各局の朝の報道番組に出演している昭和大学医学部客員教授の仁木芳人氏は4月4日付の新聞赤旗日曜版に、「第4波封じ込めを―モニタリング検査 100倍 200倍に増やせ」という見出し記事で、新型コロナ対策の基本中の基本について、感染対策5つの柱として「①飲食の感染防止、②変異株への対応、③戦略的な検査(無症状者のモニタリング検査、高齢者施設等への集中的・定期的検査)、④安全・迅速なワクチン接種、⑤医療体制の強化」をあげている。そのうえで、「日本のPCR検査の取り組みは欧米と比べ周回遅れどころか、2周回くらい遅れているといわざるをえません」と語る。

(※コロナ・モニタリング検査とは、感染拡大傾向を早期に把握するための検査。コロナに感染しながら無症状の人がどれだけいるかを把握するための検査。PCR検査を行い、2〜3日後にスマホアプリにて結果連絡される。仁木氏のが5本柱の一つにあげるモニタリング検査は、これだけ感染拡大が広がっている第4波の状況下ではその意義は薄れてきてはいる。感染拡大感知が必要な時期に有効性の大きいものだ。現状況下ではむしろ、モニタリング検査ではなく、重点地区での全員PCR検査が必要だと思われるが。)

 評論家の森永卓郎氏は、「まん延防止等重点措置の対象自治体(緊急事態宣言の4都府県含む)に住民全員をPCR検査して、陽性者を隔離するのが、最も効率的かつ効果的だと思う。対象となる国民は3290万人で、1人当たりの検査費用を2000円とすると、必要な予算は658億円となる。飲食店への休業補償に伴う協力金と比べて、ケタ違いにコストが低いのだ」と語る。

(※アメリカは1兆円の国家予算を投じてコロナワクチン開発製造に成功している。この額を日本政府がワクチン開発に投じていればとの思いもする。日本政府がワクチン開発ではなくGOTOトラベルに投じたお金は2兆円。)

 いずれにしても、コロナ防疫・感染拡大抑え込みのための基本戦略は何なのかは、この1年間のコロナ禍下の中で見えてきている。それは、「①PCR検査をできるだけ広範に行い、陽性者を隔離し保護治療、感染拡大を防ぐこと。②マスク・手洗いの励行、距離の励行、会食・飲酒などさまざまな場での感染防止措置。③コロナワクチン接種の実施④クラスター発生への対応。⑤医療体制の全国的協力体制づくりと強化」という特にこの5本柱の重要性を基本中の基本の戦略とすることだ。

 この日本のコロナ対策・防疫の失敗の原因はどこにあるのか?防疫・コロナ対策の基本戦略ができていないからだ。その基本戦略を推し進めるべくしっかりとした組織・センターが確立されていないからだ。これが致命的な欠陥となっている。

 4月2日付の朝日新聞に1ページの紙面に京都大学教授医学部の西浦博教授のインタビュー記事が掲載された。昨年、コロナ感染抑制には「人との接触8割削減」が必要と呼びかけたたことから「8割おじさん」とも言われた人だ。昨年春の第1波の際、厚生労働省クラスター対策班の中心となっていた人である。1年を超えたコロナ禍下での闘いの中で、見えてきた日本社会の課題、特にコロナ対策の政府の問題点の深刻さなどを語っている。インタビュー記事には、「届かなかった提言—最悪を避けるため傷負う覚悟で訴え」「政治家、覚悟のかけらもなかった」との見出し記事だ。

 この記事の中で、西浦氏は、「一番大きい問題は組織の問題です。第1波のとき、厚生労働省のクラスター班で働いていたのですが、そこで分析した結果が、政策的な判断を下す官邸に届くまでに、厚い壁のようなものが何枚もありました。科学的な知見を採り入れた政策判断と、官僚制システムがかみ合っていない」と語る。

 コロナ対策の政策決定をする官邸と厚生労働省のコロナ班との間に分厚い官僚機構や政府コロナ分科会などが立ちはだかり、科学的な知見に基づいた政策決定がなされていないということだ。このため、いきあたりばったりの政策に終始し、コロナ対策基本中の基本の戦略がつくれてこないまま1年以上が経過していることとなる。「官僚や政治家たちの多くは 感染抑制に向けた覚悟のかけらもない」とも語る。おそらくこれが日本政府のコロナ対応の現実なのだろう。

 また、西浦氏は、「東京五輪開幕があと3カ月に迫った状況で、日本は最大の危機を迎えています。五輪の"1年延期" を、選手を含め、広く議論してもらえないでしょうか。オープンな議論に議論を望みます。おおかたの国民へのワクチン接種が1年後にできているなら、東京五輪もさらに1年延期するのが有効な選択肢ではないでしょうか。政府の英断を望みます」と訴えている。

