梅之芝居日記

歌舞伎俳優の修行をはじめてから15年がたちました。
日々の舞台の記録、お芝居ばなし等、お楽しみ下さい。

早苗月稽古場便り・穐

2006年04月30日 | 芝居
本日は『外郎売』『黒手組曲輪達引』が、続けて<初日通り舞台稽古>でした。何時に開始かははっきりとは決められておりませんので、『外郎売』に先立ち、午前十一時から始まる『江戸の夕映』や『雷船頭』、『保名』『藤娘』の舞台稽古にどれくらいかかるかを予想して楽屋入りをいたしました。一時間半弱の『江戸の夕映』が、久しぶりの上演だけに時間がかかるかと思い、それなればこそマッサージに行けるとふんでいたのですが、とりあえず十二時半に楽屋入りしてみましたらすでに終了。思いのほか順調に進んだようで、今さら外出する余裕がなくなってしまいました。残念ながら明日以降に持ち越しということで、楽屋で化粧前の整理や細々とした準備をいたしました。
師匠をお出迎えした後、『外郎売』の<新造>の化粧開始。『雷船頭』の間に仕上げ、『保名』の最中に着付。あとは出番前にカツラをかぶるだけ、という状態にして、客席に回って成田屋(海老蔵)さん初役の『藤娘』の舞台稽古を拝見させて頂きました。…こちらでも、いつもと違う演出があって、ちょっと驚きでした。お楽しみに。

さて、『外郎売』は午後三時半過ぎに始まりました。開幕前には私たち<新造>役をはじめ、浅葱幕前の<奴>の皆々の居所合わせです。実際舞台にあがりますと、お稽古場とは座る位置が変わりまして、ほぼ舞台中央になりました。成田屋(團十郎)さんの演技がよく拝見できて、ちょっと役得。またいろんなお役の後見の動きも見ることができますので、勉強になります。もちろんジロジロは見ませんよ。
終演後、立ち回りの段取りのダメだしなどございましたが、とりたてて問題なく終了、道具を転換して、午後五時過ぎから『黒手組曲輪達引』。こちらは昨日舞台での総ざらいをしているので、トントン進みました。…今日に限って、お稽古順の都合で『外郎売』から続いていて、しかも双方ともに同じ<新造>役ですので、化粧は落とさずそのまま衣裳だけを変えました(カツラは両演目共用です)。明日からは間に<長屋の女房>が入るので、その都度化粧し直すことになりますが、これは当然なことです。
さて私が舞台上ですることになる、京屋(雀右衛門)さんがお勤めの揚巻の用事ですが、今日の稽古を“やった後”で、役割分担や段取りが決まりました。事前にいちいち細かく決めても、実際の舞台では何があるか、何をできるかわからないもの。今日の様子を見た上で考えたほうがより現実的なのです。揚巻付きの<番頭新造>が、京屋さんのお弟子の京蔵さんですので、万事をとりまとめて下さいました。京屋さんが端折っていた着付の裾を降ろすときに、同じ役の一人とともにお手伝いをいたします。しっかりとサポートできるよう気をつけます。

午後六時半過ぎには終演、それから楽屋風呂に入って白粉を落とし、七時半過ぎに楽屋を出ました。

さあ明日から<團菊祭>の始まりです。聞くところによりますと、前売りがとても好評だそうで嬉しいです。女形三役奮闘! と格好をつけたいところですが、「控えめに おとなしく」が身上なわけで、まずは先月に引き続き、女形の仕事をしっかりと学ばせて頂きます。

先々日に出題したクイズですが、解答は明日発表いたします。それからお楽しみ写真もアップしましたので、探してみて下さい。
写真は『黒手組曲輪達引』で私が履く<ポックリ>です。初めてこれを履いた時は、全然歩けませんでした。

早苗月稽古場便り・参

2006年04月29日 | 芝居
今日は昼過ぎから『黒手組曲輪達引』の<舞台にて総ざらい>、『外郎売』<総ざらい>、『権三と助十』の<初日通り舞台稽古>でした。
『黒手組曲輪達引』、衣裳やカツラを着けないだけで、ほぼ舞台稽古みたいなものなのですが、音羽屋(菊五郎)さんは、二役早変わりの段取りをつけるために、化粧もされ、カツラも衣裳も初日通りのかたちでした。ですので序幕の<不忍池の場>では、ついに音羽屋さんのチャリ場の全貌が明らかに! いや~、笑わされました。不遜な申し様かもしれませんが、まさかここまで作り替えてしまわれるとは。しかもその笑いの部分が、前後の流れと違和感なくつながっているのですから凄いのです。お客様の驚きは必至、客席の湧きようが今から想像できますね。
私のお役では、京屋(雀右衛門)さんの後について出てきた後、どこに控えるかが、実は今日まで決まっておりませんでした。黒御簾の前にある床几に座ったほうがよいのでは、という意見や、上手に居っぱなしでいいのでは、という考えがあり、今日装置を見てから決めようということになっていたのです。結果として、舞台正面に並べられた床几の数に比べて、座る新造役の人数が少なくなっていることがわかったので、私と、もう一人の揚巻付きの新造役の後輩二人がそこに加わることになりました。久しぶりに上演する演目ですと、こういうこともあるのですね。

