彦四郎の中国生活

中国滞在記

ロシア、ウクライナ侵略戦争開始から7カ月❹—ロシア国内の世論調査に変化が生まれ始めている、「併合住民投票」の実態とは‥

2022-10-01 23:09:29 | 滞在記

 10月1日付朝日新聞、「ロシア、4州強制併合—ウクライナ侵攻、プーチン大統領が宣言"編入決定は住民の権利"と」「誤算ロシア 併合急ぐ—苦しい戦況、動員令で国内混乱/欧米、追加制裁の構え、中国は賛否を明言せず」「奪われた故郷 きっと戻る―苦渋の避難"永遠にロシアにならない」「併合は違法で無効」などの見出し記事が掲載される。

 9月30日、ウクライナ東部・南部の4つの州での「ロシア併合の賛否を問う住民投票の結果、90%の賛成多数」を得たとして、4つの州の親ロシア派代表者とプーチン大統領がモスクワで会合を開き、プーチン大統領は4州のロシア領併合に署名した。そして、今日10月1日、ロシア・モスクワの赤の広場では、「ロシア併合を祝う」大規模な式典が開催された。

 9月21日に発表された大規模な徴兵動員令により、ロシアから国外に逃れる人が多く(9月30日時点で20万人超と報じられる。)、また、動員令や戦争に反対する抗議デモなどがロシア全土で起こり、国内が混乱しているロシアだが、9月27日にロシアのプーチン大統領を訪れたベラルーシのルカシェンコ大統領は、「ロシアには予備兵が2500万人もいるんだろう。3万人だろうが5万人だろうが、(ロシア国内から)逃げるなら、逃げてしまえばいい。プーチン大統領よ、あまりそんなことぐらい気にするな」とゲキをとばしたと報道された。このロシア人の国外への多くの避難のことはロシア国内では、報道規制がされていてほとんど報道されてもいないとも伝わる。

 フィギィアスケート界の「皇帝」とも言われるロシアのプルシェンコ氏(39歳)。日本の羽生結弦氏は彼に憧れ敬慕し、「プルシェンコを目指して練習してきた」とも言われる。プルシェンコ氏は現在、ロシア国内にフィギィアスケート教室を主宰し、ロシアフィギュア界のドンになることを目指し、そのためにプーチン大統領に忖度し忠誠を誓う人物とも言われている。

 そして、この徴兵動員令に対し、「残念ながら、多くの人が(ロシアを)去って行った。もし、召集令状がきても、私は逃げない。喜んで戦闘訓練を受けたいと思う。私たちは、子供たちと未来を守らなければならない。これが私の立場です」と明言した。このプルシェンコ氏のプーチン大統領への強い忠誠は、ロシア国内では「愛国者の見本」として大きく報道されてもいることだろう。これまでも愛国発言や愛国ショーを開き、プーチン大統領への強い忠誠を見せているプルシェンコ氏。残念ながらどこまでもプーチン大統領と一蓮托生のようだ。(ロシアのプルシェンコ、中国・香港のジャッキーチェンといった感がある。)

 9月下旬、日本のテレビ報道番組(ABC系列)「大下容子ワイドスクランブル」では、ロシア人の多くが国外に逃れる実情やウクライナ東部・南部4州でのロシア併合への賛否を問う住民投票の実態などについての報道がされていた。「最後の最後で、ロシア出国を決意しました」と語る男性の映像、ロシアとジョージアの国境付近の道路では、数十キロもの車の列が続き大渋滞、ジョージアに入国するのに48時間待ちとの映像などが報道されていた。

 また、ウクライナ支配地域のウクライナ人を戦場に投入、前線では、「督戦隊(とくせんたい)」がロシア軍側に存在し、動員兵を後方から監視し、兵士が命令がないのに退却したり、降伏したりした場合、後方から攻撃を加え強制的に戦闘を続行させる部隊の存在も報じられていた。

 さらに、ロシア支配地域のルハンシク州では、18歳以上の男性全員にロシアからの召集令状が届いていること。ルハンシク州のカイダル知事は、「6カ月前から、兵士として使える全てのウクライナ人男性が連れ去られ、多くは戦死した。そのためこの場所(ルハンシク州)は、"女性人民共和国"と呼ばれてもいる」と語る。同じくロシア支配地域のサポリージャ州とヘルソン州では、親ロシア派などからロシア旅券(パスポート)の交付を受けたウクライナ男性らに対し、すでに動員が始まっていることなども報道されていた。そして、ロシアの報道官は、「ロシアはドネツク州などの完全掌握まで戦闘を継続する」との声明が報じられてもいた。