 北村義浩氏(日本医科大学特任教授)も仁木氏と同じく、よく朝の報道番組に出演している人だが、「世界はもっと強い対策を打っているし、私の知る限り、弱い対策(まん延防止重点措置)から強い対策に移行するくらい後手後手の国は日本くらいのものと」としながら、「事態は新幹線のようなスピードで進んでいるのに、まるで自転車でもこいでいるかのような認識。5メートル先に小さな子供(危機)が飛び出して来ても、間に合うと思っていたわけですけど、新幹線だから急ブレーキを踏んでもムリなんです」と語る。

 東京都医師会会長の尾崎治夫氏は、4月25日付の新聞赤旗日曜版の「感染急拡大"第4波"今が正念場—国を挙げた感染対策の体制が必要」との見出し記事で、「都心部・感染中心地で、面的・集中的なPCR検査や抗原検査を徹底して行い、無症状者を含めた感染者を見つけ出し、隔離・保護することです」とPCR検査の重要性を指摘。さらに、「1年先、2年先見越した 科学的な戦略を作れ」との小見出し記事には、「‥‥どうしてこのような状況なのかと言えば、PCR検査体制の遅れに象徴されるように、国を挙げて感染症対策に取り組む体制になっていないからです。アメリカのCDC(疾病対策センター)のような司令塔ともいうべき組織もありません」と、防疫対策のためのしっかりした組織・センター、司令塔の構築への緊急の再編・構築の必要性を語っている。

 この1年以上の日本政府のコロナ対策では、誰が、どの組織が司令塔なのか、国民にとってもよく分からない状況が続いている。一応、首相の職にあった安倍前首相や菅首相が個人としての司令塔なのだろうけど、組織としての司令塔がまったく見えてこない、またはない、という状況が続いている日本。首相だけでなく、政権与党のNO2NO3の二階自民党幹事長や麻生副総理兼財務大臣らの問われる責任もとても重い。また、昨年の9月中旬まで厚生労働相で現在は官房長官の職にある加藤氏の責任もまた大きい。だれもがまっとうなコロナ対策組織づくりをしてこなかったからだ。

 写真左より、①西村氏②田村氏③尾身氏④脇田氏⑤中川氏(日本医師会会長)⑥河野氏

 また、政府のコロナ対策の先頭に立ち続けている感のある西村経済再生担当相。なぜ、厚生労働相ではなく経済再生担当相が国民にコロナ対策や対応などを説明する先頭にたつのか、国民はずっと疑問を持ち続けていることかと思う。最近になりコロナワクチンの問題ではようやく田村厚生労働相が矢面(やおもて)に立ち始めてはきているが‥。河野行政改革担当相は2月ころから菅首相からコロナワクチン接種担当相兼務を命じられてその職にあるが、その存在意義もまた分かりにくい。本来なら厚労相の田村氏が兼務すべきかとは思うのだが‥。とにかく、「司令塔」的な組織がなく、それぞれが それぞれの部署で単独的にやっている印象だ。

 では、「政府のコロナ分科会」(尾身分科会会長)なるものの組織はどんな位置づけなのだろう。国民は、ここが司令塔的な組織かと思わされていたが、実はそうではないようだ。単なる政府・官邸のコロナ政策のための諮問機関で、その司令塔的権限はほとんどないことも最近は露呈してきている。20人ほどの委員で構成されているこの分科会の副会長は国立感染症研究所所長の脇田氏。

 委員は、感染症の専門家や医師らが約3分の1、経済や経営の専門家が約3分の1、その他の約3分の1は全国労働組合の役員など。委員20人の顔ぶれを見ていると、なるほど、単なる諮問委員会にすぎず、司令塔ではまったくないことが分かる。委員の多くは「PCR検査の広範な実施」には反対の意見をもつ人が多いと聞く。尾身会長自身も3つの大きな半官民病院の理事長職にあり、PCR検査の広範な実施により、病院への陽性患者の受け入れ増加になることを危惧してPCR検査の広範な実施は消極的と言われているし、実際このことを首相に提言したこともないように思う。

 日本における、ズルズルと締まりのないコロナ対策の元凶は、この「コロナ対策司令塔」がないことに起因している。だからまっとうなコロナに立ち向かう戦略が立てられず、それぞれの担当相や政権の実力者、担当者たちや、首相側近補佐官たちが、それぞれの権益、自己権力保身のために動いている感がある。

 写真左より、①鍾南山②陳時中③オードリー・タン

 中国では、感染抑制のための国民の精神的な支柱として、感染症専門家である鍾南山氏の存在が大きい。中国共産党からしても一目おかざるを得ない、とても国民から信頼と尊敬の篤い人物だ。2003・4年のSARS(コロナ)対策問題でも今回の新型コロナ対策問題でも、老体に鞭打って国民の先頭にたち続けけてきている。