『外郎売』は、さすがに三回目のお稽古ですから何事もなし。明日の<舞台稽古>で、二つの立ち回りがきっちり合うかどうか、ですね。あとは私の足が痺れないかどうか…。
『権三と助十』では四日ぶりに女形の化粧。とはいえ厚い白塗りではなく、ごくごく薄い、自然な肌色のもので、下地に鬢付け油も使いませんので、それほど肌に負担はかかりません。昨日の段取り合わせのおかげで<井戸替え>の場面でもバタバタすることなく勤められましたが、この場面が済んでから、次に出るまでの間の時間が長いのがやっかいです。三十人近い共演者が、舞台裏のあちこちでまんじりともせず出番を待っている光景は、着ている衣裳が衣裳だけに(貧乏長屋の住人達ですからね)、なんともうら悲しいと申しましょうか、まさしく“世話場”でございました。まあ舞台に出れば元気に賑やかに盛り上げますから、ご勘弁下さい。

今日は午前中に浅草で用足しをいたしましたが、お稽古後も、お腹がすいたので浅草で途中下車し、「小柳」の鰻で一杯やりながらの晩ご飯でした。甘くてダシの風味もしっかり効いた卵焼きで、一日の疲れもとれました。もちろんうな重も堪能です。昼に和菓子の<龍昇亭 西むら>で買った、プルプルの皮にぎっしり詰まったコシ餡が上品な“水大福”といい、浅草の素晴らしい味を楽しんだ一日でした。

明日は、師匠や私が出る『外郎売』『黒手組曲輪達引』の<初日通り舞台稽古>が、夕方近くから始まると予想されるので、午前中は家の片付け、昼過ぎは久しぶりにマッサージに行ってこようかと考えています。先月の稽古期間とはくらべものにならないくらい、自分の時間を持てるのが有り難いです。こういう月もございませんとね。

早苗月稽古場便り・弐

2006年04月28日 | 芝居
本日は午後四時半から<顔寄せ>、それから『外郎売』『黒手組曲輪達引』の<附立>、そして『権三と助十』が<舞台にて総ざらい>でした。
『外郎売』、今日は立ち回りの場面で私が立つこともなく、新造役に専念いたし、おかげで立ち回り全体を見ることができました。昨日書きましたように、十郎と五郎それぞれが、同時進行で立ち回りをするということで、四月公演の『関八州繋馬』と同じ形態となっております。やはり双方の動きを合わせるのは大変そうですね。立師さんが、カラミである奴役の人たちに、十郎と五郎のキマリの見得が揃うためには、どの手とどの手が合えばよいのか、どこでお互いの動きを伺い、調節すればよいのかを指示していらっしゃいました。

『黒手組曲輪達引』は、今日はとりたてて申し上げることはございませんが、いつもですと、正面の暖簾口から出た後は、ただ後ろに控えて座っているだけなのですが、今回はもしかすると、京屋(雀右衛門)さん演ずる揚巻が、床几に座るとき、打掛の裾を綺麗に直す仕事が加わるかもしれない、とのことでした。明後日の<舞台稽古>の具合で決めることになります。

さて『権三と助十』は、舞台でのお稽古ということで、私達が演じる<井戸替え>の場面の段取りをしっかり合わせることができました。<井戸替え>とは、年一回、お盆の頃に、井戸の中の水や底にたまった砂、ゴミを全て浚い出し、掃除をする行事なのですが、井戸底に沈めた桶を繋いだ、長い長い綱を町内総出で引っ張る様を、このお芝居ではお見せしているのです。
賑やかなかけ声とともに、三十人近い人数の<長屋の住人>が一本の綱につかまって、舞台上手の袖(ここに井戸があるという設定)から、花道の逆七三(揚幕から三分、本舞台から七分の位置)までゾロゾロと引っ張っては戻りを繰り返しますが、縄を持つ間隔をそろえたり、女形さんと立役、それに子役さんの配置のバランスも、幹部俳優さんが客席からご覧になって調整して下さいました。
とにかく賑やかにしなくてはならないらしく、大きな声で、舞台に出ている間はもとより、上手に引っ込んでからもしばらくは声を出すように注文がございました。長屋の喧噪を表現しなくてはならないわけですが、けっこう喉が疲れました。

