梅之芝居日記

歌舞伎俳優の修行をはじめてから15年がたちました。
日々の舞台の記録、お芝居ばなし等、お楽しみ下さい。

巡業日記10・康楽館二日目の巻

2005年07月09日 | 芝居
康楽館公演二日目。舞台の寸法にも慣れてまいりました。
今日はこの劇場の楽屋についてお話したいと思います。
昨日も書きましたが、ここの楽屋は舞台裏と繋がっております。楽屋部分のみ二階建てで、上の階が幹部俳優さん、下が名題、名題下俳優が使用しております。どちらも小さい部屋ばかりですし、お手洗いも一箇所、お風呂も一箇所、洗面台は二つと、大勢では使いにくい環境ではございますが、皆々譲りあいで、込み合わないように使用しております。
楽屋の壁は板壁なのですが、ここにちょっと珍しいものが残されております。過去にこの小屋を訪れ芝居をしてきた、様々なジャンルの役者達の、<落書き>が記されているのです。判読できるもので古いものは、昭和一ケタのもの。歌舞伎ではなく大衆演劇の一座と思われます。その他歌劇、浪曲劇(浪曲に合わせて演技をするもの)、舞踊団、戦後では新劇、ひとり芝居、落語、講談、色々な座組みの出演者が、自分の名前や公演名、この小屋に出演した感想などを書き残しております。
現在でも活躍しておられる芸能人、俳優女優のお名前も沢山ございまして、ああ、この人たちもここに来たんだなあと、感慨深いものがございます。
もちろん歌舞伎の一座のものもございまして、ここ康楽館で歌舞伎が恒例となった昭和六十二年からのものがしっかりと残っています。すでに亡くなられた方、名前が変わった方、この世界から去られた方の名前もございまして、こちらも色々な思い出が湧き上がってまいります。
私はこの劇場は三回目の出演です。初めて訪れた平成十二年七月に、私も壁に一筆書かせて頂きました。ちゃんと残っていてなんだか嬉しくなりましたが、はてさて今回は何を書こうものやら…。