 そして、今回の4州での「住民投票」に関しては、「誰もロシアら投票するつもりはありません」「皆、基本的には投票に行きたくないと隠れているのです」(サポリージャ州)などと、その実情を語る人々の映像が報道されていた。

 このような状況下、ロシアと長大な国境を接するカザフスタンでは、「ロシアからの入国者は、9月21日から24日の4日間だけで約10万人にのぼった」として、カザフスタンのトカエフ大統領は、「絶望的な状況によりロシアからの出国を余儀なくされている彼らの世話をし、安全を確保する必要がある」と述べ、9月27日にロシアからの出国者の支援を表明した。また、トカレフ大統領は、「今回のロシア併合への賛否を問う住民投票は認めない」との声明をも出した。

 同じく、9月下旬には、日本のTBS系列のBS報道番組「報道1930」では、その「住民投票の実態」について、ロシアが報道発表した住民投票の結果は、「①ヘルソン州—賛成87.05%、投票率76.9%、②サポリージャ州—賛成93.11%、投票率85.4%、➂ドネツク州—賛成99.23%、投票率97.5%、④ルハンシク州—賛成98.42%、投票率92.6%」となっているが、これは「ものすごいフェイク」の住民投票結果であるとして、ドネツク州マリウポイ市長顧問のアンドリュシェンコ氏が取材に応じている映像が報道された。

 アンドリュシェンコ氏によれば、「マリウポイ市での住民投票は、有権者の1割にも満たずの2万人程度だった。このうちの1万人あまりは、自宅に銃を持ったロシア兵などが押し寄せ、強制的に賛成投票をさせられるなどの人々。数々の不正があった。まったくのフェイクの投票結果‥」とのこと。これが、他の市、他の州での住民投票の実態だろうかと思われる。実際の住民投票の結果は、自らの意思で投票を行った人の割合(投票率)は、5%~20%程度(州によって異なる)と推定される。この実際の投票率から推測するに、実際の賛成は多く見積もっても20%以下、反対は80%以上だったのではないだろうか。

 同報道番組「報道1930」では、最新の(動員令発表後)ロシア世論調査の結果が報道されていた。世論調査を行ったのは、ロシア独立系世論調査機関「レバダセンター」。その世論調査の結果が9月29日に発表された。その世論調査には、プーチン大統領が発表した予備役の動員令に対し、国民の過半数が不安や怒りをもっていることが明らかとなった。以下、その世論調査結果について。(■前回は8月下旬の世論調査)

Q1「プーチン大統領を支持するか」 前回83%(支持)➡今回77%(支持)※−6%、前回15%(支持しない)➡今回21%(支持しない)※+6%    [※ウクライナ侵攻前のプーチン大統領の支持率は、65%だった。]

Q2「ロシアは正しい方向に向かっているか」 前回67%(正しい方向)➡今回60%(正しい方向)※−7%

Q3「部分動員についてどのように感じているか」 47%(不安)、23%(ショック)、13%(怒り)、11%(混迷)、5%(恥)。[否定的に感じた人の割合は、70%余りにのぼっている]     一方、23%(誇り)、6%(満足)、6%(前進)。[肯定的に感じた人の割合は30%余りとなつている]

Q4「戦闘を続けるべきか、和平交渉を進めるへきか」 (絶対に・どちらかというと)戦闘を続けるべき—前回48%➡今回44%(※−4%)、(絶対に・どちらかというと)和平交渉を進めるべき—前回44%➡今回48%(※+4%)

■この世論調査結果について、レバダセンターのグドゥコフ副所長は、次のように語っていた。「最新の世論調査は、部分動員令が発表された時点で行われました。支持率は明確に下がり、和平交渉や戦闘停止を望む声は上昇し、約半数の48%が停戦に賛成しています。つまり、プーチン政権の支持の低下は今後も続くと思います」と。

 ロシア国内の世論に、変化が出始めているようだ。

 

 

 

 

 

 

 