明日は昼過ぎからのお稽古です。午前中は用事があって浅草に参ります。長居はできませんが、お参りと和三盆を買うのは忘れずに…。

今日は写真を撮れなかったので、四月公演で撮った写真からクイズです。映っている物体、セルロイド製で楕円形を半分にしたような形ですが、これはなんに使う道具でしょうか? ヒントは、『狐と笛吹き』や『井伊大老』で使いましたが、この二演目に共通なものは…?

早苗月稽古場便り・壱

2006年04月27日 | 芝居
今日から<團菊祭 五月大歌舞伎>の稽古がはじまりました。
私が出演させて頂く『外郎売』『権三と助十』『黒手組曲輪達引』は全て<附立>。歌舞伎座客席ロビーでのお稽古です。
『外郎売』で私が演じます<新造>は、舞台の色どりとして、並んで座っているだけですので、別段演技をするというわけでもございませんが、こういう役こそ、そのお芝居の雰囲気を邪魔せぬよう、気を抜かずに勤めなくてはなりません。二十分ほど正座をしたあとで立ち上がり、居所を変えるので、しびれを切らさないようにしなければなりませんね。
この演目、病気を克服された成田屋(團十郎)さんの復帰のお舞台。これまでと変わらぬお元気な成田屋さんのお姿を、久方ぶりに拝見して、私のようなものでも感慨深こうございました。これからひと月、同じ舞台に立てるという喜びもひとしおでございます。
…今回この演目では、普段は登場しない<曽我十郎>役で、師匠が出演いたします。といっても前例がないわけではなく、この演目が復活上演されてから、数回、十郎を出す演出があったそうです。後半、五郎と十郎それぞれに、奴がからんでの立ち回りがございますが、十郎の立ち回りの手順は、まず私が立師さんから教わりまして、それを私から師匠におうつしいたしました。これは、どんな演目のお稽古でも見られる、ごく普通のことなんですが、お稽古で、立ち回りの場面になると、私が師匠の前に立って動きをお見せするのが、ちょっと緊張いたしました。間違ったことをお伝えしてはいけませんし、口でも説明しながら動くというのが案外難しいんです。今回は短い立ち回りですので、混乱せずに無事勤まり、ホッといたしましたが、その間私は自分の勤める新造の出番をほっぽってしまいました(こういうこともままございます)。明日はちゃんと座りっぱなしで、新造に専念します!

続いての『黒手組曲輪達引』、こちらでも私は<新造>役でございまして、京屋(雀右衛門)さんの三浦屋揚巻について出てまいります。『外郎売』と同じく、お芝居の背景として、<何もしない>演技をせねばなりません。
このお芝居の序幕「不忍池の場」は、音羽屋(菊五郎)さん演じる番頭権九郎が、面白おかしい演技を見せる<チャリ場>でございます。しかも昔から、時事ネタや当世のギャグ、アドリブが入ってもOKとされておりますので、演者によって演出もかわるのですが、今回も相当面白いネタが繰り広げられ、稽古場は一時爆笑の渦でした。ここで言いたいのをグッとこらえておりますが、皆様どうか本番の舞台でご確認をお願い申し上げます。それから、大詰めの演出も、従来とは大きく変わるようですので、お楽しみに!
師匠は二幕目に<紀伊国屋文左衛門>役で出演いたします。

最後が『権三と助十』でしたが、<長屋の女房>ということで、井戸替えをする大勢の住人のうちの一人です。随分と大勢の出演者が、ぞろぞろ登場いたします。てんでに捨て台詞を言いながら賑やかに出入りを繰り返しますが、こういうときどんな台詞をいうか(それも女で)、色々工夫ができそうで楽しみです。前に作った“汚れた手拭“を、また使ってみましょうかね。

四月公演が大変な仕事量でしたので、今月は三役出演といっても、内容的にも時間的にも、随分とラクに感じられます。とはいえ決して気を抜かず、それぞれのお役の分をわきまえ、しっかり勉強したいと思います。
師匠は五役出演から二役に、しかも舞台に出ている時間は二つ合わせても三十分を越すか越さないかというくらいなので、ずいぶんな変わりようですね。
兄弟子の梅蔵さんは『江戸の夕映』『権三と助十』『黒手組曲輪達引』に、梅二郎さんは『外郎売』『権三と助十』に、弟弟子の梅秋は『権三と助十』『傾城反魂香』『黒手組曲輪達引』に、そして部屋子の梅丸も『江戸の夕映』に出演いたします。

