梅之芝居日記

歌舞伎俳優の修行をはじめてから15年がたちました。
日々の舞台の記録、お芝居ばなし等、お楽しみ下さい。

神帰月稽古場便り・参

2007年10月31日 | 芝居
『種蒔三番叟』と『土蜘』の<初日通り舞台稽古>。
師匠の後見を勤めるのは考えてみたら5月の『勧進帳』以来で久しぶりでした。後見としての舞台勘が鈍っていないか心配でしたが、仕事が少ない、忙しい用事がない後見ですので、落ち着いて勤められまして、半年ぶりの後見、まずは無事にしおおせました。明日からはより洗練された動きをとれるよう努力いたします。
この『種蒔三番叟』、歌舞伎座で前回上演したおり(平成10年11月)は松羽目の舞台面だったそうですが、今回は後藤芳世氏による新たな装置で上演いたします。<芝居の正月>顔見世興行にふさわしい、華やかで典雅な舞台面となっておりますので、どうぞお楽しみに。

『土蜘』では、師匠は松嶋屋(仁左衛門)さん、加賀屋(東蔵)さん、京屋(芝雀)さんと、間狂言を勤めますが、小姓役で、加賀屋(東蔵)さんのお孫さん、玉太郎坊ちゃんがご出演。先日のNHKでの『寺子屋』で菅秀才をお勤めになったばかりですが、引き続いての舞台出演、とっても楽しそうでいらっしゃいました。

さあ、ハロウィンの翌日は歌舞伎座の初日です。いよいよ秋も深まり、時折の冷え込みに思わず震えることもしばしばですが、どうか皆様体調にはご注意なさって、顔ぞろいの歌舞伎座興行へと足をお運び下さりますよう…!

神帰月稽古場便り・貳

2007年10月30日 | 芝居
今日は昼過ぎに『土蜘』の<総ざらい>のみでしたので、あっという間にお稽古は終わってしまいました。
そこで、本日いち早く初日を迎えた《松竹大歌舞伎》秋の巡業公演を拝見しに、浅草公会堂へお邪魔しました。

澤瀉屋(亀治郎)さんを中心とした座組で、『奥州安達原』いわゆる「袖萩祭文」と、『吉野山』の2本だてです。どちらの演目も、澤瀉屋さんのお家に伝わる独自の演出がございまして、拝見していてとても興味深いものがございました。
公会堂は大変な賑わい。大入り満員で客席の熱気もものすごいもの。お芝居への反応もよく、おおいに盛り上がりましたが、1日のうちに貞任と忠信という主演2役を、2回公演でお勤めになる澤瀉屋さんのお元気さ! たまたま隣り合わせで拝見した先輩も驚いていらっしゃいました。

神帰月稽古場便り・壱

2007年10月29日 | 芝居
今日から歌舞伎座『吉例顔見世大歌舞伎』のお稽古です。
師匠は昼の部序幕『種蒔三番叟』の<三番叟>と夜の部3幕目『土蜘』の間狂言<番卒次郎>。私は『種蒔三番叟』の<裃後見>を勤めさせて頂きます。素顔の後見でございますから、今月の私は、終日ノーメイクです。

さて、本日は午後4時から<顔寄せ>、引き続いて『土蜘』の<附立て>、『種蒔三番叟』の<附総>でした。
『土蜘』は、ご存知の通り音羽屋(菊五郎)さんの家の芸<新古演劇十種>の内。振り付けは初演以来の花柳流でございます。これまでは花柳壽楽師がご筆頭になってお稽古にお見えでしたが、先年お亡くなりになりましたので、当月は、花柳錦之輔師、花柳典幸師、花柳泰輔師、花柳錦吾師がいらっしゃいました。泰輔師と錦吾師は、私たち14期生が研修中ずっとご指導いただいた<先生>でございます。久しぶりにお目にかかり、少々緊張も混じった懐かしさがございました。

