彦四郎の中国生活

中国滞在記

ロシア、ウクライナ侵略戦争開始から7カ月➋—待たされるプーチン大統領の孤立、ロシアとの距離を取りはじめた国々

2022-10-01 06:37:12 | 滞在記

 この9月14日から16日にかけて、中央アジアのウズベキスタンの歴史的古都・サマルカンド(「世界遺産都市・青の都と呼ばれる」)で上海協力機構(SCO)の首脳会議が開催された。ロシアによるウクライナ侵略戦争が始まって7カ月余りとなったこの時期、9月上旬にはウクライナ軍による反転攻勢によりハルキウ州全域をウクライナ側が奪還するという戦況もあり、このSCOでの首脳会議に世界の注目が集まった。

 このウクライナへのロシア・プーチン大統領による侵略戦争の今後の行方を左右する、中国・習近平国家主席、インドのモディ首相、そしてロシアのプーチン大統領などがこの首脳会議に集まるからだ。この世界的に注目される会議がサマルカンドで開催されるため、国立サマルカンド外国語大学に勤める友人(夏休みのため日本に一時帰国中)から、「SCOの会議が終了するまで、日本からウズベキスタンに渡航するのは見合わせてほしいとの大学からの連絡がありました」とのLINEメールが入った。サマルカンドは世界の要人を迎え、超厳戒態勢だったのだろう。

 この上海協力機構(SCO)は、現在では巨大な政治・経済面での世界的組織となっている。発足したのは2001年、中国とロシアが中心となり設立した。2022年現在の加盟国は8カ国(中国・ロシア・インド・パキスタンと中央アジアのカザフスタン・キルギスタン・タジギスタン・ウズベキスタン)だが、ベラルーシやイランなども今後の加盟国として認められている。さらに、準加盟国(オブザーバー参加国)としてイランなど、かなり多くの国々があり、また、トルコなど、対話パートナー国も多い。今回のSCO首脳会議には、トルコのエルドアン大統領なども参加している。このSCOの首脳会議は毎年開催されており、今回は第22回目となる。(トルコなどは、SCO加盟を申請中)

 現在の8カ国の加盟国だけでも、ユーラシア大陸の面積の5分の3以上、世界人口の40%以上、世界全体のGDP(総生産額)の20%以上を占める巨大な組織だ。SCO組織の全体事務局は中国の北京にある。今回、ウクライナ侵攻を行ったロシア・プーチン大統領にとって、この組織に参加している国々、とりわけ中国とインドのロシア支持や支援は最も頼みとするものだ。

 だが、頼みとするSCOの全体会議でも、中央アジア諸国や中国・インドのプーチン大統領との個別会談でも、プーチン大統領にとって落胆せざるを得ない結果となった。各国がロシアと距離を取り始めていることが明らかになったからだ。

 9月15日に、サマルカンドで中国・習近平主席とロシア・プーチン大統領との、2月24日から始まったロシアのウクライナ侵略戦争後に初めての対面会談が行われた。プーチン大統領としては、中国からの軍事的支援などを喉から手が出るほど欲しかっただろうが、習近平主席からはウクライナとの戦争に関することは特に持ち出されず、「両国の結束」の確認はされたものの、プーチン大統領と距離をとる態度と報道されていた。プーチン大統領からは、台湾問題での中国支持を重ねて強調し、ウクライナ問題については、自ら切り出し「中国の(ウクライナ問題への)バランスの取れた対応を評価しています。また、中国側の(ウクライナ問題への)疑問や懸念を理解しています。」と述べるにとどまった。お互いに「笑顔なし、共同声明なし」とも報道される。

 そして16日には、同じくサマルカンドでインド・モディ首相とロシア・プーチン大統領との会談が行われた。この会談でモディ首相は、「私たちは"民主主義""外交""対話"、これらが世界で大切だと何度も話し合ってきた。今は(ウクライナとの)戦争をしている時ではないでしょう」とプーチン大統領を批判した。これに対し、プーチン大統領は、「あなたの懸念は理解しています。こうしたことが一刻も早く終わるように手を尽くしていきます」と答えたと報道されていた。