明日は夕方からのお稽古なので、またまた朝寝坊をし、それからちょっと片付けものをしようと思っております。
少し余裕のある五月公演となりそうです。

…写真は家の近所に咲いていた花です。エニシダですかね? ご存知の方はご教授下さい。

朝寝坊ってイイですね

2006年04月26日 | 芝居
昨日の入籍の報告に、大勢の方々からあたたかいお言葉を頂戴いたしました。本当に嬉しく思っております。どうも有り難うございました! 二人仲良く、助け合って生活してゆくための、素敵なパワーを頂いた思いでいっぱいです。

さて、本日はお稽古もなく、一日ゆっくり過ごしました…と書きたいところなのですが、午後五時より国立劇場にて、今年の勉強会の打ち合わせがございました。本年私は、会の実行委員的なお仕事をさせて頂いております。今回の議題は、各演目ごとの、後見や裏方、脇役の配役です。本興行とは違い、主演者には弟子もおりませんから、会の参加者全員で、お互いを手伝い、助け合って舞台を作ってまいります。参加者それぞれの、出番や空き時間を想定しながら、ではこの人はこの芝居で黒衣になってもらおう、あの人に立ち回りのからみで出てもらおう、というふうに、話し合いで決定してゆきました。
勉強会の宣伝媒体は、まだ水色の仮チラシしか出回っておりませんが、もうじき本チラシが出来上がります。今日その見本を拝見させて頂きましたが、なかなか素敵です。いずれ皆様のお目に触れることでございましょう、どうぞお楽しみに!

…昼過ぎまで寝たのですが、なかなか疲れがとれません。明日からお稽古がはじまりますが、空き時間にマッサージにでも行くことにいたしましょう。三役女形の五月公演、さてどんな毎日になりますやら…?

イキイキ働けたひと月でした

2006年04月25日 | 芝居
本日、無事に千穐楽の舞台が終わりました!  忙しかったりしんどかったり、決してラクな仕事ではございませんでしたが、舞台でも楽屋でも、沢山の思い出ができて、本当に楽しかったです。今はホッとすると同時に、一抹の寂しさも感じております。
今日の『沓手鳥弧城落月』での立ち回りは、出演者皆々、いつも以上に気合いが入っておりまして、迫力満点でした。もともと比較的自由な立ち回りな上に、明日の舞台のために体力をセーブするという必要がない分、派手に元気に動くことができるので、千穐楽特別バージョンといった感じでした。もちろん私達高砂屋チームも頑張りました。そのおかげか今日は今までで一番大きい拍手を頂きまして、思わず嬉しくなりました。梅丸もひと月本当に頑張りました。披露の月に大活躍ができて、本人も喜んでいるのではないでしょうか。
…大旦那(六世中村歌右衛門)の追善興行ということで、常にも増して気が張ったひと月でしたが、こうして終わってみると、沢山勉強させて頂いたことにただただ感謝。素晴らしい思い出となる公演となりました! 五月は名題下も人数が少ないので、一門皆々沢山出番がございます。いずれ日を改めて、ご紹介いたしますね。

来月も歌舞伎座出演ですので、師匠の楽屋も撤収することもなく、とっても気楽な千穐楽でした。後輩と、銀座松坂屋の裏手の串焼き屋『福みみ』で遅い夕食を済ませ、お酒の勢いもあって色々と放談し、ただいま帰ってまいりました。 『福みみ』は店員さんの応対も丁寧ですし、食事もおいしいのでよく利用しております。

                     ☆


さて…。
ここで皆様にご報告いたしたいことがございます。
私この度、長らく交際させていただいておりました女性と、当月十六日をもって入籍いたしました。
お互い歌舞伎に携わる中で生まれた縁でございます。相手の立場や仕事の様子など、理解し合えているので助かっておりますが、これよりは、なお一層の責任と自覚をもって日々の舞台を勤めて参りたいと思っております。
とはいえ、今すぐ新しい自分へ変わることは、どだい無理なことだと思います。始まったばかりの二人の生活の中から、自ずと生まれる意識の変化をしっかりと受け止め、自然体で次のステップへ進んでゆければと考えております。
「なにも公表しなくても」という考えもございましたが、やはりこれから先の私の生活に、私的な面でも公的な面でも非常に密接に関わってくる事柄です。ヘンに包み隠さず、素直に正直に、お知らせいたすことにいたしました。どうか今後とも、私達夫婦をよろしくお願い申し上げます



…明日はお休みです。お稽古は明後日からですので、稽古日記をお楽しみに!

