日本では「春に向かうこの時期」の季節用語に「三寒四温」という言葉があるが、中国の福州では「二寒二温」だろうか。一週間ほどかなり寒い(気温4度―10度で氷雨が多い)日が続くと、次の一週間はかなり暑い(気温13度―25度)が続く。福州は日本の京都よりも1か月間ほど早く季節が推移するので「今は春」の季節なのだが、春は2月下旬〜4月上旬の一か月半ほどと短い。4月中旬になると30度を超す日々が訪れ始める。
2月23日(水)夕方に福建省三明市尤渓県より福州の宿舎に戻り、26日(金)からの担当授業が始まった。その日の夕方、閩江大学3回生の楊君が宿舎を訪ねて来た。初めて見る彼女同伴だった。楊君は大学に入学する時点でかなり日本語会話ができる学生だった。その当時の会話で、「僕には彼女がいます。広東省の深圳にいます。」という話をしていたので、「どんな彼女かな?」と興味があったが、今回初めて会った。ほがらかな優しい印象の女性だった。バスで「海鮮料理店」に行き夕食とビールを飲み合った。彼女と楊君は、高校の同級生で長距離恋愛4年目(※楊君は高校3年生の時、広東省の高校から福建省泉州の高校に転学している。彼女は、高校卒業後に「貿易実務」関係の専門学校に行き、現在就職して働いている。)
3月2日(水)、水曜日は担当授業がない日なので久しぶりに閩江大学に行った。キャンパスが美しく、花々も多い。春の季節感を感じる「菜の花畑」や「木蓮」の木々、大輪の椿の花は そろそろ終わりごろ。梅の季節はすでに終わっていて、今は「桃の花」が咲き始めていた。外事科(外国人教員担当部署)科長の鄭さんに会い、日本の土産を渡した。帰り際、「先生、9月の新学期から閩江大学に戻って来てください。」と一言告げられた。
2月26日(金)から担当授業(1回生の「総合日語2」)が始まった。前期(1学期)は、3回生の「作文」と「総合日語5」、4回生の「日本古典文法」と「日本近現代文学」の4教科(週12時間)もの授業を担当していたので、ものすごく大変だった。しかし、後期(2学期)は、1回生の「総合日語2」と2回生の「日本概況」の2教科(週12時間)だけなので、かなり楽だ。月曜日の午前中4時間「日本概況」(2クラス)、火曜日と金曜日の午前中各4時間で8時間「総合日語2」(2クラス)となっている。
授業は午前8時から始まるので7時15分に宿舎を出る。宿舎周辺には小学校・中学校・高校が多く密集している文教地区なので、大学に着くまでの大小の道路は、通学・通勤の人々でごったがえしている。昨年に購入した自転車で通っているが、道路は非常に危険である。大学の正門に入るまで、絶対油断はできない。四方八方に気をつけて人や車やバイクとの衝突や接触を避けながら通行する。宿舎から20分ほどで外国語学部のある建物に着くことができる。
※上記の写真は「1回生1班(組)」
※上記の写真は1回生2班(組)
福建師範大学での1回生の授業は、今まで前期・後期の全て中国人教員が担当するのが恒例だったようだが、なぜか今回 私が後期に担当することになった。1回生は まだ簡単な日本語会話しかできない会話レベルなので、それに即した授業展開や工夫が必要となる。また、重要で基礎となる日本語文法事項が目白押しなので、学生にとっては難しいが 担当教員の私としては面白い教科だ。
1回生はかなり真面目な学習態度が維持される時期で、8時からの授業開始の20分~30分ほど前から教室に来る学生が多い。そして自習している。これが学年が上になるほど、ぎりぎりに教室に来る学生が多くなってくる。
3月5日(土)の午前10時から福建師範大学外国語学部日本語学科「第39回藤山サロン」(日本語や日本に関する講演会)に行った。今回は法政大学大学院・米家志乃布教授の「法政大学周辺の歴史地理」というテーマの講演だった。江戸・東京の歴史地理について1時間ほど話してくれた。福建師範大学と法政大学は、昨年に「大学院入学試験協定」を結んだ(他に福州大学・重慶師範大学・四川外国語大学)。中国国内で日本の大学院試験を受けられるというのが、法政大学側の売りだ。
しかし実態は次のようだ。4回生時期の3月に試験を受ける➡6月に中国の大学を卒業➡合格者は9月に来日し、法政大学大学院の聴講生となる➡翌年の1月頃に正式な大学院入学試験➡合格者は4月から正式な大学院生となれる。つまり、大学院生になれるのに、大学卒業の翌年の4月(9か月間を要する)。これでは、多くの日本への大学院留学を目指して来日するルート(7・8月頃に来日し日本語学校➡翌年の1月・2月を中心に行われる日本の各大学院の入学試験受験(※複数を受験する学生が多い)➡合格者は4月大学院入学)とあまり変わらないと思われる。
