彦四郎の中国生活

中国滞在記

中国共産党大会、新指導部体制が選出される―習近平氏の1強体制の完成、4期目も視野の人事か

2022-10-31 16:56:45 | 滞在記

 中国では、世界が注目する第20回中国共産党大会(5年に1度開催)が10月16日から開催された。それに先立ち、10月9日からは「7中全会」(第19期中央委員会第7回全体会議)が12日まで開かれた。これは、党大会への準備会議だ。そして16日からの共産党大会では、三期目の就任が予測されている習近平中国共産党総書記(国家主席・中国共産党人民解放軍主席)による政治報告が行われた。共産党大会では、中央委員の選出、中国共産党規約の改正なども行われ、大会最終日にその内容が発表された。(※「中央委員」は、おおむね年1回の全体会議開催。「政治局委員」の会議は月に1回開催。「政治局常務委員」の会議は週に1回開かれる。共産党党大会は5年に1度の開催。)

 23日まで開催された中国共産党大会閉幕後、すぐに1中全会(第20期中央委員会第1回全体会議)が開かれ、200名余りの中央委員の中から、25人の政治局委員と、さらにその中から7人の政治局常務委員(チャイナセブン)が選出された。そして1中全会後、国内外の記者団の前で、その25人及びチャイナセブンが初めて発表されることとなった。

 この25人の政治局委員、とりわけ7人の政治局常務委員に誰が入るのか‥。世界の注目の中、共産党大会前にとりざさ(予測)されていた新チャイナセブンには、習近平氏をトップとし、李強氏(上海市書記)、胡春華氏(副首相・政治局委員)、汪洋氏(政治局常務委員)、丁薛祥氏(中央規律検査委員会書記)、陳敏爾氏(中央書記処常務書記)、黄坤明氏(国務院常務副総理)などの名前がとりざさされ、挙げられていた。

 また、今回の党人事では、68歳定年に伴う年齢的な問題で退任が濃厚な人物として、劉鶴氏(対外経済政策トップ)、楊潔篪氏(外交部門トップ)、孫春蘭氏(副首相/トップ25人の中で唯一の女性)、陳全国氏(新彊ウイグル自治区前書記/ウイグル族への人権問題の中心人物)などの名前が挙げられていた。そして、25人のトップへの昇格をする可能性のある人物として、王毅氏(外交部長・外相)、何立峰氏、馬興瑞氏、王小淇氏らの名前が挙げられていた。

 10月23日、中央委員会全体会議を経て、新しいチャイナセブンとして400人余りの国内外の記者団の前に現れたのは、習近平総書記を先頭に、(以下、序列を表す)、李強氏、趙楽際氏(チャイナセブン留任)、王滬寧氏(チャイナセブン留任)、蔡奇氏(前北京市書記)、丁薛祥氏、李希氏(前広東省書記)の7人だった。丁氏と李氏の二人以外は、事前に予測された最有力候補ではなかった。

 翌日24日の中国共産党機関紙「人民日報」では、一面記事の3分の1もの大きさの習近平氏の顔写真が掲載された。だが習氏以外の6人の顔写真は第3面に掲載された。最高指導部を側近で固めた習氏の権威の高まりを示すもので、これまでの集団指導体制の形骸化の表れと指摘もされる。同紙は、「偉大な事業には人々の期待を集める領袖(りょうしゅう)が必ずいる」と、中華人民共和国建国の父・毛沢東に使われた呼称の「領袖」を使って習氏を礼讃した。

※写真5枚目は胡春華氏

 2017年からの、これまでの5年間のチャイナセブンは、習近平国家主席をトップとして、他の6人は、習氏の側近や派閥が2人(趙楽際・栗戦書)、中立2人(王滬寧・汪洋)、そして習氏と距離をとる人(李克強首相・韓正)2人という、ある程度バランスのとれた構成だったので、習氏の政策にある程度のブレーキをかけることも可能ではあった。だが、今回の新チャイナセブンは、中立の王滬寧氏以外は、習近平氏の子飼いの部下・側近・崇拝者などで固められた。習氏1強体制の完成人事だった。