やっと、というか、ついに…

2006年04月24日 | 芝居
ようやく新しいデジカメを購入、私にとって三代目(三台目か)の機種は、この前と同じIXYです。さっそく写真を撮りましたので、久しぶりの掲載をいたしました。『伊勢音頭恋寝刃』の開幕前の名題下部屋のひとこまです。

さて、千穐楽を明日に控えて、(ついに終わりか…)と感慨深いものがございます。久しぶりに一日中劇場にいて、昼夜八演目のうち七演目に携わりましたが、おかげさまで体調も崩すことなく(崩しかけはいたしましたが)、楽しく、元気に勉強させて頂きました。公演自体も、大盛況のうちに終わることができそうで、有り難いことだと思っております。ラストステージの明日は、持てる力を出し惜しみせず、精一杯の立ち回りと、綺麗な唄声、大きな東西声で舞台を盛り上げますので、ご見物をお待ちしております。
引き続いての出演となる歌舞伎座の團菊祭五月大歌舞伎。私は三演目に出演させて頂くことになりました。それがなんと全部女形! 昼の部『外郎売』の<新造>、『権三と助十』の<長屋の女房>、そして夜の部『黒手組助六』の<新造>です。出る役全てが女形というのは、昨年の四月以来ですが、三役も勤めさせて頂くのは初めての経験です。どれも初めて出るお芝居ですので、先輩方に伺いながら、勉強して参ります。ふた月も白粉を塗ることになりますので、引き続きスキンケアには万全の注意を払います!

…今月は、幾日か休載してしまった日がございました。せっかくですので、その日の欄にお楽しみ写真を載せようと思っております。あまり期待しないでお待ち下さいませ。
それでは今日はこのへんで。

短文にて失礼します

2006年04月23日 | 芝居
用事があって、ただいま帰宅いたしました。
さあ四月大歌舞伎もあと二回! ゴールは目前ですが、自分にとって納得のいく毎日を送ってこられたか、あらためて振り返らねばなりませんね。…私が勤めさせて頂いた三役のうち、一番難しかったのは、『沓手鳥弧城落月』の<関東方武士>の立ち回りでした。激しさ、リアルさを求められる立ち回りを、兄弟子お二人、そして部屋子披露の梅丸との四人で勤めさせて頂きましたが、こういう立ち回りはその日その日でお互いのイキが変わりやすいもので、毎日きっかり同じ動きというふうには参りません。まして立ち回り初体験の梅丸とからむわけですから、相手の動きや出かたを瞬時に察して、できる限りあわせることが必要でした。もちろん兄弟子とのからみも同様です。立ち回りが単なる<手順>を見せるだけにならないように、今初めて出会った敵同士の斬り合いに見えるように努力いたしたつもりですが、お客様のお目には、どのように映りましたでしょうか。
お陰様で、梅丸が太刀を抜いて構えたところや、私の足を斬ったところで、暖かい拍手が湧く日が多くございまして、なんとか<見せ場>にはできたのではないかなと、ホッとしているのですが、時にはお互いの息が合わず、変な間を作ってしまった
日もあり、録画したモニターを見て反省したり、ダメを出し合ったりしながら、少しでも良くなるようにいたしましたが、一門だけで演じられたことで、意思の疎通は非常にスムースにはかることができましたので、本当によかったと思います。

残り二回の戦いも、皆で真剣に勤めます! 