『種蒔三番叟』は藤間の御宗家の振り付けでございます。今日が<附総>ですから、稽古場での稽古は本日1回のみ。緊張いたします。とりわけて大変な仕事こそございませんが、<三番叟もの>にふさわしい格をくずさぬよう、無駄のない綺麗な後見を勤められたらと思っております。

当月は顔見世月ということもあり、出演者の総数は大変なものです。名題下部屋も50名を超しておりますが、実は今月の上演演目は、名題下から出るお役が大変少のうございまして、お役のない者がほとんどなんです。狂言立てによっては、こういうことも時折ございます。

本番とパーティー

2007年10月28日 | 芝居
『古典芸能鑑賞会』の本番。「寺子屋」一幕無事に終了いたしました。
私にとって久しぶりの黒衣。源蔵の後見は、舞台にこそ出ませんが、裏では色々と仕事もあり、とても勉強になりました。

本日御覧になった皆様、松王丸の<刀抜き>の首実検、いかがでしたでしょうか。…首桶を前に、果たして我が子が身替わりになれたのか、そうでなければどうしようか…と、松王が逡巡してしまうのをみて、いらついた玄蕃が自分で首桶の蓋を開け、さあどうだ、とばかりに松王に突きつける。その事態に思わず刀を抜いて反応してしまった松王、これはいけないと刃先を源蔵夫婦に向け威嚇した体を見せ、上手を向いた形で実検に入る…という手順。普段見慣れた正面向きに首と相対する演出とは、だいぶ違ったやり方でしたね。

終演後は、いつも女形の鬘をかけてもらっている床山さんと小道具さんの、ある意味<職場婚>のパーティーに出席。幕内同士ということもあり、会場は知った顔、顔、顔であふれかえっておりまして、大変楽しい、和気藹々とした雰囲気の2時間でした。

千穐楽にして舞台稽古

2007年10月27日 | 芝居
本日、国立劇場10月公演千穐楽。公演前半はどの演目でも色々と変更の連続。後半はそれを練り上げてゆく毎日。なんだかあっという間のひと月でした。(イロイロ催しもありましたしね)
当月の国立劇場賞は、優秀賞に高麗屋(染五郎)さん(『うぐいす塚』の源之助・大仁坊の演技に対して)、奨励賞に松本錦弥さん(『うぐいす塚』の乞食善之助の演技に対して)、そして特別賞は国立劇場音響スタッフさん(『うぐいす塚』での鶯笛の効果に対して)に贈られました。俳優さんや演奏家さんではなく、劇場スタッフの方に賞が贈られるのは珍しいことでございますが、『うぐいす塚』の序幕から大詰まで、いたるところで<ただ吹くだけではない>演技する鶯の鳴き声を担当して下さった3人の音響係の方々のご努力に、心より御礼とお祝いを申し上げます。

さて、終演後楽屋を急いで撤収、タクシーで駆けつけたのはNHKホール。今日は午後7時から『古典芸能鑑賞会』の舞台稽古でございました。
1日に2カ所で違う芝居。しかも舞台稽古とはいえ本番同様に収録するということでしたので、失敗、やり直しはきかない状況。後見のみとは申せ少々気が張りました。おかげさまで無事勤まりましたが、明日も油断せぬよう気をつけます。
今日の稽古で面白かったのは、本番当日のテレビ収録にむけて、本舞台以外の場所で発する台詞や効果音も、しっかり収録するために集音マイクで拾うのですが、上手の竹本さんやツケ打ちさんはもとより、花道揚幕の中からの、百姓一同による『お願い~』、松王丸が下手袖の駕篭の中から発する『ヤァレお待ちなされ しばらく』、そして源蔵が小太郎の首をうち落とすときの効果音まで、集音マイクの調整をしながら何度も何度も繰り返すのです。
百姓役の先輩は「こんなに“お願い”したのは初めてだ」と苦笑いでした。

舞台袖には実に立派なモニターテレビ。それがちゃんとハイビジョンになっているのが天下のNHKですね。すでに決められたカット割りで映し出されるので、一足早く放送を見ているようでした。

