彦四郎の中国生活

中国滞在記

中国「新病毒(新コロナウイルス)」❷武漢封鎖、しかしすでに、500万人が市外・国外に―WHOの誤判断

2020-01-29 18:11:05 | 滞在記

 1月23日の早朝、人口1100万人の大都市・武漢が閉鎖された。「武漢封鎖・中国強行」である。鉄道・飛行機・長距離バスなどが全面閉鎖される。22日から深夜にかけて、情報収集をしていて、間一髪で武漢を脱出した日本人もいたようだ。車で市外に出るための幹線道路では、車に乗っている人の検温が行われていた。多くの武漢市民が脱出をはかり、道路は大渋滞のパニック的状況を呈していた。

 湖北省武漢は中国の臍(へそ)のような都市とも言われる。1937年から始まった日中戦争の時、中国の「中華民国政府」の首都は南京だった。日本軍は上海を占拠、そして南京に進駐し陥落させた。蒋介石を首班とする中華民国政府は武漢に逃れ、ここを臨時首都としたが、ここにも日本軍が進駐してきたため、四川省の重慶に臨時政府首都を置くこととなった。上海・南京・武漢・重慶ともに揚子江(長江)が流れる。武漢は長江の中流域の政治・経済・物流・学問の中心地だ。

 1937年に武漢に進駐した日本軍は、名門・武漢大学の構内にソメイヨシノ(桜)をたくさん植えた。傷病兵を慰めるためとも言われている。現在では中国一の桜の名所となっている、その武漢大学に留学中の日本人男性は、23日未明に友人からの「武漢が封鎖される」という電話で目を覚まし、急いで荷物をまとめて武漢駅に行き、封鎖直前だった上海行の高速鉄道(新幹線)に飛び乗ったという。

 武漢には、ホンダなどの自動車関連を中心として、日本企業が160社あまり進出している。日本人駐在員や留学生など約600人以上が暮らしているようだ。武漢で自動車関連の日系企業に勤める50代男性は(封鎖前直前の日本行直行便で帰国した)、「友人や近所の人から肺炎の発症や死者が出たと聞いていた。1月はじめころから何かおかしいという警戒心があり、日本人同士で独自に情報交換していた」と語っていた。

 今回の「新コロナウイルス」の発生源となった「武漢華南海鮮批発市場」は閉鎖され、武漢市内での野生動物の売買も禁止された。

 感染の疑いのある大勢の人が詰めかける武漢市の病院。長蛇の列をつくり、咳き込みながらも何時間も何時間も診察の順番が来るのを待ち続ける。病院職員らは殺到する人の多さに対応が困難で、一日待っても順番がこないと嘆く市民の姿が。診察を受ける人の呼吸困難のようすなどを映像で見ていると痛々しい。「まるでホーラ―映画―中国・武漢の病院、長蛇の列 募る恐怖と不安や苛立ち」とのインターネット記事もあった。

 「武漢加油!」(武漢頑張れ!)など、中国のインターネット記事も、1月23日ごろから急に、この「新型肺炎・新コロナウイルス」関連の記事がとても多くなった。中国では「新型冠状病毒感染肺炎」と名付けられている。武漢の医療関係者で14人が「感染」し、そのうち1人が死亡したことも伝えられている。日を追うごとに、日々、事態はかなりの深刻さを増大させてきている。「これはただ事ではない」という感がする。そして、私も中国に暮らし、1月5日から日本に一時帰国し、2月15日には仕事のために再び中国に戻る予定なので、事態の推移にとても恐怖さえ感じ始めている。

 23日に「武漢封鎖」の措置が強行されたが、封鎖前に武漢を離れて、故郷に帰ったり、国内旅行にでかけたり、海旅行に出かけたりなど、約500万人以上がが市外・国外に出たと言われている。実に武漢市民の半数だ。それはそうだろう、「春節」の時期だからだ。普通、春節の国民休日は今年の場合1月24日(大晦日)〜30日までだが、多くの人は、大晦日24日の2日前ごろの22日までには故郷に帰るからだ。なぜかというと、春節の24日の大晦日の日や23日には、「春運」の特別ダイヤが組まれていても、鉄道も飛行機もチケットがなくなり、高速道路も大渋滞するから、遅くても2〜3日前までに故郷に帰るからだ。「武漢封鎖」を1月20日までに強行してい入れば今後の事態は少し変わっていたかもしれないが。

 武漢の華南海鮮批発市場での感染の「ウイルス宿主」として、まずあげられたのが「竹鼠(タケネズミ)」だった。中国内陸部では、鼠や猫や犬や蛇など、野生動物を食べる旧習(伝統)が残っている。こうした肉は滋養強壮にいいとされる。タケネズミは栄養価が高く、脂肪・コレステロールが低いとされ、姿焼きなどさまざまな料理法で食べられているようだ。私も学生から、「先生、これ故郷の特産・珍味のお土産です」と鼠の燻製のものを2袋(真空パックされた商品なので、飛行機で日本に持って帰ることは可能だった)もらったことがある。食べずに、日本に持って帰ったままだが。(※今も自宅に食べずにそのままある。)

  中国のインターネット記事でも、「宿主」の野生動物に関する記事も多い。「宿主は蝙蝠(コウモリ)」との見方もある。ちなみに、タケネズミなどは「村おこし(貧乏からの脱出)」として、最近、村々で養殖されているものが市場に出回っているようだ。

 24日の朝日新聞記事「多くの訪日中国人、まず大量のマスクを購入」という記事が。1月24日頃から、中国国内ではマスクの購入が難しくなり、「5枚入りマスク」が1万5000円(中国元で1000元)という高額で売られているとの記事も。日本で買えば200円〜300円のものだ。中国人の月給平均の3分の1の値段になる。

 中国国内では、地下鉄に乗るのも、長距離バスに乗るのも、全て体温検査が行われている。フィリピンでは24日には、「武漢からの飛行機便できた446人を強制送還へ」との記事も。同じ日、「北朝鮮は、中国からの観光客を全て入国拒否という措置を下した」と報じられていた。中国上海や香港のデズニーランドも閉園、中国全土の映画館も閉館となっている。この春節の時期は、「春節映画」が多く初放映の準備がされていたが、全て放映延期となった。 

 2003年~4年にかけての「SARS」(中国広東省から広がる)は、当初、中国政府は情報を2〜3カ月間も隠蔽・公開せず、深刻な事態におちいってから情報公開に踏み切った。WHO(世界保健機構)は非常事態宣言を出して、発生から約1年間あまりでようやく終息した。「宿主(コロナウィルス)」はコウモリと断定された。 20014年には中東を中心に「MARS」が世界的に感染が拡大した。感染源の「宿主」ヒトコブ・ラクダと断定された。

 1月20日頃、世界保健機構(WHO)は、今回の「新コロナウィルス」について、非常事態宣言を見送った。「委員の意見真っ二つ」と記事見出しにあった。この見送り決定は、重大すぎる誤りだったことが、その後だんだん判明してきた。WHOの事務局長は、「世界に詫びて、即刻 辞任」すべき誤りを犯したこととなる。おそらく、中国という国への忖度(そんたく)がこの事務局長はじめ、非常事態宣言に反対した委員の中にあったのかと思われる。今後、責任は厳しく追及されるべきだと思う。

 

 

 


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