『関八州繋馬』あれこれ

2006年04月22日 | 芝居
それでは『関八州繋馬』のあれこれを。
この舞踊劇は約一時間二十分の上演時間、三場構成の大掛かりな舞台です。今回この演目に携わることができたのはとても嬉しいこと(なにせ約三十年ぶりの珍しい狂言ですから)ですが、この一幕の舞台転換の鮮やかさには感嘆いたしました。
まず第一場「多田の御所 頼信館の場」は、障子で囲まれた小部屋を上手側につけた、黒塗りの御殿をドンと置いた豪華な装置。上手に竹本連中、下手に常磐津連中が居並ぶ〈山台〉がございます。さて、この場の幕切れ、加賀屋(魁春)さん演じる小蝶蛛の精が花道スッポンに消えると〈定式幕〉をいったん閉め、黒御簾でつなぎの合方を演奏する間に舞台転換となるわけですが、まず背景の書割りを天井へつり上げると、御殿をそっくりそのまま舞台後方へスライド移動させるのです。御殿の下部には車輪が取り付けられておりますので、十人足らずの大道具さんが掛け声に合わせて押すだけで、ゴロゴロと移動。この間に、上手の竹本連中は出番終了なので〈山台〉ごと退場、下手の常磐津は、引き続き第二場にも出るのですが、演奏場所が下手斜め向きから正面向きに、そして<山台>の色がそれまでの黒色から赤に変わります。<山台>にも車輪がついているので、大道具さんが演奏者を乗せたまま移動させ、<山台>を覆っていた黒板を外すことで、その下の赤色に変えるのです。最後は背景の書割りを天井から降ろして完了。こうして第二場「葛城山麓の場」になるのです。
…さて第二場で、播磨屋(吉右衛門)さんや加賀屋(東蔵)さん、そして師匠、初舞台の五代目玉太郎さん、部屋子披露の梅丸が踊っている最中も、着々と転換作業は進みます。第二場の背景の裏で、すでに第三場の背景を降ろし、<大ゼリ>を二尺ほど上げて、長唄囃子連中が居並ぶ<雛壇>の土台を作るのです。これを緋毛氈で覆って完成させるのは<楽屋番>さんの仕事です。
第二場の踊りが終わると、知らせの柝で<浅葱幕>の降りかぶせ。お客様の目を水色の幕で遮っている間に、第二場の背景をつり上げ、出番終了の常磐津連中を<山台>ごと退場させ(大道具さんの仕事)、次の場でせり上がりで登場する二人の登場人物のうち、将軍太郎良門を演ずる松嶋屋(仁左衛門)さんは、あらかじめ本舞台からセリに乗っていったん奈落へ降り、そこに、奈落で早ごしらえをしていらした加賀屋(魁春)さんの土蜘蛛の精が合流し、二人の姿を、黒衣の後見が三人がかりで、クモの巣を描いた黒の<消し幕>で隠してスタンバイ完了、第三場「葛木山山中の場」のはじまりとなるのです。
…大勢のスタッフさんの連係プレーでによる迅速な転換作業は、はたで見ていても迫力と申しましょうか、熱気が伝わってきます。

さて、お次は演技のこと。加賀屋(魁春)さんは土蜘蛛の精ですので、踊りの中で次々と<蜘蛛の糸>を繰り出します。手のひらから一瞬で吐き出される無数の白糸は、美しくもまた妖しく空間を彩りますね。この<蜘蛛の糸>、歌舞伎の世界では、役者の完全手作業で作られております。針金状の柔らかい金属を芯に、ごくごく薄い和紙を延々巻き付けてゆき、それを三ミリほどの幅に切ってゆくことで、あの細い糸が作られるのです。糸は一投分の本数ごとにひとまとまりにし、和紙でできた台紙に根元を貼付けて封をしておき、演者が舞台で使う直前に封を切り、台紙を持ったっまま放れば、綺麗な放物線が描かれるというわけです。糸の長さは八メートルくらいのと十メートルくらいのとの二種類があり、場面によって使い分けております。
この<蜘蛛の糸>作製の技術をもった俳優はごくわずかしかおりません(主に名題下)。それだけ難しい、逆に言えば、容易くは教えられない大切な技術なのですね。一個の糸を作るのにも、相当な時間がかかるそうですし、作業にとられるスペースも、使う道具の費用も馬鹿にならないのだそうですよ。今月は十数個の糸を使っておりますが、一個一個にかかった手間ひまを考えれば、実に贅沢な演出とも申せましょう。

また、第三場で加賀屋(魁春)さんが持つ、錦で覆われた細長い棒状のもの、あれは<鉄杖(てつじょう)>と申しておりまして、地獄の獄卒が持つ武器、責め道具を象徴したものです。オリジナルはお能の小道具で、お能、歌舞伎ともに、悪鬼、妖怪変化、怨霊など、異空間の住人が手にする約束事になっております。

立ち回りは、尾上菊十郎さんがお作りになったことは以前お話しした通り。得物は<刺叉(さすまた)>と<突棒(つくぼう)>という武器です。カラミの<軍兵>の衣裳は、いわゆる“二引き”の着付(玉子地に黒で二本の横縞)に茶と白の段縞の裁着袴。同じ衣裳を着る演目でも、『土蜘』でしたら“糸目(いとめ。茶と白の細かい縞のこと)”の足袋をはくところですが、今回は<返り立ち>のトンボもありますので、滑らないように裸足に白粉を塗って出ています。

色々書いてしまいましたが、見応え十分、華やかで、古風な舞踊劇ですので、是非ご覧いただきたいものです。

徐々に来月へと

2006年04月21日 | 芝居
画像のない、殺風景な記事が続いて申し訳なく思っております。いましばらく、御辛抱下さいませ。

本日の公演も無事に終わり、残すところあと四回となりました。連日大勢のお客様がお越し下さり、有り難く思っております。『関八州繋馬』では、客席が見渡せる居所に立つので、見ようと思わなくても客席が目に入ってまいりますが、一幕見席でも多くの方がご覧になっている光景に、毎日嬉しくなっております。このまま大盛況のうちに千穐楽を迎えることができますよう、まだご覧になっていらっしゃらない方は、是非是非歌舞伎座まで!

