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まとめ

2010-07-07 12:49:51 | Sports:football(A代表)
 今更各試合のコメントを書くのもどうかと思うので,今大会のまとめとして書いておく.今大会アウェイ初勝利どころか勝ち点6で見事アウェイ初の決勝トーナメント進出を果たした日本.残念ながら引き分けで大会を去ることになったが,この大会が日本サッカー界に残したものは非常に多いと思う.

 その中で最も重要なのは日本サッカーのレベルを確認できたことだ.どんな形であれ世界の舞台で結果を残すことが出来る力が日本にはあり,世界から大きく離れた位置にいるわけでは無いことが分かったのだ.もしこの勝ち点6が無ければ単なる競技レベルの確認にあと4年も待つ必要があったし,待ったところで確認できたかどうか分からなかったのだ.本当に貴重な勝利だった.
 しかもこの結果を残したのが,世界的に無名な監督と選手だ.レギュラーの海外組は本田,長谷部,松井の3人,他は全てJリーグ所属.しかも多くは「谷間の世代」と言われたアテネ組.人材に恵まれた華やかなチームでは無かった.おかげで「黄金世代」なんていう特別な才能が集まらなくても日本は十分に世界と戦えることも分かった.

 このような成果が出せたのは前回の惨めな戦いがあったからだ.もし前回選手がまとまっていれば,中村の得点でチームは自信を持ち今回のような,いや今回以上の躍進もあったかもしれない.
 その場合,まとまることの重要性は今回ほど理解できていなかっただろうし,躍進した経験も「黄金世代だから」と,日本全体の自信には繋がっていなかったように思う.
 つまり「黄金世代でもまとまらないと結果を残せなかった」という非常に辛い「経験」が今大会の躍進の大きな要因となったのだ.

 今回はその経験に加え幸運があった.特別な攻撃の才能が1人と日本で過去最高のCBが2人揃ったのだ.弱小チームが勝ち抜く堅守速攻のキーパーツが揃っていたのだ.ただその幸運も,それを生かしきれない指揮官により潰される可能性もあった.しかし,それさえもまとまった選手たちの指揮官への提言により生かすことが出来たのだ.これも前回の「経験」が生かされたのだ.

 このような経験と幸運によって得た結果により,日本の世界における位置づけは一つ上がった.世界からは中堅国として見られるだろうし,当然アジアの強豪として扱われるだろう.そしてこれが日本の選手には「自信」になり,相手国には「警戒」を抱かせる.この精神的な変化はレベルの高い試合になればなるほど大きな影響を及ぼすだろう.
 もちろん移籍市場におけるJリーグの位置づけも変わるだろう(出て行くほうも,入ってくる方も).これが更なる日本のレベルアップにも繋がるはずだ.


 こういった結果を残した岡田監督.ここではボロカスに書いていたが,特に評価は変わっていない.今大会の彼の最大の功績は中村を切り,コンセプトを捨て,本田中心の堅守速攻スタイルに切り替えたことだと思っている.
 しかし色々情報を集めると,上にも書いたとおりこの判断は選手の提言があってこそで,岡田主導とは言い切れない.直前でコンセプトを変更できた勇気はともかく,その事実自体は決して褒められることではない.しかもそれが選手選考後というのもナンセンスだ.W杯で博打をできた決断力だけは褒めてもいいのかもしれないが失敗していたら(もし本田がカメルーン戦のシュートを外していたら)それこそ袋叩きだったと思う.

 ちなみに今回直前の戦術変更から本番まで1週間も無かったにも関わらず機能したのは,変更したスタイルがある程度形になりやすい守備的布陣だったからだ.とにかくみんなで守れ.みんな頑張れ.漫画に出てくるような弱小チームのやり方だ.攻撃も漫画に出てくるような「あとはお前に任せた」という形で,結果として必要以上にリスクを犯さないスペクタクルの無いサッカーになった.

 そしてこの突貫工事の限界はパラグアイ戦で見えた.それは最後まで有効な攻撃を見せることができなかったことだ.これこそが彼を評価できない最大の理由だ.彼に求められていたのはオシムが仕上げられなかった最後の部分,つまり組織的な攻撃の仕方をチームに植えつけることだった.しかしそれは就任時から全く進歩が無く,結局は選手の調子に左右される個人頼みの攻撃しかできていなかったのだ.
 堅守速攻スタイルと本田によりそれはある程度機能したが,それが通用しなくなった時点でこのチームに攻撃の引き出しは皆無だった.パラグアイ戦がPKになることは試合開始直後の早い段階で予想がついた.もちろん外れること,そして勝利を期待していたが.


 ただ今大会は岡田で良かったのかもしれない.彼のおかげで一つ一つ経験すべきことをじっくりと味わえたからだ.もしオシムだったら経験すべき多くの過程を飛び越えてしまったかもしれない.それは一時的な結果は残せても継続的な強化にはなら無い可能性があった.千葉がJ2にいることがその一つの示唆だと思う.
 各駅停車で経験した今だからこそ,身をもって今を理解したからこそ,今日本に不足している部分を明確にできただろう.それに対する答えを早く見たいものだ.


 次回大会はこの「経験」と「自信」がどう生きるだろうか?少なくとも長い時間準備をして,直前合宿でやり方をがらりと変えるようなことはもう無いとは思うが.


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