10月1日付朝日新聞、「ロシア、4州強制併合—ウクライナ侵攻、プーチン大統領が宣言"編入決定は住民の権利"と」「誤算ロシア 併合急ぐ—苦しい戦況、動員令で国内混乱/欧米、追加制裁の構え、中国は賛否を明言せず」「奪われた故郷 きっと戻る―苦渋の避難"永遠にロシアにならない」「併合は違法で無効」などの見出し記事が掲載される。
9月30日、ウクライナ東部・南部の4つの州での「ロシア併合の賛否を問う住民投票の結果、90%の賛成多数」を得たとして、4つの州の親ロシア派代表者とプーチン大統領がモスクワで会合を開き、プーチン大統領は4州のロシア領併合に署名した。そして、今日10月1日、ロシア・モスクワの赤の広場では、「ロシア併合を祝う」大規模な式典が開催された。
9月21日に発表された大規模な徴兵動員令により、ロシアから国外に逃れる人が多く(9月30日時点で20万人超と報じられる。)、また、動員令や戦争に反対する抗議デモなどがロシア全土で起こり、国内が混乱しているロシアだが、9月27日にロシアのプーチン大統領を訪れたベラルーシのルカシェンコ大統領は、「ロシアには予備兵が2500万人もいるんだろう。3万人だろうが5万人だろうが、(ロシア国内から)逃げるなら、逃げてしまえばいい。プーチン大統領よ、あまりそんなことぐらい気にするな」とゲキをとばしたと報道された。このロシア人の国外への多くの避難のことはロシア国内では、報道規制がされていてほとんど報道されてもいないとも伝わる。
フィギィアスケート界の「皇帝」とも言われるロシアのプルシェンコ氏(39歳)。日本の羽生結弦氏は彼に憧れ敬慕し、「プルシェンコを目指して練習してきた」とも言われる。プルシェンコ氏は現在、ロシア国内にフィギィアスケート教室を主宰し、ロシアフィギュア界のドンになることを目指し、そのためにプーチン大統領に忖度し忠誠を誓う人物とも言われている。
そして、この徴兵動員令に対し、「残念ながら、多くの人が(ロシアを)去って行った。もし、召集令状がきても、私は逃げない。喜んで戦闘訓練を受けたいと思う。私たちは、子供たちと未来を守らなければならない。これが私の立場です」と明言した。このプルシェンコ氏のプーチン大統領への強い忠誠は、ロシア国内では「愛国者の見本」として大きく報道されてもいることだろう。これまでも愛国発言や愛国ショーを開き、プーチン大統領への強い忠誠を見せているプルシェンコ氏。残念ながらどこまでもプーチン大統領と一蓮托生のようだ。(ロシアのプルシェンコ、中国・香港のジャッキーチェンといった感がある。)
9月下旬、日本のテレビ報道番組(ABC系列)「大下容子ワイドスクランブル」では、ロシア人の多くが国外に逃れる実情やウクライナ東部・南部4州でのロシア併合への賛否を問う住民投票の実態などについての報道がされていた。「最後の最後で、ロシア出国を決意しました」と語る男性の映像、ロシアとジョージアの国境付近の道路では、数十キロもの車の列が続き大渋滞、ジョージアに入国するのに48時間待ちとの映像などが報道されていた。
また、ウクライナ支配地域のウクライナ人を戦場に投入、前線では、「督戦隊(とくせんたい)」がロシア軍側に存在し、動員兵を後方から監視し、兵士が命令がないのに退却したり、降伏したりした場合、後方から攻撃を加え強制的に戦闘を続行させる部隊の存在も報じられていた。
さらに、ロシア支配地域のルハンシク州では、18歳以上の男性全員にロシアからの召集令状が届いていること。ルハンシク州のカイダル知事は、「6カ月前から、兵士として使える全てのウクライナ人男性が連れ去られ、多くは戦死した。そのためこの場所(ルハンシク州)は、"女性人民共和国"と呼ばれてもいる」と語る。同じくロシア支配地域のサポリージャ州とヘルソン州では、親ロシア派などからロシア旅券(パスポート)の交付を受けたウクライナ男性らに対し、すでに動員が始まっていることなども報道されていた。そして、ロシアの報道官は、「ロシアはドネツク州などの完全掌握まで戦闘を継続する」との声明が報じられてもいた。