福建師範大学や福州大学は、日本の3倍以上の「3000あまりある中国の大学でのレベル順位は100番以内の大学」なので、「割る÷3」の単純計算をすれば日本の大学のレベル順位25位〜30位前後の大学(例えば、広島大学や上智大学などかな)との入試協定を結ぶのなら、学生に受験を勧めるそのメリットはあるのだがと思う-----。現在の福建師範大学の4回生は、5人が3月6日(日)にこの試験を受験をした。日本に来日したら、彼らは「もっとレベルの高い評価を受けていてキャンパスらしい大学院の試験を受ければよかった」と思う可能性は大きいかもしれない。
明治大学もそうだが、法政大学キャンパス市ヶ谷校区は、(大学キャンパス校地)というより、どこかの大企業の建物のような高いビルデングの建物の大学なのだ。樹木も多く広い大学校地の中国の大学からの留学生は、どう感じるのだろうか。都心の中心地で、隣に「靖国神社の緑地がある」という立地条件はとてもいいのだが--。(※大学のキャンパス風景は、大学院を選ぶ場合のとても重要な面だと思う。)
なお、次のような「日本語学校」の問題点を考えると、法政大学の聴講生としての来日も一つの良い選択かもと考えられる面もある。
―日本の「日本語学校」の問題―
◆大きい問題の一つは、日本の大きな「日本語学校」では「大学院進学コース」というコースがあるにはあるが、一人一人の個別的な進学相談に対応できず[対応指導ができる教員も少ないようだ]、大学院入学試験「研究計画書」の書き方などの一斉授業があるだけという実態。したがって、個人的に努力して、受験先を探すことになる。受験指導は、その学生の「総合的学力」と「進路希望」に対応した受験指導・相談活動が必要なのだが----。)
また、日本の大学院進学を目指す留学生たちは、中国の大学在学中に「日本語能力検定試験1級」に合格している学生がほとんどなので、「日本語学校での日本語の授業」を受けても、レベル的に必要性を感じない。しかし、授業の欠席が多いと、退校になり在日ビザがなくなり中国に帰国をせまられるから、必要性がなくても授業に参加せざるをえないようだ。これは、けっこう辛いものがあるようだ。
その間、高額な日本語学校の授業料(年間約80万円)と毎月のアパート代・生活費用(約10万円は)が必要となる。日本語学校に在籍した場合、正式に大学院に入学できる9か月間で、学費と生活費にほぼ180万円(中国元で約9万元。これは中国の都市部平均年収[約4万2千元]の2年分以上となる。)は必要となる。
中国から日本への留学生が増加している今日、「日本語学校」大学院留学コースの学生への、学費に見合った授業内容や個別進路指導の充実が求められているように思う。大学院留学を目指す学生達は不安の中で必死なのだ。
◆日本には在籍大学生の半数近を留学生が占める大学が結構ある。「○○国際大学」と名前のつく日本の私立大学は ほぼ最低レベルに近い大学が多いのが実態のようだ。2年ほど前に、岡山県の備中高梁市にある「備中高梁城」を見るため一泊した。
地元の居酒屋で夕食をとった際、地元の人たちに「この町にある吉備国際大学は どんな大学なのですか。」と聞いたら、「約3000人の学生のうち、3分の1の約1000人が中国などからの留学生ですよ。留学生たちの多くは 岡山市などまで行ってアルバイトばかりしていて、勉強を熱心にしている学生はごく少数ですよ。」と話していた。地元での評判はかなり悪いようだ。
翌日の午前中に、この大学に行ってみた。そして、留学生担当課の事務室に行き担当者とも話した。「マンガ・アニメ―ション学科」があるのが一つの売りで、日本のアニメに興味をもつアジアからの学生を多く集めて経営を成り立たせているようだ。
中国では、毎年六月に実施される「国家統一大学入学試験」の一発入試で、約900万人が受験する。そのうち、約720万人が3000ほどの大学のどこかに入学できる。どこの大学にも入学できなかった150万人(年間)以上の人は、専門学校などに行く学生も多い。このような学生にとって、どこの大学でもいいから、「日本の大学」に行く(留学)ことは、専門学校に行くよりも ある程度の「面子」がたつことなのかもしれない。
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