ロシアによるウクライナ侵略戦争が始まって7カ月❸—ついに「国民動員令」「ウクライナ4州のロシア併合」宣言

2022-10-01 11:51:45 | 滞在記

 9月14日~16日にかけて開催された上海条約機構(SCO)での、中国・インドや各国首脳との会談で、「それらの国々のロシア離れ」「ロシアと距離を取ろうとしている」ことを実感したロシア・プーチン大統領はロシアに帰国。ウクライナ軍の反転攻勢を押しとどめ、戦況を転換するためにも、ロシア国内のプーチン支持・特別軍事作戦支持の世論を維持するためにも、「ロシア国内の予備兵登録者」への動員令を9月21日に発表した。

 この動員令に対し、「この半年以上にわたるロシア軍のウクライナへの進軍、これは単なる特別軍事行動ではなく、実際には戦争なのではありませんか…」と改めてその真相がわかってきたロシア人も増えてきたようだ‥。ロシア国営放送の親プーチンの司会者の一人は、9月25日の放送で、今回の動員令でいろいろ起きている問題に対する疑問を投げかけていたとも報じられていた。(ただ、プーチン大統領への直接の批判はしていない。)

 9月22日付朝日新聞には、「ロシア 予備兵30万人招集へ―プーチン氏"部分的動員令"―欧米批判"核使用の可能性示唆"」「プーチン氏は追い込まれ 対決強調 世論の反発懸念か」などの見出し記事。9月23日付「日刊ゲンダイ」には、「焦るプーチン ついに最後のカードを切った—著しい戦力不足」などの見出し記事。

 その後、「30万人ではなく100万人規模の動員招集」が行われる可能性が高いことも指摘され、ロシア国内はさらに大きな不安に包まれるようになる。

 このプーチンの動員令に先立つ9月中旬、ロシア国内で大きな人気のある歌手(「百万本のバラ」を歌った歌手)が、反戦宣言を行った。9月21日付朝日新聞には、「ロシアの人気歌手"反戦宣言"―"百万本のバラ"の人気歌手 司会者の夫とともに」の見出し記事。 

 この動員令発令を知ったロシア国内では、40余りの都市で「動員令」に対する抗議デモが起こり、2000人以上が警察に拘束されたとの報道。

 ロシア国内から隣国のフィンランドやジョージア、カザフスタンなどへ脱出する人々が多く出ることとなっている。

 9月28日には、ロシア政府は2500万人いるとされるロシア軍予備兵登録者の国外出国を禁止する法令を出すこととなったが、現在でもその国外脱出は止まっていない。すでに航空機や自家用車、徒歩などで国外脱出したロシア人はどのくらいになっているのだろう‥。このウクライナ侵略に疑問をもっている人ならばなおさら、この戦争に兵士として戦地に行くことに強い抵抗を覚えて、徴兵に参加するより国外に逃れる気持ちは無理もない。

 9月24日付「夕刊フジ」には、「プーチン30万人動員令失敗、露国民大脱出」「戦場には行きたくない―ロシア国民大脱出—プーチン動員令で墓穴」などの見出し記事。

 そして、9月24日付朝日新聞には、「ロシア 占領下、住民投票強行」、同日付京都新聞には、「親ロシア派"住民投票強行—4州ロシア編入急ぐ」などの見出し記事。9月24日付産経新聞には、「露編入 住民投票強行 ウクライナ4州」などの見出し記事。

 9月28日付朝日新聞には、「ロシア、併合宣言へ―占領地での住民投票が終了」「ロシア色の街—恐怖と諦め」などの見出し記事。29日付同紙には、「ロシア編入"9割が賛成" 4州の住民投票 親ロシア派が主張」「ロシアの核の脅しが激化―領土攻撃すれば反撃」、30日同紙には、「ロシア"併合署名へ"―今日、ウクライナ東・南部」などの見出し記事。

 9月末日時点で、ロシアによるウクライナ侵略戦争で、ロシアによる「編入住民投票」を強行した4州のうち、東部のドネツク州は約50%、南部のサポリージャ州は約30%がウクライナ軍によって奪還維持されている地域だ。そんな状況の中でなりふりかまわず強行した「ロシアへの編入を問う住民投票」であり、9割賛成というのもまったく虚偽の正当性ゼロのものであったことが、明らかにもなっている。「盗人猛々(ぬすっとたけだけ)しい」とはこのことだが‥。

