木
2020-11-03 | 日記
向こうの林の赤い帯が、茶の帯に変わりました。
今年の紅葉が終わったのです。
それまでの2週間は、紅色のなかで暮らしていましたが、今日からは褐色の空間で
の生活です。
ということは、朝起きて最初に眼に飛び込んで来る色が、赤から茶色に変わること
です。
激しい変化です。
古くから、日本人はソメイヨシノの花弁の散り際を「一年間耐え忍んでドッと咲き
サッと散る」と人生の最期に例えて称讃してきました。
そのわりにみんなしぶとく長生きしていますけど。
桜はキレイなことは確かです。
一方対照的に、春の新緑に始まって、夏の濃緑色、秋の紅葉、そして冬の落葉、
さらに来季への準備、と目まぐるしく変化する、樹木の一年を観察するのも楽しい
ものです。
幸田文さんは『木』のなかで、紅葉を別れに重ねています。
「紅葉黄葉ほど美しい別れ、あるいは終わりといったらよかろうか、ほかに
あるまいと私は思っている。今年のいのちの退き際に、ああも華やかに装
いを改め、しかもさりげなくふっと、なんのためらいもなく、居場所を離
れてしまう。」と述べておられます。
いずれも日本人の繊細な感性を強く揺り動かすのでしょうね。
どんよりした曇り空が、ときおり割れて陽が射すと、褐色の風景にも微妙な濃淡が
あって、それがグレーの空に馴染んでいきます。
一年間がんばった植物たちに「おつかれさま」と声をかけたくなりました。
そんな茶色の世界も残り僅か、モノトーンの世界が待っています。
渡島地方の天気予報によると、今晩平地で初雪が降るそうです。