『古典芸能鑑賞会』がございます

2007年10月26日 | 芝居
今月28日NHKホールにて開催の『古典芸能鑑賞会』で上演される『菅原伝授手習鑑 寺子屋』のお稽古が、終演後に歌舞伎座地下稽古場にてございました。
成田屋(團十郎)さん久々の松王丸に師匠の武部源蔵。松王丸女房千代は加賀屋(魁春)さん、源蔵女房戸浪は京屋(芝雀)さん、春藤玄蕃は松嶋屋(市蔵さん)、涎くりは瀧野屋(男女蔵)さんです。

今回は、成田屋さんのお家に伝わる<刀抜き>の首実検が上演されます。七代目の成田屋さんからの型と伺っておりますが、今日のお稽古で初めて拝見いたしました。皆様もどうぞお楽しみに。

師匠にとりましても7年ぶりの源蔵です(平成12年10月名古屋御園座)。その折は私<黒四天>でございましたが、今回は黒衣として、裏のお仕事を勤めます。

2種類の三味線で

2007年10月25日 | 芝居
『平家女護島 鬼界ヶ島の場』の終盤、俊寛僧都と瀬尾太郎との立廻りの場面や、去り行く船を見届けようと俊寛が転けつまろびつしながら岩山をよじのぼるくだりで演奏される<千鳥の合方>。
チンチリトチチリ ツンテンチンレン チレトツツン… というフレーズは、皆様にとりましてもお馴染みのものだと存じます。
この合方、竹本の<太棹>三味線と、長唄の<細棹>三味線との合奏になっております。
少々専門的になりますが、ひとくちに三味線と申しましても、棹や胴の部分の大きさによって、音色がずいぶんとかわるものでして、竹本の三味線は一番大きい<太棹>、長唄の三味線は小ぶりな<細棹>を常用しております(ちなみに清元・常磐津は<中棹>)。

さて<千鳥の合方>、竹本の三味線方さんは、舞台上手の出語り用の<床(ゆか)>で、長唄の三味線方さんはその<床>の上にございます御簾内で弾くことになっておりまして、こういう合奏の仕方を、演奏者それぞれの位置からとって<上下(うえした)>と申しております。
<上下>で演奏する合方は、『吃又』の幕切れでの『春藤の合方』、『石切梶原』の剣菱呑助の件での『与次郎の合方』など、いろいろ種類がございますが、細棹三味線の方が調弦を高い調子にしておりまして、細棹三味線の<一の糸>のキーは、太棹三味線の<二の糸>と同じにしてあるそうです。この場での細棹三味線は、いわば太棹に対する<上調子(うわぢょうし。主旋律よりも高いキーで演奏して曲に変化を付ける役割)>のようなポジションだと申せましょう。

『鬼界ヶ島の場』の幕切れ。遠く過ぎ去った船を呆然と見送る俊寛。最初は竹本の三味線だけがゆっくりと弾きはじめ、ドンドン…ッと大きく波音が打ち込まれたところで細棹が加わり、クレッシェンドしながら幕ー。
上下による<千鳥の合方>が、一番効果を発揮するところでございましょう。

お稽古など…

2007年10月24日 | 芝居
昨日今日と終演後に藤間ご宗家の稽古場で、師匠が来月お勤めになる『種蒔三番叟』の振り渡しがございまして、私も後見をさせて頂きますので、一緒にお稽古場に伺いました。
『種蒔三番叟』は、色々ある三番叟ものの中でも、そうそう舞台にかからない演目でございます。前回の上演は平成10年11月歌舞伎座で、私は松竹座に出ておりましたので拝見できず、今回のお稽古で初めて目にしたという次第です。

今日はお稽古後に歌舞伎座に伺い、夜の部の大喜利『奴道成寺』を拝見させて頂きました。大和屋(三津五郎)さんの狂言師左近です。
劇中、大和屋(玉三郎)さんのご一門で、この度名題昇進をされた坂東玉雪さん、坂東功一さんの昇進披露の口上がございまして、お二人にさかんな拍手が送られておりました。これまで色々とお世話になった先輩お二人のご披露、私にとりましても、本当に嬉しい、お目出度いことでございます。