 ロシアのプーチン大統領、そしてロシアの報道官は、今後、「自国の領土となったドネツク州などの全域掌握のための祖国防衛の戦いを行う」と宣言。また、この新たに自国となった地にウクライナ軍が攻撃をすれば、祖国防衛のためにあらゆる選択をもって反撃するなと、核兵器の使用も示唆した。

 

 

 

 

 

 

 


ロシア、ウクライナ侵略戦争開始から7カ月➋—待たされるプーチン大統領の孤立、ロシアとの距離を取りはじめた国々

2022-10-01 06:37:12 | 滞在記

 この9月14日から16日にかけて、中央アジアのウズベキスタンの歴史的古都・サマルカンド(「世界遺産都市・青の都と呼ばれる」)で上海協力機構(SCO)の首脳会議が開催された。ロシアによるウクライナ侵略戦争が始まって7カ月余りとなったこの時期、9月上旬にはウクライナ軍による反転攻勢によりハルキウ州全域をウクライナ側が奪還するという戦況もあり、このSCOでの首脳会議に世界の注目が集まった。

 このウクライナへのロシア・プーチン大統領による侵略戦争の今後の行方を左右する、中国・習近平国家主席、インドのモディ首相、そしてロシアのプーチン大統領などがこの首脳会議に集まるからだ。この世界的に注目される会議がサマルカンドで開催されるため、国立サマルカンド外国語大学に勤める友人(夏休みのため日本に一時帰国中)から、「SCOの会議が終了するまで、日本からウズベキスタンに渡航するのは見合わせてほしいとの大学からの連絡がありました」とのLINEメールが入った。サマルカンドは世界の要人を迎え、超厳戒態勢だったのだろう。

 この上海協力機構(SCO)は、現在では巨大な政治・経済面での世界的組織となっている。発足したのは2001年、中国とロシアが中心となり設立した。2022年現在の加盟国は8カ国(中国・ロシア・インド・パキスタンと中央アジアのカザフスタン・キルギスタン・タジギスタン・ウズベキスタン)だが、ベラルーシやイランなども今後の加盟国として認められている。さらに、準加盟国(オブザーバー参加国)としてイランなど、かなり多くの国々があり、また、トルコなど、対話パートナー国も多い。今回のSCO首脳会議には、トルコのエルドアン大統領なども参加している。このSCOの首脳会議は毎年開催されており、今回は第22回目となる。(トルコなどは、SCO加盟を申請中)

 現在の8カ国の加盟国だけでも、ユーラシア大陸の面積の5分の3以上、世界人口の40%以上、世界全体のGDP(総生産額)の20%以上を占める巨大な組織だ。SCO組織の全体事務局は中国の北京にある。今回、ウクライナ侵攻を行ったロシア・プーチン大統領にとって、この組織に参加している国々、とりわけ中国とインドのロシア支持や支援は最も頼みとするものだ。

 だが、頼みとするSCOの全体会議でも、中央アジア諸国や中国・インドのプーチン大統領との個別会談でも、プーチン大統領にとって落胆せざるを得ない結果となった。各国がロシアと距離を取り始めていることが明らかになったからだ。

 9月15日に、サマルカンドで中国・習近平主席とロシア・プーチン大統領との、2月24日から始まったロシアのウクライナ侵略戦争後に初めての対面会談が行われた。プーチン大統領としては、中国からの軍事的支援などを喉から手が出るほど欲しかっただろうが、習近平主席からはウクライナとの戦争に関することは特に持ち出されず、「両国の結束」の確認はされたものの、プーチン大統領と距離をとる態度と報道されていた。プーチン大統領からは、台湾問題での中国支持を重ねて強調し、ウクライナ問題については、自ら切り出し「中国の(ウクライナ問題への)バランスの取れた対応を評価しています。また、中国側の(ウクライナ問題への)疑問や懸念を理解しています。」と述べるにとどまった。お互いに「笑顔なし、共同声明なし」とも報道される。

 そして16日には、同じくサマルカンドでインド・モディ首相とロシア・プーチン大統領との会談が行われた。この会談でモディ首相は、「私たちは"民主主義""外交""対話"、これらが世界で大切だと何度も話し合ってきた。今は(ウクライナとの)戦争をしている時ではないでしょう」とプーチン大統領を批判した。これに対し、プーチン大統領は、「あなたの懸念は理解しています。こうしたことが一刻も早く終わるように手を尽くしていきます」と答えたと報道されていた。