 李克強氏の弟分とも、将来の主席候補・中国共産党トップ候補ともかっては目されていた共青団(共産主義青年団)出身の胡春華氏(政治局委員)は、25人の政治局委員から、200人余りいる中央委員に降格させられ、完全に封じ込められた。序列NO2となった李強氏は、習氏が浙江省書記(トップ)だった時代の秘書長で、「ゼロコロナ政策」のもと、この3月下旬から6月上旬までの2カ月間以上のあの熾烈な上海都市封鎖を行った人物でもある。新チャイナセブンのメンバーを見る限り、習近平氏の3期目以降の新指導者候補は見当たらず、習氏が3期目だけでなく、4期目、あるいは5期目をも目指す考えを反映しているとの憶測が広がってもきている。

 ※写真3枚目は、陳吉寧氏。5枚目は王毅氏。

 新人事で序列NO2の李強氏が李克強氏に代わって首相の地位となると予想されている。そして、中国経済の牽引役として、劉鶴氏に代わって、何立峰氏がなるとみられている。何氏は習近平氏が福建省勤務時代からの弟分的な人物とされるが、金融部門には専門外の人物とも言われている。人民解放軍トップ3の一人、中央軍事委員会の副主席には、何衝東氏が就任予定で、彼は「対台湾政策」の強硬派として知られている。政治局委員25人の中には、尹力氏(福建省書記)の名前も。これらは、台湾対策の(武力侵攻含む)の強化人事の一つとみられている。

 特に、新たな人事での外交部門トップの名前として、退任する楊潔篪氏に代わって王毅氏が筆頭に挙げられている。あの、他国への強硬な「戦狼外交」の立役者でもあるのが王毅氏だ。68歳定年の対象外の人物としての昇格となりそうだ。新たな上海市書記(トップ)には陳吉寧氏が就任した。次期、チャイナセブンの候補の一人となるだろう。

 このように、中国共産党新指導部は、習氏の側近などの習派以外は徹底排除(ほぼ消滅)された人事が特徴的だ。

 10月23日付朝日新聞には、「習氏に権力集中 加速—ブレーキ役 李首相退任」「習体制"外様"退場—集団指導体制に終止符/李克強氏 コロナ対応でも(習氏とは)違い」「68歳定年の不文律 目立つ例外—最高指導部7人中4人退任/胡錦濤氏 腕つかまれ退席」などの見出し記事。同紙24日付には、「習氏1強が完成 新体制—後継者不在 4期目も視野か」「"外様"排した"王国"」「共青団 指導部から一掃—"ホープ"胡春華副首相が中央委員に降格」などの見出し記事。同日、「習氏3期目へ 制約なき権力は危うい」の社説記事。

 10月23日付京都新聞には、「習派 指導部ポスト独占 集団指導体制瓦解」「"皇帝"終身支配視野か―習氏異例の3期目/ゼロコロナ 軍備強化 続く」「習氏3期目 イエスマン体制」「中国 戦狼外交 継続へ」などの見出し記事。

 10月25日付朝日新聞には、「習氏の権力集中"想定以上"中国の新指導部 日本政府に警戒感」「トップ24人 習氏 独自色」「習氏に誰がノーと言える? 中国共産党体制 各国メディア/米中対立増幅」「習氏3選1強の意味—○人権・安全保障も"中国式"加速 ○失った"内省力"危うい個人礼賛」などの見出し記事。

 10月26日・27日・28日・30日付朝日新聞には、「中国IT 株価軒並み下落 ―アリババ、百度 前週末比 1割超」「中国経済 冷める世界の視線—上海封鎖で見えた危うさ」「習氏3期目 経済発展に不安—"子飼い"でポスト独占/薄れる西側とのパイプ/崩壊しない不動産バブル—政府介入で資産偏在」などの見出し記事。「習近平氏と新権威主義」と題された社説。

 10月27日付「夕刊フジ」には、「ブレーキ役不在で 企業統制強化」「習氏3期目、独裁強化の今後」などの見出し記事。