H線での珍事

2007年10月23日 | 芝居
朝の通勤電車での出来事…。
某駅での数分間の待ち合わせ時間。突然車内放送用のスピーカーから、

『ヤッダァ~!!』

という、明らかに中年男性からのものと判別できる『おネエMANS』口調の嬌声(?)が…。
私は途端に吹き出してしまいましたが、周りの乗客は冷静なもので無反応。(え? みんな可笑しくないの?)と、ひとり笑いをこらえるのに必死だったのですが、しばらくして、今度はうってかわった典型的な『車内アナウンス口調』で

『…先ほどォ不穏当なァ発言がございましたことをォ、ァ深くゥお詫び申し上げますゥ…』

またまたひとりで大ウケだったのでした。


誰が、何故!?

久々落語

2007年10月22日 | 芝居
池袋演芸場での『林家正雀の会』に行ってきました。
<忠臣蔵にちなみ>の副題通り、『仮名手本忠臣蔵』の五、七段目が噺に出てくる『権助芝居』(彦丸さん)、五段目の『中村仲蔵』、題名通りの『七段目』(ともに正雀師匠)の三作品。間には、正雀師匠と瀧口雅仁氏(ポニーキャニオンの方だそう)との『対談』や、やはり忠臣蔵の名場面を唄った『小唄』(扇 よし和師匠)もございまして、盛りだくさんの2時間半でした。

とりわけ『中村仲蔵』は、高座では初めて聴きましたが、定九郎役の工夫に悩む仲蔵の苦心、蕎麦屋で見かけた浪人の姿から発想を得ての、初日の迫真の演技、それが観客に受け入れられなかったと思い込んでの落胆から一転師匠に誉められての喜び…。正雀師匠の歯切れのよい語り口で繰り広げられ、グングン引き込まれました。初日の晩、もう江戸にはいられないと夜逃げのように家を飛び出し、通りかかった日本橋。魚河岸の親方が今日見た<仲蔵定九郎>の上手さを熱っぽく語り、それを立ち聞いた仲蔵が感激して大坂行きを思いとどまる場面があるのですが、そのくだりが本当に素晴らしかった。魚河岸の親方の饒舌な語り口から、彼が見た舞台がクッキリと浮かび上がってまいりましたが、その熱っぽさ、興奮度。こんなテンションで誉められたら、役者冥利に尽きるというものですよ。

小唄の『定九郎』の一節に、「…貧すりゃドンと二つ玉」という歌詞がございまして、定九郎の落ちぶれぶりとその最期を、うまくよみこんでいるなあと思いました。

1日をフルに使って

2007年10月18日 | 芝居
今日は待ちに待った<休演日>!
家内と上野動物園をのんびりじっくり。天気もよくて助かりました。十数年ぶりの上野動物園はずいぶん印象が変わっておりました。動物たちの家(小屋?)も綺麗なものになり、なんだかお洒落な雰囲気も。色々な角度から動物たちを眺められるような工夫もあって嬉しいですね。



夜7時からは渋谷マッスルシアターにて<マッスルミュージカル 2007 秋祭>を観劇。
まさに<身体を張った>演技、パフォーマンスにただただ驚愕。いったいどんな訓練をしたら、あんなことができるのかしら。マァとにかく一度御覧下さい。男女20数名が繰り広げる<筋肉の饗宴>…?

