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マジック

2007-10-05 22:56:28 | 興行--日本野球--
 リーグ優勝のマジックがどうのこうのと騒いでいる.

 この間までは「プレーオフマジック」などと聴きなれない言葉で騒いでいた.この分かりにくさこそマジックだ(トリックと言う方がいいか?).この騒ぎこそNPBがプレーオフを導入した目的だ.プレーオフがあれば優勝とこの2つのマジックでメディアに盛り上げてもらえる.いやメディアの多くがNPBに関わっていることから言えばメディアが「盛り上げることができる」という方がいいだろう.しかもこの制度であれば,もし首位が独走でもそうでなくてもどこかで盛り上がりを「作る」ことができる.

 しかし今時こんな子供だましの制度で盛り上がるファンなど少ないだろう.そう思って周囲のNPBファンに「どうせプレーオフあるんしょ,優勝しても意味無いし」と質問すると...

 「やっぱリーグ優勝にこだわりたい.最近優勝して無いし」
 「優勝したらプレーオフホームでできるし」

 彼らの真剣な目に思わず笑ってしまいそうになった.彼らは今年初体験のセリーグのチームのファンだ.強い信仰心はこんな子供だましでさえ疑う余地を与えないのだ.彼らは未だにリーグ優勝はそのものが価値があると思い,またプレーオフは別物として楽しめるようだ.


 リーグ優勝はなぜ価値があったか?リーグ優勝の価値は「日本一決定戦出場権獲得」というものがあったからこそ意味があった.(20年以上リーグ優勝していないチーム以外は)リーグ優勝の目的はそれだった.事実リーグ優勝しても日本一になれなかったとき,リーグ優勝の価値さえ否定されるような思いをしたことのあるファンは多いだろう(実際選手もそう言っていた).それだけ「日本一」というものの価値が大きく「日本一決定戦出場権」を獲得できたリーグ優勝の価値があったのだ.

 その重要な挑戦権が今は140試合以上戦って上位3チームに入れば与えられる.優勝して与えられるのはプレーオフのホーム開催権およびそのトーナメントシードのみ.レギュラーシーズンは「プレーオフ出場権獲得リーグ」に成り下がった.どれだけリーグ優勝の価値が下がったかは一目瞭然だ.

 プレーオフなんて制度は不人気およびマイナーな競技が盛り上がりを作るために無理矢理採用する制度だと思っている(bjリーグなんて正にそれだ).普通に考えれば長期リーグ戦を行っているチーム同士のプレーオフなど必要が無いのだから(どのチームが強いかはレギュラーシーズンで十分に証明されているはず).まだ比較的ファンの多いNPBが採用すべき制度で無いだろう.
 人気は凋落しているが,それでも十分な人気はある.NPBは人気が落ちた理由を冷静に分析してその対策となる制度を導入しなければならなかった.

 ファンの希望から生まれていないこの制度は,当然ながら人気の起爆剤にはならない.


 このプレーオフはNPBの人気低下の決定打になるかもしれない.上に書いたような信仰を持ったファンたちが,140試合以上戦った上での優勝を1週間で覆される屈辱と理不尽さを感じたとき,このプレーオフの導入の意味が分かるだろう.盲目な信仰を裏切られた結果が見たいものだ.


 「白熱の優勝争い」とメディアは言っている.優勝翌日の東京では優勝チームのフラッグがあちらこちらで掲げられ,電車ではスポーツ新聞を皆が食い入るように見て,レプリカと帽子をかぶったファンが町中に….70年以上東京に居座っているチームにはそんな子供じみたファンはいないようだ.あの町のチームが優勝したことを気づかせるものは何一つ無かった.

 優勝翌日の東京の風景は,野球がプレーオフをしなければならないくらいの不人気競技にすでになっているのかもしれないと感じさせた.野球ファンはすでに優勝の価値が落ちてしまったと思いたいだろう.

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