 9月16日付朝日新聞には、「中ロ首脳、結束を強調—ウクライナ侵攻後、初会談」「苦悩ロシア、強まる中国依存—習氏"共に混乱した世界の安定を"と―中国・軍事支援には慎重、中央アジア4カ国板挟み」、17日付には、「SCO、妥協の共同宣言—欧米への激しい批判避ける」などの見出し記事。9月14日付の夕刊フジには、「苦境ロシア崖縁—プーチン、習に支援懇願か」の見出し記事。

 この9月14日から16日にかけて、プーチン大統領はSCO加盟の諸国首脳やオブサーバー・対話参加諸国などと立て続けに会談をしているが、今のロシアの立場を象徴するように、「会談に臨み、プーチン大統領が先に会場に来て、待たされている姿」が印象的だった。(「遅刻魔、待たせ魔」で有名だったプーチン大統領だったのだが‥。立場が逆転もしてきている。プーチン氏にとっては、とても屈辱感を感じていたことだろう‥)

 SOC加盟の中央アジア諸国のうち、ロシアとの6か国の軍事同盟「集団安全保障条約機構(CSTO)」にはカザフスタン・キルギスタン・タジギスタンが加盟している。(他に、ベラルーシ・アルメニア)  ロシアのウクライナ侵攻後、ロシアとの距離を取り始めたこれらの中央アジア諸国。(中央アジアでは、ウズベキスタンとカザフスタンの二国が中心的な国家。) 

 8月10日~20日までの10日間、アメリカとの合同軍事演習に参加してもいる。(米国とカザフスタン・キルギスタン・タジギスタン・モンゴル・パキスタンとの合同軍事演習) 特にロシアと長大な国境を接する国であるカザフスタンのトカエフ大統領は、6月には「ウクライナ東部の分離独立ロシア派の共和国の独立を認めない」と発表、8月にはプーチン大統領からのウクライナ派兵協力を拒否している。これまでのロシア中心の協力・依存から中国を中心とした協力・依存関係にシフトしているのが、今の中央アジア諸国。さらに、欧米日などとの協力関係も同時に志向している。

 ■このように、頼みの綱ともしていた上海協力機構(SOC)諸国などから距離を置かれ、ロシアの国際的な孤立化が見られ始め、9月以降のウクライナ国内での戦況の悪化などに直面したロシア・プーチン大統領の、局面打開へ打った手が、やむに已まれぬというか、一か八かの「国民の軍事動員令」と「ウクライナ東南部4州の住民投票実施とロシア強制併合」だった。

 G7国の一つであるイタリアに、この9月下旬にポピュリズム極右政権とも言われる政権が誕生した 。9月27日付朝日新聞には、「対ロ制裁へ同調、不透明—伊・右翼政党勝利/過去に反EUの主張—物価高、極右に追い風」などの見出し記事。イタリアの新たな首相には、第一党となった「イタリアの同胞」メローニ党首(40代女性)が就任する見通しだ。このイタリアの政局には、プーチン大統領は喜んだことだろう。

 だが、ブラジルのトランプと称されるブラジルのボルソナロ現大統領は窮地に立っている。ロシアのウクライナ侵攻に異議を唱えず、支持もしているかのような振る舞いのボルソナロ氏。明日、10月2日(日)に大統領選挙が行われるが、最新のボルソナロ氏への支持率は31%。それに対する、ルラ元大統領への支持率は48%となっている。面積的にも人口的にも準大国のブラジルだけに、ウクライナ問題への影響は多少なりとも大きい。

■ロシアは面積は世界一だが人口は1億4000万人と、日本より少し多いくらい。ガス・石油などの天然資源が豊かだが、現在の世界でのGDPは世界第12位と韓国より小さい。ただ、核兵器数は6000発とアメリカと並ぶ軍事大国。この軍事力の低下(ウクライナでの戦況の推移から、思ったほどロシア軍は通常兵器では強くないと世界的に思われてきている。)が、世界各国のロシア離れを促してきてもいる。距離を持ち始めた世界各国に対し、「いまに見てろ、私を待たせた国の首脳にも、ロシアの本気の力を示したるわ」と非常手段としての国民への軍事動員令を発布・実行してきているのが、現在の状況か‥。ロシア国民に不安と戦争終結の世論が高まり始めているロシアだが、「プーチンの終わりの本格的始まり」となればいいのだが‥。