 9月16日付朝日新聞には、「中ロ首脳、結束を強調—ウクライナ侵攻後、初会談」「苦悩ロシア、強まる中国依存—習氏"共に混乱した世界の安定を"と―中国・軍事支援には慎重、中央アジア4カ国板挟み」、17日付には、「SCO、妥協の共同宣言—欧米への激しい批判避ける」などの見出し記事。9月14日付の夕刊フジには、「苦境ロシア崖縁—プーチン、習に支援懇願か」の見出し記事。

 この9月14日から16日にかけて、プーチン大統領はSCO加盟の諸国首脳やオブサーバー・対話参加諸国などと立て続けに会談をしているが、今のロシアの立場を象徴するように、「会談に臨み、プーチン大統領が先に会場に来て、待たされている姿」が印象的だった。(「遅刻魔、待たせ魔」で有名だったプーチン大統領だったのだが‥。立場が逆転もしてきている。プーチン氏にとっては、とても屈辱感を感じていたことだろう‥)

 SOC加盟の中央アジア諸国のうち、ロシアとの6か国の軍事同盟「集団安全保障条約機構(CSTO)」にはカザフスタン・キルギスタン・タジギスタンが加盟している。(他に、ベラルーシ・アルメニア)  ロシアのウクライナ侵攻後、ロシアとの距離を取り始めたこれらの中央アジア諸国。(中央アジアでは、ウズベキスタンとカザフスタンの二国が中心的な国家。) 

 8月10日~20日までの10日間、アメリカとの合同軍事演習に参加してもいる。(米国とカザフスタン・キルギスタン・タジギスタン・モンゴル・パキスタンとの合同軍事演習) 特にロシアと長大な国境を接する国であるカザフスタンのトカエフ大統領は、6月には「ウクライナ東部の分離独立ロシア派の共和国の独立を認めない」と発表、8月にはプーチン大統領からのウクライナ派兵協力を拒否している。これまでのロシア中心の協力・依存から中国を中心とした協力・依存関係にシフトしているのが、今の中央アジア諸国。さらに、欧米日などとの協力関係も同時に志向している。

 ■このように、頼みの綱ともしていた上海協力機構(SOC)諸国などから距離を置かれ、ロシアの国際的な孤立化が見られ始め、9月以降のウクライナ国内での戦況の悪化などに直面したロシア・プーチン大統領の、局面打開へ打った手が、やむに已まれぬというか、一か八かの「国民の軍事動員令」と「ウクライナ東南部4州の住民投票実施とロシア強制併合」だった。

 G7国の一つであるイタリアに、この9月下旬にポピュリズム極右政権とも言われる政権が誕生した 。9月27日付朝日新聞には、「対ロ制裁へ同調、不透明—伊・右翼政党勝利/過去に反EUの主張—物価高、極右に追い風」などの見出し記事。イタリアの新たな首相には、第一党となった「イタリアの同胞」メローニ党首(40代女性)が就任する見通しだ。このイタリアの政局には、プーチン大統領は喜んだことだろう。

 だが、ブラジルのトランプと称されるブラジルのボルソナロ現大統領は窮地に立っている。ロシアのウクライナ侵攻に異議を唱えず、支持もしているかのような振る舞いのボルソナロ氏。明日、10月2日(日)に大統領選挙が行われるが、最新のボルソナロ氏への支持率は31%。それに対する、ルラ元大統領への支持率は48%となっている。面積的にも人口的にも準大国のブラジルだけに、ウクライナ問題への影響は多少なりとも大きい。

■ロシアは面積は世界一だが人口は1億4000万人と、日本より少し多いくらい。ガス・石油などの天然資源が豊かだが、現在の世界でのGDPは世界第12位と韓国より小さい。ただ、核兵器数は6000発とアメリカと並ぶ軍事大国。この軍事力の低下(ウクライナでの戦況の推移から、思ったほどロシア軍は通常兵器では強くないと世界的に思われてきている。)が、世界各国のロシア離れを促してきてもいる。距離を持ち始めた世界各国に対し、「いまに見てろ、私を待たせた国の首脳にも、ロシアの本気の力を示したるわ」と非常手段としての国民への軍事動員令を発布・実行してきているのが、現在の状況か‥。ロシア国民に不安と戦争終結の世論が高まり始めているロシアだが、「プーチンの終わりの本格的始まり」となればいいのだが‥。

 

 

 

 

 

 


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