さて、先日<團菊祭 五月大歌舞伎>お稽古割りが届きました。そろそろ来月のお役も判りそうです。来月は、いわゆる<尾上菊五郎劇団>の方々が中心となる公演です。名題下部屋はきっと陽気で闊達な雰囲気になることでしょう。お芝居も、『外郎売』や『権三と助十』『黒手組助六』といった、私にとってはこれまでご縁がなかった狂言が並びますので、いろいろと勉強になることが多いかと思いますので、ちょっと楽しみですが、なによりも、ご病気を克服されて、成田屋(團十郎)さんがご復帰なさるのが、なによりもまたお目出度いことでございます。

今日は散文的な内容となってしまいました。明日は『関八州繋馬』から、四方山話をと思っております。

私は<超>敏感肌なので…。

2006年04月19日 | 芝居
女形の化粧による肌荒れは、いちおう治まってはきていますが、まだまだヒリヒリ、カユカユでつらい毎日です。
以前にもお話しいたしましたが、白粉をしっかり顔に付けるために、下地として塗る固形の<鬢付け油>これがどうやら私には合わないようなのですが、今回のようにしっかり白粉を塗る役の化粧では、どうしても下地は付けなくてはならないので、<鬢付け油>をやめるわけにはゆかず困っておりました。
そもそも<鬢付け油>とは、櫨(はぜ)の実からとれる木?(もくろう)と、菜種油などの植物油を調合して作られた固形の油でして、?の配合が多くなるほど固くなるのです。化粧下地として使うのは、柔らかめなものが大半ですが、固いものをよく伸ばしたうえで使うと、塗った白粉が落ちにくくなるので、個人の好みに応じて使い分けられております。化粧品店で売られている<鬢付け油>の中には、固さを表す番号が表記されている商品もあり、数が大きくなるほど固くなります。
私も今までこの<番号つきの鬢付け油>の「六番」を使っていましたが、最近肌の上での伸びが悪いように感ぜられ、無理に伸ばすとヒリヒリと痛むので、何とかせねばと思っておりました。先日仲間と<自分にあった化粧道具>の話になったときに、これとは違うメーカーの<鬢付け油>が、伸びがとてもよいということを教えられたので、今日から変えてみましたら、本当に滑らかに伸びてくれ、全く痛みもなく塗ることができ、しかもお白粉のつきも抜群だったので、嬉しくなりました。肌の負担も減ったようで、これからもずっと使うことになりそうな、よき巡り会いとなりました。
ただ、これはあくまで私の場合でして、人によっては肌質も体質も違うので、必ずしも私と同じ結果が出るとは限りません。皆様もそうでしょうが、自分にあった化粧品を見つけるのは、簡単なことではございませんね。

ちなみに、ごくごく薄く白粉を塗るような化粧では、<鬢付け油>をつかわずに、親水性のハンドクリームや軟膏を下地として塗ることもございます。白粉が付きすぎず、いわゆる<薄化粧>ができるわけですね。でもなかには素晴らしい肌質の持ち主もいて、私が<鬢付け油>を付けた上で仕上げた真っ白な顔を、ハンドクリームの下地だけでたやすく作れるのです。同じ人間なのかしらと思ってしまいますが、きめの細かさや地肌の油分、水分のバランスなんでしょうね…。

一分一秒を争う…?

2006年04月18日 | 芝居
いつの公演でも、夜の部をご覧になるお客様は、「何時何分に芝居がはねるか」が気になるところだと思います。遠方からお越しの方、翌朝早くからお仕事の方、もちろんお芝居はたっぷり楽しみたいところですが、さりとて家に帰るのが遅くなってしまうのも困りもの。ロビーに掲示されている<予定上演時間表>をチェックする方は沢山いらっしゃることでしょう。
我々出演者も、実は終演時間は気になるものでして、やはり夜は早く帰りたいという気持ちは皆様と同様です。朝の序幕から夜の切狂言まで関係していることを、俗に<ピンキリ>と言っておりまして、今月の私などまさしくソレなんですが、家で少しでも長くくつろぎたい、早く寝て翌日に備えたいと思えば、自ずから帰りの足どりは早くなります。
そんな我々が気にするのが、先ほども出てきました<予定上演時間表>。ロビーに掲示されるのと同じものが、楽屋のあちこちに貼られ、そこに記された時間に一喜一憂することになるのです。
時間表は、まず、初日を迎える前の段階で、記録に残った過去の上演時間や、稽古中での所要時間を基に作製され、そののち、初日の記録をもとに最初の改正、以降は目立った変化があるごとに刷り直されます。
最新の時間表は、頭取部屋の前にまとめて置かれ、必要な人が自由にとってゆくのですが(駅の時刻表みたいですね)、幹部俳優さんの楽屋へは、頭取さんが直接届ける場合が多いです。
今月ですと、初日前に作製の時間表では、『伊勢音頭恋寝刃』終演が、午後八時五十八分予定となっていたのですが、初日の実際の舞台は八時四十五分過ぎ。それからさらに早くなり、十四日付けの最新の時間表では、八時四十分終演となっています。