そして、今回の4州での「住民投票」に関しては、「誰もロシアら投票するつもりはありません」「皆、基本的には投票に行きたくないと隠れているのです」(サポリージャ州)などと、その実情を語る人々の映像が報道されていた。
このような状況下、ロシアと長大な国境を接するカザフスタンでは、「ロシアからの入国者は、9月21日から24日の4日間だけで約10万人にのぼった」として、カザフスタンのトカエフ大統領は、「絶望的な状況によりロシアからの出国を余儀なくされている彼らの世話をし、安全を確保する必要がある」と述べ、9月27日にロシアからの出国者の支援を表明した。また、トカレフ大統領は、「今回のロシア併合への賛否を問う住民投票は認めない」との声明をも出した。
同じく、9月下旬には、日本のTBS系列のBS報道番組「報道1930」では、その「住民投票の実態」について、ロシアが報道発表した住民投票の結果は、「①ヘルソン州—賛成87.05%、投票率76.9%、②サポリージャ州—賛成93.11%、投票率85.4%、➂ドネツク州—賛成99.23%、投票率97.5%、④ルハンシク州—賛成98.42%、投票率92.6%」となっているが、これは「ものすごいフェイク」の住民投票結果であるとして、ドネツク州マリウポイ市長顧問のアンドリュシェンコ氏が取材に応じている映像が報道された。
アンドリュシェンコ氏によれば、「マリウポイ市での住民投票は、有権者の1割にも満たずの2万人程度だった。このうちの1万人あまりは、自宅に銃を持ったロシア兵などが押し寄せ、強制的に賛成投票をさせられるなどの人々。数々の不正があった。まったくのフェイクの投票結果‥」とのこと。これが、他の市、他の州での住民投票の実態だろうかと思われる。実際の住民投票の結果は、自らの意思で投票を行った人の割合(投票率)は、5%~20%程度(州によって異なる)と推定される。この実際の投票率から推測するに、実際の賛成は多く見積もっても20%以下、反対は80%以上だったのではないだろうか。
同報道番組「報道1930」では、最新の(動員令発表後)ロシア世論調査の結果が報道されていた。世論調査を行ったのは、ロシア独立系世論調査機関「レバダセンター」。その世論調査の結果が9月29日に発表された。その世論調査には、プーチン大統領が発表した予備役の動員令に対し、国民の過半数が不安や怒りをもっていることが明らかとなった。以下、その世論調査結果について。(■前回は8月下旬の世論調査)
Q1「プーチン大統領を支持するか」 前回83%(支持)➡今回77%(支持)※−6%、前回15%(支持しない)➡今回21%(支持しない)※+6% [※ウクライナ侵攻前のプーチン大統領の支持率は、65%だった。]
Q2「ロシアは正しい方向に向かっているか」 前回67%(正しい方向)➡今回60%(正しい方向)※−7%
Q3「部分動員についてどのように感じているか」 47%(不安)、23%(ショック)、13%(怒り)、11%(混迷)、5%(恥)。[否定的に感じた人の割合は、70%余りにのぼっている] 一方、23%(誇り)、6%(満足)、6%(前進)。[肯定的に感じた人の割合は30%余りとなつている]
Q4「戦闘を続けるべきか、和平交渉を進めるへきか」 (絶対に・どちらかというと)戦闘を続けるべき—前回48%➡今回44%(※−4%)、(絶対に・どちらかというと)和平交渉を進めるべき—前回44%➡今回48%(※+4%)
■この世論調査結果について、レバダセンターのグドゥコフ副所長は、次のように語っていた。「最新の世論調査は、部分動員令が発表された時点で行われました。支持率は明確に下がり、和平交渉や戦闘停止を望む声は上昇し、約半数の48%が停戦に賛成しています。つまり、プーチン政権の支持の低下は今後も続くと思います」と。
ロシア国内の世論に、変化が出始めているようだ。