実に実に有意義なお休みでございました。

是非聞いて下さい

2007年10月17日 | 芝居
『うぐいす塚』の序幕、天満天神境内の場。鷹に襲われかけた松が枝姫の鶯を助け、颯爽と鳥居の内から現れる源之助。このお役をお勤めになる高麗屋(染五郎)さんにとっては、この芝居で一番最初の登場シーンでございます。
この時に使われる下座が、ちょっと珍しいものでございますので、ご紹介させて頂きますね。その名も『高麗屋音頭(三下り)』

花の色香も良い染五郎 三つの銀杏に四つ花菱の
姿優しくきりりとしゃんと 華やかに


実際は演技に合わせて途中で演奏を止めるのですが、これが1番の歌詞。
せっかくですから2、3番も…

イキの良いのはまず高麗屋 四つ花菱の咲き誇り 
色も染五郎 わざおぎの道 揚雲雀 

芝居見たくば「(劇場の名を入れる)」ござれ 声よし顔よし姿よし 
あまた錦にかわる染五郎 三つ銀杏


高麗屋さんの紋や名をとりこんだ、洒落た歌詞ですね。

主演者にちなんだ唄を使うのは、世話物や踊りの演目でたまに見られます。
『高麗屋音頭』の歌詞は、今月国立劇場にご出演の長唄さんに教えて頂きました。

コンガリ、ハフハフ

2007年10月16日 | 芝居
さて、我が家に12人の仲間たちが集まっての宴は<たこ焼きパーティー>でした。
たこ焼きプレートを3台調達しての大量生産、メンバーが年が近い人ばかりでしたので、気軽にきさくにワイワイガヤガヤ。お酒も話も弾みました!



6時半から始めたのですが、盛り上がっているうちにあっという間の11時。『有閑倶楽部』の第1回は見逃しちゃった…。原作の大ファンなので楽しみだったのですけどね。

<遠見>の意味もうひとつ

2007年10月14日 | 芝居
さて『平家女護島 鬼界ヶ島の場』で<浪遠見>が使われないワケですが、これも劇中の演出と重要な関わりがございます。
俊寛とともに鬼界ヶ島に流された、丹波少将成経が、島の娘の千鳥と恋仲になったことを喜び、祝言をあげさせたところで、沖の彼方に見えた一艘の船。これが都からの迎えの船だと確信した一同は、大喜びで迎えます。
ここで舞台はいったん無人の<空(から)舞台>となり、チンチリトチチリ…の旋律が印象的な<千鳥の合方>になりまして、舞台後方の海を、船が横断する様を見せるのですが、これが<遠見>のもう一つの意味、「実物よりグッと小さいものを使って遠近感を出す」という手法が使われるのです。

全長2尺ほどの模型の船を、昨日ご説明いたしました<浪の並べ>の裏で人力(多くは俊寛役者のお弟子さん)によって動かし、遠く沖合を船が進む様を見せるわけで、この演出を見せるために、浪の裏を人が行き来ができるようにせねばならず、したがって空も海も一緒に描いた<浪遠見>の書割りが使えないというわけですね。

この小さい船が数分後には実際に人を何人も乗せられる丸ものの船になって上手から登場いたしますから、その対比が見せる距離感は抜群でございましょう。
実に原始的な手法ではございますが、それが古風な趣きとなり、このような時代物のお芝居には丁度よいのだと思います。

こうした意味での<遠見>で、本物より寸法を小さくするのはなにもモノにかぎりません。人間ですら小さくしてしまうこともございます。
『恋飛脚大和往来 新口村』で、追っ手を逃れてゆく忠兵衛と梅川の姿を、途中からそっくり同じ姿の<子役>で表現し、と奥に去っていったことを表す型があるのもその代表例。同じ手法は『一谷嫩軍記 組打』での熊谷直実と平敦盛、『ひらかな盛衰記 逆艪』の樋口兼光でも見られ、本役同様の扮装の子役の演技で<遠方にいる>ことを表現しております。
また、これは厳密にいえば<遠見>ではいないのかもしれませんが、『忠臣蔵八段目 道行旅路嫁入』で、戸無瀬と小浪母子が遠く眺める大名行列はみんな絵に描いたパネル状のもの。やはり人力で(数名がかりで)動かします。これも、奥行きのない舞台で距離感を表すための大きな工夫ですよね。

小さいとはいえなかなかしっかりした作りです。せっかくですので御覧下さいませ。船底についているのは、ドンブラコドンブラコと動かすときに、<浪の並べ>から少々離れてしまってもおかしく見えないようにするための<浪布>です。