…私にとりましては、確かに『伊勢音頭~』の終演時間も気になります(帰りの電車が一本違ってくる!)が、それよりなにより、『関八州繋馬』の終演時間が一番気になっておりました。なにしろ、すぐに午後四時半開幕の夜の序幕『井伊大老』の幕開きに、女形で出なくてはならないのですからね。最初の終演予定が午後三時五十六分となっていたと思うのですが、これだと早ごしらえの時間が三十分足らずになってしまいますでしょ。大慌てになることは必死ですから、相当覚悟をしていたのですが、稽古中に三時五十分になり、これならまだ大丈夫かなと思えるようになり、初日の舞台では終演時間こそ押してしまいましたが、なんとか間に合いホッとひと安心。その後は芝居がまとまるにつれ早く終わるようになり、今では三時四十五分となり、しっかり顔を洗い、落ち着いて化粧をするゆとりができまして、有り難く思っております。

時間表は、いわば我々にとってのスケジュール表みたいなものですが、考えてみますと、毎日毎日、同じ時間に同じコトして、同じセリフ喋って…。役者って不思議な仕事ですね。
ちなみに、毎日の各演目ごとの開幕、終演時間を記録するのは、<頭取>さんの仕事なんですよ。

聞くも無粋なことながら

2006年04月17日 | 芝居
二年前から使っていたデジカメが壊れてしまいまして、しばらく写真なしの記事になってしまいます。…資料記録に、思い出作りに、全国どこにでも連れ回し、随分と酷使しましたからね~。長い間お疲れさま、と言ってあげたいです。

さて今日は「年齢」の話。
今日名題下俳優で「みんなの実年齢」が話題になりまして、あらためて先輩や仲間達の年を聞きますと、「そんなに若かったの?」とか「親と同い年なんだ!」というような驚きばかりでした。
私は今年で二十六歳になりますが、見た目が老けているせいか、三十代に見られたりすることがままあって悲しくなります。逆に若く見られる先輩が羨ましいですが、考えてみると、同じ舞台に、あるいは同じ楽屋に、様々な世代の役者が一緒になって働いているのは、不思議な感じですね。同じ<花四天>役で出ていても、上は五十代から下は十代まで年齢はバラバラ、なんてこともあるわけですし、同じ芝居で、町娘役を四十代の人が演じ、その父親役を三十代の人がやる、なんてことも、時にはあったりするのです。
もちろん、演者の実年齢はお客様には関係ないわけで、その役らしく化ければOKなのですが、演じているもの同士はどこか照れくさかったり…。
それからこの世界は入門した順で、ある意味での序列が生まれるものですから、自分にとって<年上だけど後輩>の人とか、<同い年でも大先輩>ということもございます。人間関係の上での礼儀、行儀もかかわることだけに、「タメだから友達だよね~」なんてお気楽なことは言っていられません。

そういえば今月の「口上」では、歌舞伎界最高齢の播磨屋(又五郎)さんと、今月初舞台の五代目玉太郎さんが同じ舞台に並んでいるのですが、その年齢差じつに九十歳! 伝統芸能の世界ならではの光景かもしれませんね。役者の年齢はないとは申せ、いつまでもお元気な播磨屋さんのお姿を拝見いたしますと、僭越な申し様になるかもしれませんが、教え子の一人としても本当に嬉しく思っております。

楽しくなりそうです!

2006年04月16日 | 芝居
今夜はこれから、新居に友人をお招きしてパーティーです。後日改めて宴のもようはお伝えします。
公演は残りひと桁となりました。惰性にならないよう気をつけます。『狐と笛吹き』の散り花の降らせ方が昨日からちょっと変わりました。より舞台が盛り上がるようになったと思います。…舞台はまだまだ進化しています。私ももっと前進できるよう努力します!

短文にて失礼いたしました。