 民主主義政治のもとにある台湾は、世界で最も国民の大きな納得と支持を受けながら新型コロナ対策に成功してきている国だろう。蔡英文総統のもと、特に陳時中  台湾衛生福利部長(厚生労働相の相当)のコロナ対策への存在は大きい。「鉄人大臣」とも国民から愛称と畏敬を集めている人物だ。その陳氏の率いる司令塔組織のもとに、携帯アプリなどのIT を活用してのコロナ対策が有効に取り組みをしている。この分野は司令塔の戦略のもと、IT担当相のオードリー・タン氏(唐鳳)が中心となって担う。

 この携帯アプリITを活用したコロナ感染拡大防止対策。誰かがコロナ陽性と判明した場合、その陽性者との濃厚接触者には即座に携帯アプリに連絡されるシステム。中国でも台湾でも、そして世界のかなり多くの国々で広まり活用され、コロナ感染対策に生かされている。日本では「COCOA」という名称でこのアプリの機能を広めようとしたが、この4月中旬の朝日新聞の「COCOA不具合放置—国と企業 無責任の連鎖」という見出し記事の内容のように、ほぼこのアプリの活用は広まっていない。

 この「コロナ対策のIT」に関しては、週刊雑誌『NESWEEK(日本語版)』4月20日号の特集「コロナ制圧のカギ—日本を置き去りにする デジタル先進国、新型コロナを完全に抑え込んだ中国デジタル監視の実態、台湾・韓国にも遅れた日本がすべきこと」に 世界各国のITとコロナ対策のようすも掲載されている。

 週刊ポストの最新号の表紙に、「府民からも 隣県民からも 大阪ぎらい 吉村知事失敗の本質—メッキが剥がれた」の文字。その記事には、「やってるフリは一流やけど」「ワシらは"まん防"より"辛抱"や—もうかなわんわ!」の見出し記事が。

 維新の大阪府知事の吉村氏や大阪市長の松井氏、とりわけ吉村知事の連日のテレビ出演なども含め「頑張ってはるで」ということは私もある程度はわかる。苦労もしていることだろう。だが、あれだけテレビ出演していて、府民・国民にさまざまな要請や理解を求めたり、国のコロナ対応に批判の意見を挙げたりして、府独自の対策を講じたりと、府民・国民に訴えてもいるのだが‥。「テレビに出てパフォーマンスをすることをなくしたら、彼女に何が残るのですか。何も残らない。」と元国会議員で、最近はテレビの報道番組などでもよく顔を見る杉村太蔵氏に言い放なたれていた東京都知事の小池氏。

 この二人の知事に共通していることは、テレビを通じてのアピールは上手なのだが、コロナ対策の基本中の基本である「PCR検査拡充」の必要性などをこれまで一言でも言ってこなかったことだ。政府に要請したこともまったくない。特に大阪のPCR検査実施率は東京や関東の県の実施率に比べても格段に低い。つまり、この1年間、吉村府知事も小池都知事もコロナ対策の基本の5つの柱戦略を語ることなく、「失敗」を露呈してきている。つまりは、メッキが大きく剥げてきたということかと思う。

 特に、第2回目の緊急事態宣言の前倒し解除を国に率先して要請、隣接する京都や兵庫もこのため解除され、1カ月後再び、今度は関西を中心に感染拡大第4波の大波となったことや、せっかく準備した重症者病棟の数をこの2月に大きく減少させたことなどの失策が続いている。「吉村はんの言う事やから、しゃあない、聞いておこか」というかっての吉村知事への府民の信頼感も大きく揺らいでいるようだ。

(※吉村知事の最近の表情は自信をなくした表情が多い。これはやはり完全にコロナ対策に行詰まりがあり焦燥している表情かと思う。吉村氏自身、コロナ対策の基本中の基本を認識していないので、焦燥感はでるだろう。基本の5つの柱を再認識すべきだ。東京都の小池知事などは雲隠れしたように、あれほどパフォーマンスアピールでのテレビ出演に嬉々としていたころがなかったかのように、テレビ出演をできるだけ控えているようだ。まあ、本質はかなり卑怯な人だ。それに比べて、吉村知事の方がまだ潔い。旗色が悪く自信を喪失していても 言い悪いは別にして潔くテレビ出演を頑張り続けてはいるのだから‥。)

◆前出の森永氏は、「コロナ分科会は2度も感染収拾に失敗したのだから、今後の感染対策で最も必要とされるは、委員の総入れ替えではないか」と語る。前出の西浦氏の語る、"官邸を取り巻く官僚たちなどの厚い壁"とはいったい誰たちのことなのか? 次号ではこのことを記したい。いずれにしても、「司令塔」として機能するの組織改編が最も緊急な急務ではあるが‥。今の管政権では‥。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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