蓴菜沼2
2016-08-17 | 日記
図書館で今度はイザベラバードさんの伝記を探してみました。しかし残念ながらそれはあ
りませんでした。司書の人に尋ねると「もしかしたら 予算で買えるかも知れませんので申
し込んでください」とのことだったので、差し出された用紙に記入して待つことにしました。
仕事が忙しくなって忘れかけていた頃、そう一か月半程たった時に嬉しい連絡をいただき
ました。「希望の本が入りましたので いつでもどうぞ」でした。
「イザベラバード 旅に生きた英国婦人」によるとバードさんは1831年(天保2)イ
ギリス、ヨークシャーの牧師の家庭のふたり姉妹の長女として生まれています。
若い頃から背中や腰の痛みに悩まされ、医者も手に負えなかったようです。そんな娘にあ
る時お父さんが南方への旅行を勧めたのです。なんとそれが大成功、旅行中は痛みが治まる
というのです。これをきっつかけに一気に旅にはまっていったようです。
もともと好奇心旺盛で文才のあった人だから、行く先々の様子を詳細に書き込んだ手紙を
妹に送り続けていました。これが協力者を得て出版され、国内で大きな反響があったそうで
す。
こんなプロセスをへて世界中を旅して行った人でした。著書も好評で売れ続け経済的にも
良かったようです。面白いことに本国では文筆はほとんどやらずに、もっぱら聖職者の娘ら
しく女性の地位向上や貧困者の救済など草の根の活動をかなり熱心にやっています。
印象としては地味な人です。今時のように人前に出て脚光を浴びたり喝采を受けたり、そ
んな考えは一切なかったようです。
あの時代のイギリスといえば、アヘンを使って中国を植民地化し、日本の若者に資金と軍
艦まで与えて革命を起こさせていたのですから、旅行家探検家にはどうしてもそんな国の意
向が働きます。あるいは特定の宗教による布教活動の場合もあります。
しかし今回二冊の本を読み終えて感じたことは、バードさんは何事にもとらわれず自由に
好奇心のおもむくままに旅をして、見たもの感じたことを自分の感性のままに書き綴ってい
く、ただそれがワクワク楽しくてしかたがない。そして本が売れれば次の旅行の資金が捻出
できる、背中も腰も痛くない。こんなピュアでシンプルな生き方だったように思うのです。
晩年ご主人と妹を亡くした時期は相当大変だったようです。物静かで優しくむしろか弱いと
さえ見えるその姿からは想像もつかないスケールの大きな73年間の人生でした。
バードさんと通訳(通詞)の伊藤さんがこの蓴菜沼で宿泊したのは開拓使が使っていた宮崎
旅館だそうです。今はありません。
この湖岸であの時と同じ風景を、チョコンと見えるギザギザの駒ケ岳の山頂を眺めていると
138年の歳月を一気にタイムスリップして、すぐ近くにお二人が居るような気がしてくるか
不思議です。
八月も半ばを過ぎて少し寂しげな晩夏の風になってきました。相変わらず真っ白なスイレン
は上を向いて静かに開いています。
動(yurugi)