彦四郎の中国生活

中国滞在記

日本三大、大学自治寮❸日本一の大学キャンパス、北海道大学の恵迪寮、濃厚なバンカラの伝統も

2022-10-24 06:02:56 | 滞在記

  北海道大学は1876年(明治9年)に設立され146年の歴史をもつ。大学構内(キャンパス)は日本一の広さをもち、また、キャンパスの歴史的建築群や自然環境など、まさに「日本一」と評価される大学キャンパスである。私の娘がこの北海道大学に学生として在籍していたため、10回あまりこの北海道大学を訪れたことがあった。

 2月上旬の札幌雪祭りの季節、5月の新緑と桜、ライラックの花が咲く季節、6月上旬の「北大祭」や「サッポロ全国ソーラン祭り」の季節、夏7〜8月の北海道の季節、紅葉の美しい10月~11月の季節など、四季折々の北海道大学を眺めてきた。大学の正門を入り、しばらく進むと大学構内を流れるサクシュコトニ川が流れている。このほとりは夏、ビアガーデンにもなっていた。原生林も多い大学構内の木々にはリスがけっこう見られる。

 全前号でも紹介した、2009年1月6日付朝日新聞の「日本一のキャンパス—大志ここにあり」の見出し記事には、このような北海道大学構内の光景と大学の恵迪寮(けいてきりょう)のことが紹介されていた。かってこの寮で暮らしたことのある俳優の牟田悌三さんの談話も載せられていた。

 この大学の印象の一つは、やはり大学の雰囲気に「自由と自治」があると感じることだ。それは、京都大学の「自由と自治」の雰囲気とは少し違っていて、あまり学生の政治的な主張は強くはないが、「ほのぼのとした大学の伝統を守ろう」という気概は感じる。例えば、4月~5月に行くと、理学部本館や総合博物館前の芝生広場などの大学構内で「ジンパ」と呼ばれるジンギスカンバーベキューを何団体ものサークル(部)やクラスなどで集まってやっていて、ビールで乾杯をしている光景、大学祭の自由な雰囲気の光景などを見て感じた。そして、400人余りが暮らす大学の「恵迪寮」の光景など‥。

 恵迪寮の歴史は、大学の開学(1876年)と同時に始まっている。その木造2階建ての寮の、かっての寮舎の建物の一部は現在、札幌市郊外にある「北海道開拓村」に移築保存されている。その建物内には、かっての寮生活の写真が多数、展示されている。

 いわゆる「バンカラ」そのものの伝統的寮生活の光景である。この恵迪寮には、寮開設とともに今も続けられている伝統行事がある。「鈍才(どんさい)会」である。これは寮の講堂で、先輩たちがずらりと居並ぶ中で、新入寮生たちは、1人ずつパフォーマンスをさせられる。先輩たちから「合格」をもらえるまで何回でもやらされる。どんな成績優秀な者も、ここではまず、「鈍才」に戻れということを目的にした伝統行事だ。へたなプライドを捨てさり、「アホな鈍才」を尊ぶ気風の寮の伝統でもある。また、1900年代に入り、2階に続く階段の窓から、地上に積まれた雪の山に向かって赤ふんどし一枚の全裸で飛び降りる行事も続けられているようだ。

 恵迪寮の寮歌は「都ぞ弥生」。「都ぞ弥生の雲紫(くもむらさき)に‥」の歌詞で始まる日本三大寮歌の一つだ。入学式や卒業式、大学祭でも歌われる。あとの二つは、東京大学の(旧制第一高等学校)寮歌「鳴呼(ああ)玉杯(ぎょくはい)に」。「ああ、玉杯に 花受けて‥」の歌詞で始まる。そして、京都大学の(旧制第三高等学校)寮歌(逍遥歌)「紅萌ゆる」。「紅萌ゆる丘の花‥」の歌詞で始まる。今、京都大学そばの吉田山の山頂には「紅萌ゆる碑」がある。

 ちなみに、寮歌ではないが、早稲田大学の校歌として「都の西北」がある。「都の西北 早稲田の森に‥」で始まる校歌だがこれも有名だ。また、中央大学の学生歌である「惜別の歌」も有名だ。「遠き別れに 耐えかねて‥」で歌詞は始まる。この歌詞は島崎藤村の詩集『若菜集』の中の「高楼(たかどの)」という詩をもとにして作詞されたもの。

 秋の紅葉が見ごろな時期に北海道大学に行った時、たまたま「恵迪寮祭」が行われていた。この寮祭は10月上旬から約1か月間にもわたって行われるが、学生以外の一般人への参加(解放)が11月上旬に行われていたので行ってみた。寮の入り口付近は、嘴(くちばし)の大きなハシブトガラスがたくさんいて、人に向かって来るので、傘をさして防いだりもした。寮の中を見て廻った。まあ、カオス的な雑然とした雰囲気の寮。だが、建物が新しいせいか、それなりの清潔感はある。寮室も覗いてみたが、まあ足の踏み場もない感じ。バンカラ生活の伝統は今も続いているという感じだ。

 この恵迪寮は1984年に建て替えられた。A棟からF棟の6棟(寮室棟)と、食堂やホールなどのあるG棟(共同棟)からなる。共同棟を中心に放射線状に寮室棟が配置されていた。

 現在は約500人余りが入寮しているようだ。入寮人数が決まっていて、①日本人学部男子382名、②日本人学部女子90名、③日本人大学院生男子50名、④外国人留学生男子40名、約600人の入寮定数という内訳だ。寮室は10人余りの大部屋と一人の個室がある。寮費は1か月4300円(光熱費・水道費別)。1994年からは、この恵迪寮に女子の入寮も始まった。

 コロナ禍のため、2020年から対面の大学祭や寮祭などは中止されてきたが、今年2022年度は3年ぶりに対面の大学祭(6月)が行われ、また、7月上旬には「北海道大学VS小樽商科大学」の応援団による対面式が、札幌の大通公園で行われた。北海道大学恵迪寮から、大学構内、札幌市内を応援団の学生たちや、赤ふんどしに一枚の全裸の学生たちのバンカラ集団が練り歩き市民の声援を受けていた。バンカラの伝統は今も続く北海道大学。応援団メンバーのほとんどは、この恵迪寮に暮らしている。

 そして、今、恵迪寮祭が始まっていて、11月上旬の数日間は一般人に開放される。